『ドンキーコング リターンズ』

1. “運命”という名のコードネーム

※この社長が訊くインタビューは通訳を介して行われたものですが、全文を日本語にして掲載しています。 ### 1. “運命”という名のコードネーム 岩田 : 今日は海の向こう、遙か彼方のテキサス州・オースティンの
レトロスタジオ(※1)のみなさんと、ここ京都の人たちといっしょに、
『ドンキーコング リターンズ』の話を訊きたいと思います。
さて、今日参加されているみなさんに自己紹介してもらおうと思います。
レトロスタジオのみなさんからどうぞ。 レトロスタジオ=米国テキサス州オースティンにあるゲームソフト開発会社。1998年に設立され、『メトロイドプライム』シリーズの開発を手がけてきた。 {:.note-sm .faded title="※1"} カイナン : カイナン・ピアソンです。
わたしはシニアプランナーの仕事をしていました。
今回の『ドンキーコング リターンズ』では、
レベルデザイン(コースデザイン)を担当しました。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo1.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} マイク : わたしはマイク・ウイカンです。
同じくシニアプランナーを担当しました。
今回の『ドンキーコング リターンズ』では、
敵とボスの仕様を担当しました。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo2.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} トム : トム・アイビィです。同じくシニアプランナーです。
今回はゲームシステムを担当しました。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo3.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : では、任天堂のおふたりにも自己紹介をお願いします。 田邊 : 英語で・・・ですか?(笑) 岩田 : どちらでもかまいません(笑)。 田邊 : I'm Kensuke Tanabe. (田邊賢輔です)
・・・いやいや日本語でいきましょう(笑)。
今回の『ドンキーコング リターンズ』ではプロデュースを担当しました。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo4.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : 田端さん、英語でしゃべりますか? 田端 : いいですか(笑)。(モニターのレトロスタジオの3人に向かって)
Should I introduce myself in English to you?
(英語で自己紹介しましょうか?)
・・・冗談です(笑)。田端里沙です。
アシスタントプロデューサーということで“何でも屋”をやっていました。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo5.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : さて、ゲームファンのみなさんにとって、
レトロスタジオは『メトロイドプライム』シリーズ(※2)
つくってきた会社として知られてきましたが、
そのような会社が突然、
2010年のE3(※3)まではずっと内緒にしてきた
『ドンキーコング』の新作を発表したわけですけど、
そもそも、どうしてレトロスタジオで
『ドンキーコング リターンズ』をつくることになったのか、
という話からはじめたいと思います。
この話は田邊さんから訊くのがいいですね。 『メトロイドプライム』シリーズ=1作目はゲームキューブ用ソフトとして、2003年2月に発売されたファーストパーソン・シューティングゲーム。シリーズは3作発売され、2作目の『ダークエコーズ』は2005年5月にゲームキューブ用ソフトとして、3作目の『コラプション』は2008年3月にWii用ソフトとして発売された。 {:.note-sm .faded title="※2"} 2010年のE3=E3とは、Electronic Entertainment Expo(エレクトロニック エンターテインメント {:.note-sm .faded title="※3"} エキスポ)の略で、米国のロサンゼルスで開催されるコンピューターゲーム関連の見本市のこと。2010年のE3で『ドンキーコング リターンズ』が初めて公開された。 田邊 : はい。忘れもしない2008年4月のことで・・・
すでにE3の「社長が訊く『Donkey Kong Country Returns』」で、
このお話はしましたけど、レトロスタジオで
『メトロイドプライム』シリーズをつくってきた中心メンバーの数人が
会社を辞めてしまうという“事件”が起こったんです。
そのとき、わたしは「どうしようか・・・」と思ったのですが、
本当にたまたまなのですが、同じ頃に宮本さんから
「『スーパードンキーコング』(※4)の新しいのをつくりたいんだけど、
どこかいい開発会社はない?」という話がありまして、
「レトロスタジオはどうでしょうか」と言ったのが
このプロジェクトのそもそものはじまりなんです。 『スーパードンキーコング』=1994年11月に、スーパーファミコン用ソフトとして発売された横スクロールアクションゲーム。スーパーファミコンでは3作が登場したほか、ゲームボーイアドバンスでも発売された。 {:.note-sm .faded title="※4"} 岩田 : その件についてあえてちょっと踏み込んで話しますと、
「レトロスタジオでキーになっていたメンバーのうちの何人かが
会社を離れることになった」という話があったときに、
「レトロスタジオはそれ以降も質の高いゲームを
つくり続けることができるのだろうか」ということについて、
懐疑的に見ていた人も少なくなかったと思うんです。
結果的にレトロスタジオのみなさんは、
そのように懐疑的な見方をしていた人の
懸念を吹き飛ばしてしまったわけですけど、
おそらく、ある種のチャレンジと苦難があったと思うんです。

