『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』
8. “夢”
- 岩田
- さあ、これから世の中で何が起こるのか、楽しみですね。
- 藤澤
- はい。『IX』や『モンスターズ』と同じように、
人が絡むと途端に何が起こるかわからなくなるゲームって、
発売後も自分ですごく遊ぶんです。だから『X』が出たら、
僕はプレイヤーとして遊ぶのが、とても楽しみです。 - 堀井
- そうなんですよ。
ボクも『テリーのワンダーランド3D』をずっとやっています。
すれちがいバトルはもう、450勝以上です(笑)。 - 岩田
- もともとゲームの中に入ってないものが、
人によって足されていくからですよね。 - 堀井
- そう、それは大きいですね。
- 岩田
- ひょっとすると『X』に慣れたら将来、
「オンラインで遊べないの?」
っていう時代がくるかもしれないです。 - 堀井
- 逆にオンラインが、
当たり前になっちゃうかもわかんないですよね。 - 藤澤
- 振り返ってみれば、『VII』(※21)で搭載した「仲間会話システム」。
あれは当時、チャットが話題になりはじめたころで、
「仲間と情報を共有しながら冒険する感覚」を
味わうための仕組みだったんですよね。
『IV』(※22)のAIだって、あたかも人がプレイしている
ような感覚を味わうためのものでした。
そう考えると、「『ドラゴンクエスト』はずっと、
オンラインゲームになりたかったんじゃないのかな・・・」
ってずっと思っていたんです。
『VII』=『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』。2000年8月にプレイステーション用ソフトとして発売されたRPG。『ドラクエ』シリーズ7作目。
『IV』=『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』。1990年2月にファミコン用ソフトとして発売されたRPG。『ドラクエ』シリーズ4作目。
- 岩田
- 少なくとも、人の気配を入れたかったんですね。
- 藤澤
- はい。なので、『ドラゴンクエスト』が
オンラインゲームになるのは、堀井さんの意志か、
『ドラゴンクエスト』の意志かわからないですけど、
「『ドラゴンクエスト』自体が
そうなりたがっていた“夢”だったのかなぁ」って、
僕は感じながらつくっていました。 - 堀井
- うん、“もうひとつの世界”をつくりたかったんだよね。
町の人の台詞を書くときも、なるべく本物の人を感じられる、
温かみのある台詞を意識して書いたんです。
『IV』ではそれぞれの登場人物に別の人生があった、
という章立てにしたり、AIという、
思いどおりにならない仲間たちをつくったりして、
いろんな“人”の気配をつくってきたんです。 - 岩田
- 『X』では、ついに本当の“人”になったわけですね。
では最後に、お客さんへのメッセージをいただこうと思います。
藤澤さんからいいですか? - 藤澤
- はい。『ドラゴンクエスト』を好きだという方に対して、
オンラインであることが何の障害になってもいけない、
ということが今回、決意としてあります。
だから『ドラゴンクエスト』を
いままで遊んでくれたことがある方全員が、
遊べる世界をつくったつもりです。
ですから、「オンラインである」という部分がどうしても心配な方は、
少し様子を見ていただいて、
「大丈夫そうだ」というウワサを聞いたら、
ちょっとずつ入ってきていただけたらいいなと思います。
そのときはまた、新しい『ドラゴンクエスト』の世界で
お迎えできるようにしたいと思います。
長くやっていますので、
「気が向いたときにきていただければ」と思います。
- 岩田
- 『X』では毎日が新しい世界であり、
しかもそこにいるのは実際の人ですから、
「参加する時期が出遅れたらつまんない」と思う必要はなくて、
「まずは見極めてください」というわけですね。 - 藤澤
- はい。あと、
「オンラインゲームだから長く遊ばなきゃいけない」
とプレッシャーに感じておられる方も
いらっしゃるかもしれませんが、
いつもの『ドラクエ』と同じように
エンディングまで遊ぶだけでも、僕はいいと思うんです。 - 岩田
- 居心地がよかったら、
ずっと遊んでいただいてもいいわけですしね。 - 藤澤
- はい。たとえば、新しいストーリーが実装されたら、
戻ってきていただく、というつき合い方もあります。
“やりたいときにやれる『ドラゴンクエスト』”と、
