『スーパーマリオギャラクシー 2』
開発スタッフ篇
- 岩田
- それでは最後に、お客さんにアピールしたいことを、
林田さんからお願いします。 - 林田
- 今回も前作同様に、
2人で協力するアシストプレイが
できるようになっていまして・・・。 - 岩田
- 前作よりも2Pの人がやれることが
増えたと聞きましたけど、どう増えたんですか? - 林田
- 今回はアシストチコというキャラクターが登場します。
- 岩田
- ロゴの右上にいるのがチコですね。
- 林田
- はい。前作のアシストプレイでは、
ポインターで敵をとめるだけだったんですけど、
今回は敵をとめながら、Wiiリモコンを振ることで、
敵を倒すこともできるんです。 - 岩田
- 2Pでも敵を倒せちゃうんですか?
- 林田
- はい。ですから
前作よりも、よりいっしょに冒険している感覚を
味わっていただけると思います。 - 早川
- あと、アシストチコはコインを持って、
マリオのあとをずっとついてくることができるんです。
Aボタンを押すとコインが持てるようになるんですけど
1UPキノコもひょいっと持ってきて、
マリオにあげるようなこともできるようになっていますので、
危険を冒して1UPキノコを取るようなことも
2Pがいれば楽にできます。 - 林田
- そうやって、今回はアシストプレイも楽しんでほしいのですが、
家族でプレイしていたら、やっぱり新しく自分のファイルをつくって、
自分でマリオを操作して遊びたくなるとも思うんです。
そうしたときに、ひとりではなかなか先にすすめない人もいるのではないかと。
そこで、ゲームをすすめるために必要なスターピースをたくさん集めたファイルから
他のファイルにあげられるように、「あずかり屋」をつくりました。 - 岩田
- つまり、家族で交互に遊んでほしいということなんですね。
- 林田
- そうです。その「あずかり屋」を通じて
家族のなかにコミュニケーションが生まれるといいと思ったんです。
実は個人的な話になりますけど、
わたしは夜遅くしか帰れませんので、
子どもが昼間に遊んで・・・。 - 岩田
- お父さんが夜遅く帰ってくると
子どもからスターピースがもらえると。 - 林田
- はい(笑)。そのように、アシストプレイも含めて、
家族みんなで楽しんでいただけるとうれしいですね。
- 岩田
- なるほど。それでは早川さん。
- 早川
- プログラマーの視点から言うと、
僕らは長年アクションゲームをつくってきて、
今回はWiiというハードのポテンシャルがわかったうえで
今作をつくることになりました。
その結果、60フレームで動くのもそうですし、
ロード時間がないようにしながら、それでいて絵も豪華にしようと。 - 岩田
- 絵の豪華な感じと、待ち時間のなさとか、
そういったバランスのよさは、
プログラマーとしては、やっぱり見てほしい部分ということですよね。 - 早川
- はい。そのようなことが実現できたのは
もちろんチームの総合力あってのことなんですけど、
実は何気ないところでもけっこういろんなことをやっているんです。
たとえば、とんでもないところからジャンプすると、
他の惑星の重力に巻き込まれて、
ショートカットできたりしますし、
遊びこめる要素はたっぷり仕込んであります。
なので、ゲームを解く楽しみだけではなく、
この世界でいろいろなことを試してもらえると、
さまざまな発見を楽しんでいただけると思います。
- 岩田
- 次は元倉さん、お願いします。
- 元倉
- デザイナー的な話をすると、
前作は神秘的な宇宙があって
そこを冒険するマリオという感じだったんですけど、
今回は青空に近いような感じで・・・。 - 岩田
- 前作は群青色の宇宙をバックに
マリオが飛んでいるというイメージでしたが、
今回は青空とマリオなんですね。 - 元倉
- そうです。それは開発初期からのひとつのテーマで、
そこにヨッシーが入ってきて、
前作とは違う世界観を楽しめるのではないかと。
それに、冒険に疲れたら、
ぜひ星船マリオに戻ってのんびりしていただきたいと。 - 岩田
- 星船マリオはなごめる場所なんですね。
- 元倉
- そうです。そこから星空を眺めるのもいいですし、
