『ドンキーコング リターンズ』
5. 『New スーパーマリオブラザーズ Wii』とは違う2人プレイに
- 岩田
- 今回、2人用の同時プレイを実現したことも
大きなチャレンジのひとつでしたよね。 - 田邊
- はい。
- 岩田
- どうして2人用を入れようと思ったのですか?
- 田邊
- いつも新しい企画をはじめるときは、
これまでのものとは違う新しいものであるとか、
独創的なシステムを入れることを、まず考えるんです。
これは僕が情報開発本部にいた時代に、
宮本さんから徹底的にたたき込まれたことなんですけど。
- 岩田
- わたしが『カービィ』をつくっていたときも、
宮本さんからいちばん教わったのは、そこの部分です。 - 田邊
- そうなんですね(笑)。
『ドンキーコング リターンズ』をはじめるときも、
新しい部分をどうしようかという話を
田端さんと2人でしていたんです。
で、その前に
『ジャングルビート』(※10)が出たということもあって、
あのソフトとの大きな差別化も必要だと。
そこで「最低限、これだけはやりたい」ということで
考えたのが2人同時プレイだったんです。
もともと『ドンキーコング』シリーズは2人で遊べるんですけど、
1人ずつしか遊べなかったので。 - 岩田
- 交代で遊ぶようになってましたからね。
『ジャングルビート』=『ドンキーコング ジャングルビート』。2004年12月にゲームキューブ用ソフトとして発売された、タルの形をした専用コントローラ「タルコンガ」対応の横スクロールアクションゲーム。その後、2008年11月にWii版も発売された。
- 田邊
- はい。ドンキーコングとディディーコングがタッチして、
1人ずつ交互に遊ぶようになっていたんです。
そこで2人同時プレイを実現しようと思ったのですが、
宮本さんは「1人で遊んでも、2人で遊んでも
面白いものをつくるのはすごく大変だから、
まず1人用をつくることに集中しなさい」と言われたんです。
でも、レトロスタジオに対しては
「これは2人用をやるから、そのつもりで」と、
けっこう早い段階に伝えたと思います。 - 岩田
- レトロスタジオのみなさんは宮本さんが
「1人プレイに集中したほうがいい」と
コメントしていたことは、知っていたんですか? - 田邊
- いちおう伝えましたよね?
- カイナン
- はい。
- 岩田
- それでも2人用を実現しようという田邊さんの話に、
みなさんは不安なくついていけましたか? - カイナン・
マイク・トム - (揃ってうなずく)
- 岩田
- お、素晴らしいチームですね(笑)。
- カイナン
- ただ、正直な話をしますと、
最初に指示をいただいたのは宮本さんからだったんです。
「1人用でまずつくりなさい」と。
そこで、わたしたちもそれを第一優先でつくっていたんですけど、
ある日突然、田邊さんから「マルチプレイに」と言われまして、
2人の意見にはさまれて、少々悩んだのは事実です(笑)。
- 岩田
- やっぱりそうですよね(笑)。
- カイナン
- ただ、実現するのは簡単なことではなかったんですが、
最終的に2人プレイを入れたのは正しかったと思います。 - 岩田
- 2人プレイを実現しようとすると、
どうしても1人用と2人用の難易度調整で苦労したりしますよね。
今回は、それをどうやって解決したんですか? - 田端
- とくに難易度を大きく変えようとは思っていなかったんです。
ただ、2人で遊んだときのほうが
バルーンと呼ばれるライフをどんどん消費しますので、
その分ライフを増やしやすくしてあげたいとか、
そんな話はしていましたけども、1人用だから、
2人用だからというふうには変えませんでした。 - 岩田
- それで、しっかりとバランス良く遊べるようになりましたか?
- 田邊
- ひとつ、
『New スーパーマリオブラザーズ Wii』の複数プレイと違うのは、
プレイヤー同士の当たり判定をとってないんです。
なので、同じくらいのレベルのプレイヤーといっしょに遊ぶと、
2人揃って、ものすごいスピードで先に進めることができますし、
『マリオ』とは違うスピード感や感触を
楽しめるようになったと思います。
それに、ドンキーコングの上にディディーが乗っかるようなシステムを
レトロスタジオさんがつくってくれましたので、
あまりうまくない人でもディディーコングを選ぶと・・・。 - 岩田
- 連れて行ってもらうことができるんですね。
- 田邊
- はい。ですから、当たり判定をつけなかったことが、
結果的に1人用、2人用の難易度を考えなくても大丈夫になった
ひとつの要素だと思いますね。 - 岩田
- ところで『スーパードンキーコング』が出てから16年ですよね。
- 田邊
- はい。1994年発売です。
- 岩田
- たぶん『スーパードンキーコング』を当時遊んだ人のなかには、
お父さんになっている人もいっぱいいるはずなんです。 - 田邊
- 僕もそうです(笑)。
- 岩田
- だからお父さんとお子さんと2人で遊んでいただくというのも、
ひとつの遊び方かなと思いますね。
もちろん友だち同士でもいいですし、1人で遊んでもいいんですけど。
- 田邊
- うちにいるのは娘たちなので、
『メトロイドプライム』のときはちょっと難しかったのですが、
今度はいっしょに遊べると思います(笑)。 - 岩田
- (笑)。
レトロスタジオのみなさんのなかにも、
「家族といっしょに遊びたい」と思っている人が、
きっといるんじゃないでしょうか? - マイク
- わたしには14歳の息子と17歳の娘がいますから
今回、2人ともすごく心待ちにして、
「早く遊びたい」と言っています。 - カイナン
- わたしには4歳の息子がいるのですが、
開発の終盤はとても忙しくて、遅くまで仕事をしていましたので、
いっしょに過ごす時間があまりなかったんです。 - 岩田
- どんなに忙しくても、
家族といっしょに過ごす時間は大事ですよね。 - カイナン
- もちろんです。
長かった開発もようやく終わり、
わたしたちがつくった『ドンキーコング リターンズ』を
2人で遊ぶのをとても楽しみにしているのですが、
息子は4歳と、まだ小さいですから、
難しいところはドンキーのわたしが、ディディーの息子を背負って、
いっしょに遊ぶことになるでしょうね(笑)。