『New スーパーマリオブラザーズ Wii』
- 宮本
- 最初、「おてほんプレイ」は
はじめからメニュー画面で見られるようにしていたんです。
でも許せないから、いろいろ考えた結果、
3回ミスをすると、初めてヒントブロックが出てくるようにして、
それを叩くと、「おてほんプレイを見ますか?」
という表示が出てくるようにしました。 - 岩田
- 3回挑戦して、それでもうまくいかない人が
「おてほんプレイ」が見られるようにしたんですね。 - 宮本
- そこで実際に自分でもやってみたんです。
でも、それでもムッとしたんです。 - 岩田
- (笑)
- 宮本
- 「このオレをなめてんのかー!」みたいな(笑)。
最初からヒントブロックが出ているときは、
「余計なことせんといてほしい」くらいなんですよ。 - 岩田
- 最初から出ていれば「オレには関係ない」で
すんじゃうんですね。 - 宮本
- そうなんです。
でも、3回ミスをしてそれが出ると・・・。 - 岩田
- かなりムッとする?
- 宮本
- (声を荒げて)ほっとけよ!!と。
- 岩田
- あははは(笑)。
泣きそうになって出るんだったらいいんだけど、
まだまだやるぞと、やる気満々のときに出ると、
「いまオレは燃えてるのに、なんだよ」と思うんですね。 - 宮本
- そうなんです。
- 岩田
- 結局、何回ミスをしたら
ヒントブロックを出すようにすればいいのか、
そのタイミングがすごく大事なんですね。 - 宮本
- そこはすごく悩みました。
5回がいいのか、それとも10回だったらいいのかと。
で、僕は10回がいいかなと思ったんですけど、
その中間を考えている人がいて、
「8回がいいんじゃないでしょうか」と。 - 岩田
- ほぼ真ん中をとったんですね。
- 宮本
- ゲームは最初、マリオは5人ではじまります。
でも、少し進めば何回か1UPしますから、
ひとつのコースを1〜2ゲームプレイして、
それでも先に進めないのなら
次のコースに進んでもらってもいいんじゃないかと。
そこで、8回ミスをすると、
ヒントブロックが出てくるようにしました。
でも、ここが不思議なもので、8回で出るとなると
「オレは1個も出したくない」と思うんですよ、僕は。
- 岩田
- そこは、ゲーマーとしてのプライドが(笑)。
- 宮本
- 許せないんです(笑)。
だから、なんとかそのコースを
7回以内でクリアしようとするんですね。 - 岩田
- 自分で「おてほんプレイ」の仕掛けをつくっておきながら、
「出したくない」とムキになるというのが面白いですね(笑)。 - 宮本
- すると、ヒントブロックを出さなかった人に対して
何かわかるようなものを入れたくなるんです。 - 岩田
- じゃあ、がんばった人に対しては?
- 宮本
- はい。がんばった人には、タイトル画面で
“ヒントブロックを出してない勲章”というのが
わかるようにしました。 - 岩田
- なるほど。
- 宮本
- で、そういうのを入れると、
1度でもヒントブロックが出ると
セーブデータを全部消して、
もう1回、はじめからやり直したくなるんです。 - 岩田
- つまり8回ミスをすると
ゼロからやり直すんですね(笑)。 - 宮本
- はい、途中のデータに戻してやり直す(笑)。
そういうスタッフも多いですし、
そういう遊び方をするとけっこうしびれますよ。
それまでは無造作に遊んでいたのが
襟を正して遊ぶようになりますから。 - 岩田
- まさに毎回真剣勝負(笑)。
- 宮本
- 真剣勝負です。
そういったことは「おてほんプレイ」を考えなかったら
思いつかなかったネタで・・・。 - 岩田
- マリオクラブ(※22)の猛者たちは
どんな感想を言っていましたか?
マリオクラブ=マリオクラブ株式会社。任天堂の開発中ソフトのデバッグやテストプレイを行う。
- 宮本
- 彼らは「おてほんプレイ」は実際、関係ないんですよね。
ゲームがうまいですから。
あるとき「このコースは難しいですね」と言うので
その人のデータを見たんですよ。
そしたら3回しかミスをしてないんです。 - 岩田
- 3回ミスをしたくらいで難しい(笑)。
- 宮本
- マリオクラブには、それこそパーフェクトを狙うような
猛者がいっぱいいるんですけど、
今回、その猛者中の猛者のスーパープレイが見られるようにしました。 - 岩田
- スーパープレイを見られるというのは?
- 宮本
- やっぱり『マリオ』ですから、
いつものようにスターコインが
各コースに3枚ずつ置いてあるんです。
もちろんこれは、「おてほんプレイ」では取ってくれないですし、
取り方も教えてくれないので自力で取らないといけないんですね。 - 岩田
- だから、攻略プレイだけでは絶対に終わらないし、
本当にうまい人だけが
ちゃんと違いをアピールできるようになっているんですね。
- 宮本
- うまい人はスターコインを自分の腕で集めることで、
スーパープレイばかりの「おたからムービー」を
見られるようになります。 - 岩田
- マリオクラブの猛者中の猛者の超絶プレイを見てもらって、
うまい人がさらにうまくなるための
「おてほん」にしてもらおうということですね。 - 宮本
- そうです。
さらに、スターコインを集めて、ある条件をクリアすると
新たに9ワールドのコースに挑戦できるようになります。 - 岩田
- そこまでやった人なので
9ワールドはそれなりにすごいんでしょうね。 - 宮本
- 全部が全部、難しいわけじゃないですけど、
ちょっとユニークなコースとか
難しいコースも用意しています。 - 岩田
- 容赦しないコースですね?
- 宮本
- はい、容赦しません(笑)。
だから、『マリオ』が初めての人だけでなく、
うまい人も存分に遊び尽くせる仕組みになっていますから、
ひとりでもとことん楽しんでもらえると思います。
それに今回はマルチプレイがあるので、
これがまた、遊ぶたびに違うコースのような感じで
楽しんでもらえると思います。 - 岩田
- ちなみに、マルチプレイの実現は
最初からお題にしていたんですか? - 宮本
- はい。
- 岩田
- 宮本さんは『マリオブラザーズ』以来ずっと
マルチプレイの『マリオ』を志向していて、
毎回チャレンジするけど、なかなかうまくいかない・・・。
『マリオ64』(※23)のときも、
マリオとルイージの2人が走り回るところから
はじまっているんですよね。 - 宮本
- ええ。
2画面に割って、別々にお城に入っていって、
マリオとルイージが通路で出会うと
すごくうれしかったんですよ(笑)。
それにカメラを固定して、マリオが遠くに走っていくと、
どんどん小さくなっていくというモードもありました。 - 岩田
- そうでしたね。
- 宮本
- あれは、マリオとルイージが走りながら、
どんどん離れても2人が見えるようにするという実験の名残なんです。
でも、なかなか収拾をつけることができなくて・・・。
『マリオ64』=『スーパーマリオ64』。NINTENDO64と同時に発売された、マリオ初の3Dアクションゲーム。1996年6月発売。
- 岩田
- そのように長年のテーマだったマルチプレイが
今回どうして実現できることになったんですか? - 宮本
- それはもうWiiの処理能力のおかげです。
圧倒的にCPUが速いですし、
グラフィック能力は高いですし、メモリはたくさんあるし。 - 岩田
- 宮本さんの長年の夢が
Wiiでようやく実現されたんですね。 - 宮本
- はい。