『スーパーマリオギャラクシー ２』

サウンドスタッフ篇

岩田

最初の頃の話に戻りますけど、
近藤さんから「いい曲じゃアカンねん」と言われた永松さんが、
「次の仕事は『マリオギャラクシー ２』です」と言われて
はじめにどんなことを考えたんですか？

永松

僕が入ったのは開発の途中からだったんですけど、
不安で数日は眠ることができませんでした。
やっぱり歴史と伝統のあるシリーズですし、
「どうしよう？」とまず思いました。

近藤

あれ、そうだったの？
僕が「『マリオギャラクシー ２』をやってよ」と言ったら、
ガッツポーズしながら「やったあ！」って言って、
握手まで求めてきたでしょう？

永松

いや、それは・・・！

一同

（笑）

横田

永松さんは入社したときからずっと
「オーケストラサウンドをやりたい」と言い続けてきたんです。

近藤

そうですよね。

岩田

だから、ついに念願が叶ったんですね。

永松

はい。そうなんです（笑）。
だから「やったあ！」と声をあげてしまったんですけど、
ひとりになって冷静に考えると不安になりました。

岩田

やっぱりふつうにつくっているときの音楽と、
フルオーケストラでアレンジを書いて、
録音までしてというときの音楽とは、だいぶ違うものなんでしょうね。
演奏家さんたちに生で演奏してもらうということで、
あとから「ああすればよかった」というわけにもいかず、
一発勝負になるじゃないですか。

永松

そうなんです。そこがいちばんの違いだと思います。
生演奏は過去にもありましたし、
もちろん生楽器を使うこともあるんですけど、
これほど大規模で、後戻りできない録音というのは
まったくもって、これまでになかった経験ですので、
まずはそこのところで、いちばん緊張しました。
だから、横田さんに何度も
「大丈夫でしょうか」と確認するようにしていました。

横田

それで、永松さんには
今回いくつかの曲をお願いしたんですけど、
すごく大規模な曲を書いてくれたんです。

永松

「クッパ最終決戦」という曲です。

岩田

最終決戦ですか？
永松さんは、オーケストラの曲をやることになって
最初は不安で夜も寝られなかったはずなのに、
最後の大事な曲を任されたんですか？

永松

そうなんです。
おかげで、またまた眠れなくなってしまいました。

岩田

（笑）

永松

それで頑張って書いたんですけど、頑張りすぎて、
演奏するのにとても難しい曲になってしまったんです。
そこで、横田さんに相談したら、
「楽譜をちょっといじらせてください」ということで、
しばらく待っていると、書き直された譜面が戻ってきたんです。
ところが、これがますます難しくなっていて。

岩田

ますます難しくなっていたんですか？（笑）

永松

はい（笑）。
そこで実際に、オーケストラの方に演奏していただいたら、
１回目の演奏が終わったときに
演奏家のみなさんの顔が一様に険しい表情になって、
「はあ～」と、ため息のようなものをつかれたんです。
だから「これはマズイんじゃないかな」と・・・。

横田

これがクラシック音楽だったら
半年とか練習時間があったりするんですけど。

岩田

今回のようにオーダーした曲だと、
その日にみんなで練習して、
その日のうちに録り終わらないといけないんですね。

横田

そうなんです。
ただ、永松さんはとても心配していたようなんですけど、
実は演奏しやすいように譜面を書き直したんです。
しかも、演奏するのはプロ中のプロの方たちですので、
絶対にうまくいくとわたしは思っていたんです。

永松

横田さんの言う通りで
わずか２、３回練習しただけで、完璧に演奏してくださったんです。

横田

しかも、演奏が終わったあとは
演奏家さんの間で拍手が起こりましたしね。

岩田

それは感動的なシーンだったんでしょうね。

永松

それはもう（笑）。

岩田

これを読んでいる読者のみなさんに
その曲を聴いていただくわけにはいかないんですか？

横田

発売前にいきなり最終決戦の曲が流れてしまうと・・・。

岩田

そこは発売されてからのお楽しみに、ということですね。

横田

はい。さらに、
この曲には男女のコーラス（混声合唱）も入って
すごく重厚な曲ができましたので、
ぜひ頑張ってプレイして聴いていただければと思います。
それに、今回はクラブニンテンドー^（※9）の
新しいポイント交換グッズとして、
「スーパーマリオギャラクシー ２　オリジナルサウンドトラック」が
出ることになりましたし。

クラブニンテンドー＝２００３年からはじまった、任天堂の会員制ポイントサービス。購入したWiiやニンテンドーDSのハードやソフトを登録するとポイントが獲得でき、そのポイントをオリジナルグッズと交換することができる。

岩田

前作に引き続き、ですね。

横田

しかも、『スーパーマリオギャラクシー ２』をポイント登録された方は
交換に通常500ポイントが必要なところ、
期間限定で300ポイントで交換できますので、
みなさんにはゲームをご購入いただき、
ぜひサントラＣＤもゲットして、
音楽も楽しんでいただければと思っています。
担当者による全７０曲の解説付きですので、内容盛りだくさんです。

岩田

では最後に、お客さんへのメッセージをひとことずつお願いします。

永松

僕は今作の『マリオギャラクシー ２』を完全クリアしました。
というのも、その前に『New スーパーマリオ Wii』に関わっていましたので、
なかなか頭の切り替えができなかったんです。

岩田

まずゲームをとことん遊びこんで、
そのソフトのなかにある世界観を自分のなかに取りこまないと、
曲を書きはじめることができなかったんですね。

永松

そうなんです。なので、
曲を書きはじめるまでにかなり時間がかかったんですけど、
何度もプレイするなかで、完全クリアすることもできて、
そのときの達成感がすごく大きかったんです。
もちろん初心者の方にも楽しめるようになっていますが、
腕に自信のある人は、ぜひ完全クリアにチャレンジしてほしいと思います。

岩田

横田さんはいかがですか？

横田

今回、いろんなことにチャレンジしたのですが、
ディスクの読み込み時間の短縮化もそのひとつなんです。

岩田

読み込み時間の短縮化については
サウンドチームでもやれることがいっぱいあるんですよね。

横田

はい。たとえば『マリオギャラクシー ２』を遊びはじめると
すぐにタイトル画面が出てきて、
ＢＧＭはちゃんとオーケストラで鳴っているんですけど、
そこにはちょっと工夫をしているんです。
なので、ロードでお待たせするようなこともなく、
ボタンを押したらすぐにゲームをはじめられます。
そういう意味では、ロード時間の短さも
今作の特徴のひとつですので、ストレスを感じることなく、
思う存分、マリオの冒険を楽しんでほしいですね。

岩田

最後に近藤さん、お願いします。

近藤

個人的なことを言いますと、
僕が担当したのは５曲ですけど、
今回はとても悩んで、時間をかけてもなかなか曲ができなくて、
横田さんやスタッフのみなさんを焦らせたかとは思うんです。
でもそのぶん、自分としても満足できる曲ができたかなと思っています。
ゲーム的には、ちょっと手ごたえがあったりしますけど、
もう１回やりたくなるような、そういう楽しさがあるゲームですので、
ぜひみなさん、遊んでください。

岩田

ありがとうございました。
前作で評判のよかったオーケストラサウンドが、前作以上になり、
プラスアルファの音楽要素も満載ですから、
そういう意味でも、いろんな角度から味わってほしいですね。

横田

はい。それでたくさんの方に音楽も聴いていただきたいです。

岩田

本日はどうもありがとうございました。

一同

ありがとうございました。

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