というのは、新しく中心になっていく人が
どんな役割を担い、どうやってチームをまとめていくのかということを
短期の間に決めないといけなかったはずですし、
しかもその人たちは、過去に証明された実績がないのに
ほかの人たちをリードする責任を負うという、
すごいプレッシャーに向き合う宿命があったはずだからです。
ですから、そのときレトロスタジオのみなさんが
この状況をどういうふうに考えていたのかを、
少しお話してほしいのですが。 カイナン : そうですね・・・『メトロイドプライム』シリーズのキーメンバーの
何人かがいなくなったことは、もちろんつらい出来事でした。
でもその一方で、そのことをキッカケにして
新しいやり方や新しい考え方を導入できる
チャンスじゃないかと思いました。 マイク : わたしもつらいプロジェクトというよりも、
『スーパードンキーコング』という素晴らしいタイトルに
関われるということで絶好の機会だと思いました。
そう思うと同時に、ファンの待っていた『スーパードンキーコング』を、
期待を裏切らないものにするために大きな責任も感じていました。 トム : マイクと同じように、わたしも大きな責任を感じていました。
でも、ここにいる3人とは
いままでずっといっしょに仕事をしてきましたし、
それぞれの仕事のやり方を理解しているので、
あまり不安はありませんでした。
これまでのように、お互いに考えをぶつけ合うことによって、
より良いアイデアを生むこともできましたし、
チームが一丸となって進めていく体制が
結果的にプラスになったのではないかと思います。 田邊 : 今回のプロジェクトでは、この3人がうまくかみ合って、
僕らの不安を吹き飛ばしてくれるくらい、
プロジェクト全体をうまくまとめてくれたんです。 カイナン : もともとレトロスタジオのスタッフはベテランが多いのですが、
スタッフみんなが、これまでのシリーズとは違う
新しいプロジェクトに参加できるということで
すごくワクワクしました。 トム : しかも、これまでの『メトロイドプライム』のプロジェクトを通じて、
スタッフがそれぞれの分野で、スキルを高めることができていましたし。 マイク : ですから、不安を感じるというよりは、
『メトロイドプライム』のシリアスな雰囲気に比べると、
今回の『ドンキーコング リターンズ』はすごく明るいゲームですので、
その空気がチーム内にも拡がっていたようにも思います。 岩田 : 最初は苦難と感じたけれども、
『スーパードンキーコング』という
新規タイトルにチャレンジすることが、
レトロスタジオのみなさんにとっては絶好の機会になると思い、
同時に3人でチーム内をうまくまとめることができたんですね。 トム : はい。でも、正直に言いますと・・・。 岩田 : どうぞ。 トム : このプロジェクトのはじまる前に、わたしたちは京都に行って、
岩田さんと宮本さんとお会いしましたけど、
そのときは・・・ものすごく緊張しました(笑)。 岩田 : あ、確かに緊張していましたよ、あのときの顔は(笑)。 ![](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/img/photo6.jpg){:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} トム : はい(笑)。
ただ、そのいちばん最初のミーティングのときに、
わたしたちの方向性が見えると同時に
このプロジェクトのビジョンを共有できたと思いますので、
その点でも不安はなくなりました。
しかもそのとき、岩田さんがすごくハッピーな表情をされていたのが、
とても印象的だったんです(笑)。 岩田 : それはなぜかというと、それまでに田邊さんから聞いた話や、
当日みなさんとお話したことで、
レトロスタジオのみなさんなら
『スーパードンキーコング』の新作をお任せできると思ったからです。
それにはいろんな理由がありますが、
そのひとつはスタッフのみなさんのなかに
スーパーファミコンの『スーパードンキーコング』を
すごく遊びこんだ人がたくさんおられたということがありました。 カイナン : はい。『スーパードンキーコング』というタイトルに対して
すごく情熱をもっているスタッフがたくさんいました。 マイク : レトロスタジオのスタッフには
『スーパードンキーコング』のファンがとても多いんです。 田邊 : ファンというだけでなく、彼らめちゃくちゃうまいんです。
実は僕、スーパーファミコン版のときに
『スーパードンキーコング』のローカライズを担当しているんです。
なので、腕には自信があったんですけど、
彼らのほうが圧倒的にうまかったんです。 岩田 : わたしも、田邊さんからそれを聞いて驚いたんです。
それがとてもラッキーなことで、
実はわたしは、このプロジェクトがうまく進んだ背景には、
そういうことも大きな要因だったと思うんです。
自分たちがよく知っている、このタイトルに関われることに、
誇りと幸せを感じてもらえて、その分、情熱がエネルギーとなって、
今回のソフトに注ぎ込まれたように感じました。 カイナン : そうです。わたしたちが京都で岩田さんとお会いしたとき、
とても印象的なお話があって、
「今回はすごくいい“機会”ですね」とおっしゃったことなんです。
それは、わたしたちレトロスタジオにとっても、
新しい『スーパードンキーコング』を待っている人たちにとっても
すごくいい“機会”になるということだったんですね。
もともと『スーパードンキーコング』は、
みんなに愛されているシリーズですので、
それに自分たちのアイデアが盛り込めるということは、
“絶好の機会”になるんじゃないかと感じていました。 田邊 : いまカイナンさんが言った「いい機会」というのは
岩田さんは、最初のミーティングのときに
“ご縁”という言葉を使われたんですよね。
今回のプロジェクトに大きな“ご縁”を感じると。
その“ご縁”という言葉は、なかなか英語に訳しづらいのですが、
レトロスタジオの人たちは、 “Fate(運命)”と訳し、
『ドンキーコング リターンズ』の開発コード名を、
“Fate”と同じ音の『F8(フェイト)』と呼ぶことにしたんです。 岩田 : わたしたちは、このソフトをつくるべくして出会い、
そしてこのソフトができたのだと、
わたしも“運命”のようなものをとても感じますね。 [2. “マジックモーメント”が起こって](/others/interviews/jp/wii/sf8j/vol1/2/) {:.read-more}

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