『New スーパーマリオブラザーズ Wii』
- 宮本
- 今回の『Newマリオ』を
マルチプレイにしてわかったことがあるんです。 - 岩田
- はい。
- 宮本
- そもそも『マリオ』というのは
落ちてミスしたら振り出しに戻るというゲームなんですね。 - 岩田
- はい。
- 宮本
- だから難しいんです。
ボスの直前まで行けても、溶岩に落ちて「あちち」となったら
振り出しに戻されて、またイチからはじめると。 - 岩田
- 容赦ないですよね、落ちたときは。
- 宮本
- そうなんです。
さらにお城をクリアする前にミスをしたら、
コースの振り出しに戻ると。
これ、僕のイジワルかもわかんないですけど(笑)。
そういうボリュームで遊んだほうが
実は面白いと思っているんです。 - 岩田
- コースのはじめからやり直したほうが面白いんですか?
- 宮本
- アクションゲームというのは、
難易度の高いところだけを遊び続けるとしんどいんですよ。
多少自分が上手にできてしまうところも遊ぶから気持ちがいい。 - 岩田
- 確かにそうですね。
- 宮本
- それは僕の信条で・・・。
- 岩田
- だから、途中セーブをいくつもつくるよりも、
もう1回やさしいところから遊んでもらおうと。 - 宮本
- はい、そのほうが気分がいいんです。
で、上手なところを遊んでいるうちに
さらに上手になっていくんです。
昔、ゲームセンターのシューティングゲームが
どんどん難しくなっていった時代に
コンティニュー方式というのができて・・・。 - 岩田
- 100円を入れたら続きができる。
- 宮本
- それは確かにゲームセンターはうれしいですよ、
100円玉がどんどん入るので。
けど、お客さんは
自分の限界のところばっかり遊んでいるわけですよ。
そんな遊びは気持ちよくないと思うんです。 - 岩田
- そうですね。
- 宮本
- エキサイトはするんですけど、
気持ちよくないんです。 - 岩田
- 興奮はするけれど、
「オレはうまいぞ」という気持ちにはなれない。 - 宮本
- そうなんです。
- 岩田
- 「オレはまだまだヘタだ」
ということばっかり味わうわけですから。 - 宮本
- けど、つい「緊張感があるほうが楽しい」と考えて
ゲームバランスの話をすると、
必ず緊張感を高める方向に向かおうとするんです。
けど、本来は緊張感はそこそこあって
楽しく遊べることが理想なんですよ。
でも、なかなかそういうものばかりもつくれないので、
コースを多少引き返して遊ぶのが
アクションゲームの正しい楽しみ方やと思っていて、
僕はわりとこだわっているんですね。
- 岩田
- でも、4人プレイだとそうはならないですよね。
- 宮本
- そうはならないんです。
それがちょうどほどよくって、
4人のうち、1人でも生き残っていると
どんどん先に進めるんです。 - 岩田
- ミスをしても先に進めるので
ヘタな人でもみんなで遊べば
最後まで連れて行ってもらえるんですよね。 - 宮本
- ええ。だから、
「おてほんプレイ」を見てクリアするのと、
「おてほんプレイ」でクリアしたことにしてもらうのと、
その中間の、ほどよいゲームバランスにしたつもりです。
だから、幅広いお客さんに
いろんな楽しみ方をしていただけると思います。 - 岩田
- 宮本さんは、今回ものすごく手ごたえを感じているんですね。
- 宮本
- もちろんです。
- 岩田
- 宮本さんがこれまで
ずっとつくりたいと思ってきた構造のゲームを
今回実現できたと感じているんですよね。 - 宮本
- ええ。
『マリオ』を使ってマルチプレイを実現させたいと
ずっと思ってきましたし、長年の夢だったんです。
今回は、それはできた感じがします。 - 岩田
- ここしばらく、宮本さんが
商品のひとつひとつに深く入ることが多いですけど、
今回の『Newマリオ』は、その中でも
入り方の深さが明らかに違いましたね。 - 宮本
- 仕様書も書きましたし(笑)。
- 岩田
- (笑)。
本当にお疲れ様でした。
わたしは2009年のE3で
「任天堂は“みんなのゲーム”をつくりたい」
という話をしました。
ゲームがその進化と共に、
ゲームがうまい人のためのゲームと
初心者のためのゲームにどんどん分かれていくのが
常識となってきましたけど、
ゲームを操作する技量にかかわらず、
誰もが楽しめるゲームをつくることが
これからもゲーム人口を拡大していくために必要だと
確信していたからです。
だけど、「そんなことはできるわけはない」と思われているせいか、
あまり話題にしていただけなかったのですが、
わたしはけっこうまじめに
“みんなのゲーム”ということを考えていて、
そのことは宮本さんと10年以上ずっと
話し続けてきたんですが、
今回、宮本さんは、『マリオ』という
決してそれが容易でないテーマで
“みんなのゲーム”をつくっちゃったなあ、というのが
今回のわたしの印象です。 - 『Newマリオ』がどんなふうに遊ばれるのか、
いろんな人が「わたしにもできた」と思い、
腕に自信のある人が「ヌルくない」と感じて、
ヒントブロックが出ないように
データを消して最初からやり直すのが、
ちょっと楽しみですね。 - 宮本
- 最後にもうひとこと、いいですか?
- 岩田
- はいどうぞ。
- 宮本
- 今回はWiiリモコン横持ちなので
十字ボタンと1、2ボタンだけで遊べます。 - 岩田
- ファミコン時代の操作ですね。
- 宮本
- ただ、Bダッシュ(※27)だけは覚えてください。
Bダッシュができないとけっこうツライので。
Bを押さえてモノを持つというのと、それからBダッシュ。
それに、Wiiリモコンならではの
ユニークな振り操作も入っています。
なので、振りとBを覚えると
かなり熱くなって遊んでいただけると思います。
Bダッシュ=今作『New スーパーマリオブラザーズ Wii』では、Wiiリモコンの1ボタンを押しながら移動することでダッシュすることができる。
- 岩田
- 今回は、Wiiリモコンの1ボタンでダッシュですよね?
それって、どう呼びましょうか? - 宮本
- やっぱりBダッシュでしょう(笑)。