『リンクのボウガントレーニング+Wiiザッパー』
3. キッカケは針金と輪ゴムの工作
- 岩田
- 「社長が訊く」の『マリオカートWii』編のとき、
「たまには大きな箱の商品をつくりたい」と言ってましたよね。 - 宮本
- またまた、大きな箱の商品をつくってしまいました。
箱シリーズ第3弾!(笑)。 - 岩田
- (笑)。
もともとWiiザッパーを初めて公開したのは、
2006年のE3(※8)のときでしたよね。
ガラスケースに入れて展示しましたけど、
わたしは、食い入るように見つめていたお客さんの視線が、
とても印象的だったことを覚えています。
E3=アメリカで開催されたゲーム展示会のこと。2006年のE3では、初めてWiiが公開され、対応ソフトがプレイできた。
- 宮本
- そのときは、いまよりももっと銃に近いデザインでした。
で、せっかくWiiザッパーという新しい提案をしたのに、
発表から1年以上たっても、任天堂からは対応ソフトが出てこないし、
『メトロイドプライム3』もWiiリモコンとヌンチャクの操作になりましたし・・・。 - 岩田
- 『メトロイドプライム3』の開発コンセプトは、
それぞれの手でWiiリモコンとヌンチャクを持って、
自由に操作することにありましたからね。
しかも、ヌンチャクのモーションセンサーは
新しい操作のために使うことになっていましたので、
Wiiザッパーとの相性があまりよくなかったんですね。 - 宮本
- そうこうしているうちに、ソフトメーカーさんから、
ガンタイプの周辺機器の企画がぽつぽつ出てくるようになったんです。
限定でオリジナルのガンホルダーをつけたいとか、
とても豪華なガンホルダーの企画が持ち込まれるようになりまして・・・。 - 岩田
- いろんなガンホルダーが発売される可能性があったんですね。
- 宮本
- ええ。このままでは、いろんなタイプのガンホルダーで、
お茶の間が埋め尽くされてしまうかもしれないと。 - 岩田
- しかも、『Wii Fit』のバランスWiiボードがあるし、
さらに『マリオカートWii』のWiiハンドルもあって・・・。 - 宮本
- 部屋の中が周辺機器だらけになっちゃいますよね(笑)。
そこで、ガンホルダーの規格をひとつに統一する必要性を感じました。
Wiiザッパーがあれば、いろんなソフトメーカーさんから
出てくるFPS系のゲームもスッキリ遊べるようになるだろうと。 - 岩田
- FPSのゲームがつくりやすくなるんですね。
ところで、Wiiザッパーが生まれたキッカケは・・・? - 宮本
- 最初は針金でつくった枠に、
Wiiリモコンとヌンチャクを輪ゴムでとめただけの、
とてもシンプルなものでした。
- 岩田
- 小学生の工作みたいですね(笑)。
- 宮本
- Wii版の『トワイライトプリンセス』の開発中に、
スタッフのひとりが、工作のようなものをつくって見せてくれたんですけど、
「こんなのつくってる場合じゃないだろう!」って(笑)。 - 岩田
- 『トワイライトプリンセス』の開発が佳境だったんですね(笑)。
- 宮本
- でも、実際に触ってみるとすごく快適だったんです。
そこで、ハード担当者に話をして、正式に企画がスタートしたんです。 - 岩田
- 今回も、いろんな試作品をつくりましたよね。
- 宮本
- 中には、電池を入れて撃つと衝撃を感じるような
とても豪華なものもありましたし。
でも、これ以上、お客さんに電池を買っていただくのは
申し訳ないと思って・・・。
だから、開発にはけっこう時間をかけました。 - 岩田
- 開発の終盤になってから、
わたしからの依頼で、ヌンチャクのケーブルを
収納できるように変更してもらいました。
ケーブルがブラブラしているのが、
気になって仕方がなかったんですよ。 - 宮本
- あれでかなりスッキリしたデザインになりましたね。
Wiiリモコンの取り外しも簡単にできますし。 - 岩田
- ちなみにWiiザッパーという名称は?
- 宮本
- アメリカでファミコンを出したとき、
ガンコントローラのことをザッパーと呼んでいたんです。
ガンと呼ぶよりもザッパーのほうが広い意味があって、
自分としてもなじみのある言葉だったんです。
しかも、今回のようにボウガンに使われたりと、
いろんな使われ方をしてほしいので、Wiiザッパーという名称にしました。
それに、世界共通の名称にしたいとも思っていましたし、
デザインもSFっぽいイメージにして。 - 岩田
- 色は白ですしね。
- 宮本
- やっぱりWiiの周辺機器である以上、
リビングに置いて頂けるようなものをめざしましたから。 - 岩田
- でも、『ゼルダ』チームのスタッフのアイデアから
Wiiザッパーが生まれることになったとはいえ、
リンクを登場させることにためらいはなかったのですか?
そもそもリンクは銃を持ちませんし。 - 宮本
- そこが困ったところでもあったんですが(苦笑)。
かと言って、さすがに『どうぶつの森』でWiiザッパーを
使うわけにはいきませんし・・・。
一方、ゼルダスタッフからのアイデアがきっかけになっていたので
このプロジェクトがスムーズに進められんですね。 - 岩田
- 『マリオFPS』もありえないですしね(笑)。
- 宮本
- だから、リンクしかないだろうと。
かと言って、リンクに銃を握らせるわけにはいきませんから、
「ターミネーターみたいに、
未来の世界からタイムワープしてきたような話にすれば」
と提案したんですけど・・・。 - 岩田
- 『ターミネーター』ですか!?
- 宮本
- でも、即座に却下されました(笑)。
『トワイライトプリンセス』のなかに
忘れられた里のステージ(※9)がありましたよね。
僕、あのようなマカロニウエスタンのような世界観が大好きなんです。
FPSのおもしろさをわかってほしいと思って、
あのようなステージをつくったんですけど、
Wiiザッパーで操作できるようにすれば、
もっと遊びやすくなるんじゃないかと。
そこで、リンクにボウガンを持たせるようにしたんですが、
困ったのが連射で(苦笑)。
機関銃のように、ダダダダッと撃てると気持ちがいいんですけど、
ボウガンで連射というのは非現実的ですよね。
でも、そこは遊びだから、まあいいかなって(笑)。 - ※9忘れられた里のステージ=西部劇のように、砦に潜んでいる敵を、弓矢を使って次々に撃ち落としていくステージ。
- 岩田
- それでは最後の質問です。
どんな方にWiiザッパーを触ってほしいですか? - 宮本
- 『Wii Sports』のためにWiiを手にされた人たちが、
Wiiザッパーを触って、こんな遊びもあるんだと、
また新鮮な気持ちで楽しんでほしいですね。
- 岩田
- 夜店で遊ぶような感覚で
このソフトも楽しんでほしいということですね。 - 宮本
- 金魚すくいは入ってませんけど(笑)。
でも、人がやっているのを横から見ていて、
「ちょっとやらせてよ」と言いたくなるようなソフトだと思います。
それで実際に遊んでもらって気に入ったら、
ソフトメーカーさんから出ている本格的なFPSも
遊んでほしいですよね。
僕らも、次の本格的な『ゼルダ』は
Wiiザッパーでつくろうかなって(笑)。
アイテムを持ちかえる必要がないので、楽になりますしね。 - 岩田
- 宮本さん、剣は捨てちゃうんですか?
- 宮本
- あ、それは困りますね(笑)。
- (終)