星船マリオが宇宙を冒険し、その先々では環境も変わりますので、
そういった変化も楽しんでいただきたいですね。
それからもうひとつ。
今作にはいろんなギャラクシーが出てきますが、
『マリオ64』の「バッタンキングのとりで」に似たステージがあったりとか、
過去のシリーズをモチーフにしたギャラクシーも登場しますので、
そういったところにも注目してほしいですね。
- 林田
- たとえば「でっかでっかギャラクシー」では
でっかいクリボーが出てくるんですけど、
これは『マリオ3』(※16)『マリオ64』のネタが
元になっているんです。 - 元倉
- 『マリオサンシャイン』に似たステージもひとつ入ってますし。
『マリオ3』=『スーパーマリオブラザーズ3』。1988年10月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。
- 岩田
- わかる人にはわかるようなネタも入っているので、
そういったステージを遊ぶことによって
過去のプレイ体験を思い出してほしいということですね。
では最後に小泉さん。 - 小泉
- 僕は今回、プロデューサーとして
開発スタッフに繰り返し言ったことは、
「とにかく丁寧にマジメにつくってほしい」ということでした。
どうしてそういうことを言ったかというと、
3Dのゲームはいろんなことをお客さんに求めているところがあって、
それが前作をつくって身にしみてわかったことだったんです。 - 岩田
- わたしから見て、前作にも増して
ずいぶん気を使って丁寧につくられていると思いますけど、
今回は、はじめたら「ついていけない」と感じる人を
ひとりでも出したくないという、
意地みたいなところがあったということですか? - 小泉
- はい。誰でも遊べるものにしたいという気持ちがあったんですけど、
そういう一方で「もっと歯ごたえがほしかった」
というお客さんもいらっしゃいますので・・・。 - 岩田
- 明らかに矛盾してますよね。
「もっと歯ごたえ」と「誰でもできます」というのは。 - 小泉
- 今回は、その矛盾するテーマを
僕たちは追ってきたわけなんですけど、
タイトルを『スーパーマリオギャラクシー 2』にしましたし、
先ほどの楽器のたとえで言うと、
より高度な演奏が楽しめて、より多彩な曲が楽しめる
ゲームになったんじゃないかなと思います。
一方で、前作よりも今作のほうが、
初心者の方にも遊びやすいようにつくられていますので、
とにかく食わず嫌いにならずに、
ひとりでも多くのお客さんに触っていただきたいと思います。
- 岩田
- そうですね。
わたしは今回、すごく印象的なことがあって、
もちろんわたしは、言われるまでもなく、
宮本さんがつくるゲームはいつも面白いと思ってるんですが、
宮本さんは「今度のは面白いと思う」と
わざわざわたしに言ったんですよ。
- 一同
- へえ〜!
- 小泉
- めったに聞かない言葉ですね。
- 岩田
- だから、この言葉を聞いてけっこう新鮮でした。
宮本さんはそういう言い方をあまりしない人ですので。
でも、わざわざわたしにそう言ったのは、
宮本さんが本当に手ごたえを感じているからだと思うんです。
それはたぶん、ネタ密度の濃さが
そう言わせているんじゃないかなと思っているんですね。 - 小泉
- ひょっとしたら今回は、
宮本さんが前作のときに「宿題で置いてきたな」と、
自分でも感じていたことを、
いくつか解決できたんじゃないかなと思うんです。 - 岩田
- 小泉さんとじっくり話すことで
この10年来、もうひとつ踏み込めないでいたことを、
スッキリ解決できて、すごく晴れ晴れしている感じでしたし。 - 小泉
- 僕も宮本さんと話すことで、
“共感”が大事なんだということがよくわかりました。
“共感”は言葉としてはすごくシンプルなんですけど、
ひとことで表せないくらい、大事で意味深い言葉だと思いました。 - 岩田
- そういう意味では、
たくさんのお客さんに実際にプレイしていただき、
ゲームのなかから“共感”を感じていただけたらうれしいですね。 - 今日はありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。