受け取っていただいてもいいのかなと思います。 - 岩田
- やりたいときに出かけていくと、
いつも新作が味わえる『ドラゴンクエスト』、
そう言えるものになったかもしれませんね。
まあ、ちょっと大げさに言いすぎているかもしれないけど。 - 藤澤
- はい、ちょっと“夢”みたいですが、
まさにそんな感じです(笑)。 - 齊藤
- 毎週、クエスト配信がありますしね。
- 藤澤
- 「いつもの『ドラゴンクエスト』の感覚と同じです」
と、くり返し、くり返し言いたいです。
“いつもと変わらない『ドラゴンクエスト』”なので、
遊びにきてください。 - 岩田
- ありがとうございます。では、齊藤さん。
- 齊藤
- あ、もう・・・それで。
全部、言い尽くされちゃいました(笑)。 - 堀井
- いやあ、もうほとんど言い尽くされて・・・(笑)。
- 藤澤
- ああっ、ごめんなさい、ごめんなさい。
全部言っちゃった? - 一同
- (笑)
- 齊藤
- でもまあ、開発的な部分では、
いまや発売を待つだけなんですけど、
ようやく、これからがスタートラインなんです。 - 岩田
- やっとスタートラインに立ったわけですね。
- 齊藤
- そうです。
ベータテスト版でもそうですけど、
わたしたち3人は嘘だと思われるくらい、
オンラインに入っています。
本当に頻繁に、お客さんと遊んだり、
声を聞いたりしているので、
発売以降も、その姿勢は崩すつもりはありません。
- 岩田
- 「ゲームで会いましょう」ですね(笑)。
- 齊藤
- はい。さすがにいま、キャラクターに使っている名前を
製品版でも使うようなことはないですけど、
いつもみなさんのそばで、耳を傾けながら、
「さらによくなる『ドラゴンクエストX』の世界を
つくっていけたらいいな」と思っているので、
「ぜひとも体感していただければ」と思います。 - 岩田
- ありがとうございます。
さあ、堀井さんは長年の構想が、
やっと形になってお客さんに届きます。 - 堀井
- そうですね。
「ずいぶん環境も変わってしまった」と思うんですよ。
たとえばシナリオも、いまはインターネットが普及してるから、
どんでん返しのシナリオを書いても、すぐバレちゃうんです。
でもオンラインというのは、
遊んでいるほうも何が起こるかわからないという、
いわばネタバレしないシステムなんです。 - 岩田
- みんなが同時性をもって、
「新たなおどろきと、
出会えるチャンスをつくりつづけられる」
ということですね。 - 堀井
- そうですね。
「ワクワクする世界になれば・・・」と思います。
- 岩田
- はい、ありがとうございます。
わたしは、日本におけるオンラインゲームに対する、
社会の理解がどう変わるのかが、最大の興味なんです。
オンラインゲームを遠巻きに見ていた方たちが思っている、
ネガティブな面や、敷居の高さだったり、誤解だったり、
そういうものを『X』が変えてくれそうな気がしています。 - 堀井
- 新しいルールが生まれるかもしれないですしね。
一般の方も、普通に遊べるゲームになれば、
「そこに新しい秩序やルールが生まれるんじゃないか」
と思うんです。 - 岩田
- そうですね。
今回、オンラインゲームとしては“異端”のことに、
いくつもチャレンジされていますけど、
それは過去の常識における“異端”であって、
過去に非常識だったことが“常識”に変わっていくことこそ、
“イノベーション”ですから。そうなったら、
「長年みなさんがつくってきたことの価値が実るんじゃないか」
と思います。 - 堀井
- はい。ぜひ、そうなりたいですね。
- 岩田
- それにしても、
堀井さんといっしょに仕事をしている人は、
やっぱり普通では味わえない体験ができますね。 - 齊藤
- もう何年も仕事をしていますけど、
会議の一言一言でも、
「すごいなぁ」と思うときがありますから。 - 岩田
- 仕事って、たまに「ああ!」って思う体験があるんですけど、
堀井さんとの仕事は、
普通の何十倍という体験の密度なんじゃないですかね。
だから、しんどい要求もやってしまうのかもしれませんね。 - 藤澤
- ちゃんと、堀井さんの思っている方向に
行けていればいいんですけれども、大丈夫ですか? - 堀井
- うん、大丈夫じゃないかな。
大丈夫、大丈夫!(笑) - 岩田
- いやあ、やっぱり堀井さんの話は面白いです。
今日はみなさん、どうもありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。