『New スーパーマリオブラザーズ Wii』
- 岩田
- さて、1984年に3人のチームが結成されて
25年、四半世紀を迎えたわけですけど
ふだんはどのような会話をしてるんですか? - 中郷
- もともとは
“同好会”からはじまったようなものですので。 - 岩田
- “同好会”?
- 中郷
- 昔はよく言ってたんですよ、
「僕ら、別にプロやないので」と。 - 岩田
- え・・・ちょっと待ってください。
あれほどたくさん、世界中の人たちに受け入れられた
ソフトをつくったチームが、
プロじゃなくて“同好会”なんですか? - 中郷
- 僕はもともとゲームをつくりたくて
SRDに入ったわけではないですし。 - 手塚
- 僕も『パックマン』を知らなかったわけですし。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- でも、“同好会”じゃないでしょう。
- 中郷
- いや、でも今でもお昼ごはんを食べながら
「土日に面白いことはあった?」とか聞いたりすると、
手塚さんは携帯電話で写真をちゃんと撮っていて、
「これ見て」と、見せてくれるんです。
そんな感じで毎日友だちの会話をしてます(笑)。 - 岩田
- 「面白いもの、見つけた」と
土日にあったことを報告しあうんですね。 - 中郷
- ええ。僕らの話はだいたいそんな感じです。
先日も「会社に行くのが楽しい」という話になって。
ふつうは、土日に休んで
月曜日に出社するのはしんどかったりしますけど・・・。 - 岩田
- それは、わたしも同じです。
休日に何かいいことを思いつくと、
出社したら、あれをしようとか、これを言おうとか、
月曜が来るのがけっこう楽しみだったりするんですよね(笑)。
宮本さんは明らかにそうだし、
手塚さんも週末に面白いことがあると、
何かを言いたくてしょうがない顔で来ますから。 - 手塚
- ふふふ(笑)。
- 岩田
- でも、そういう会話のなかから
ものづくりのネタが生まれてきたりするんでしょう? - 手塚
- それはそうです。そうじゃないと、
会社にただ遊びに来てるだけになりますから。
- 一同
- (笑)
- 手塚
- やっぱりお昼ごはんを食べながら
いろんなことが決まっていきますし。 - 中郷
- けっこう重要なことも決まりますよね。
「どっちにしておきましょうか?」と
お昼ごはんのときによく聞きますし。
それに、子どもの頃に夢中になっていた話もよくしますね。
僕なんかはふつうの人間なんで、何もしてないんですよ。
ところが、宮本さんはいろんなことをされてて・・・。 - 岩田
- 宮本さんが少年時代に
京都の田舎町の野原を駆け巡ったことと、
『スーパーマリオ』ができたことは
無縁じゃないんですよね。 - 中郷
- でも、「ぜんぜん関係ないよ」と
自分では言うんですよ。 - 岩田
- わたしは絶対に無縁じゃないと思います。
- 手塚
- 僕もそう思います。
- 岩田
- もちろん宮本さんは
『スーパーマリオ』をつくろうと思って
少年時代を過ごしたわけじゃないんですけど、
当時経験したことがネタになっているんですよね。 - 中郷
- やっぱり何でもネタにする人ですし。
- 岩田
- 毎日体重を量って、それを記録することから
『Wii Fit』(※27)も生まれましたしね。
『Wii Fit』=バランスWiiボードに乗ってプレイする、フィットネスソフト。2007年12月発売。2009年10月には、バージョンアップされた『Wii Fit Plus』も発売された。
- 中郷
- 手塚さんもそんなところがあるんですよ。
ネタをいろんなところから拾ってきて、
何でもネタにするんです。 - 岩田
- それは、自然にされているんですか?
- 手塚
- 自分でもあんまり意識してないんです(笑)。
忘れてること、多いですし・・・。
「そうだっけ?」と思うのはよくあります。 - 岩田
- 自分で言い出したことも忘れて
「そうだっけ?」とよく言うんですよね、手塚さんは(笑)。
- 中郷
- (笑)。
そう言えば、手塚さん、
今回の『New スーパーマリオブラザーズ Wii』をつくっていて
コインに関してやりとりがあったでしょう。 - 手塚
- そうだっけ?
- 中郷
- そうそう、そんな感じ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 中郷
- 風のネタをつくってて、
「コインを飛ばそう」と最初に僕が言って。 - 手塚
- ああ、あの話ですね(笑)。
- 中郷
- プレイヤーにとって風というのはもともとイヤなもので、
押されて遊びにくいですし、
「何かほしいなあ」という話になったんです。
そこで「お金でも飛んできたら、
そりゃあ、うれしいわなあ」ということで
風が吹いたらコインが飛んでくるようにしたんです。 - 岩田
- あははは(笑)。
- 中郷
- 風雨のようにコインが飛んでくるから、
無制限に取れるんです、ナンボでも。
こんなうれしいこと、ないじゃないですか。 - 岩田
- うれしいですね(笑)。
- 中郷
- ところが手塚さんは
それに対抗してか、POWブロックで
コインが一気にドーンと落ちるようにされたんです。
「そら、そっちのほうがええわなあ」と(笑)。 - 手塚
- (笑)
- 岩田
- そんなふうに、お互いに話し合ったり、
ネタとして思いついたことが
だんだんと積み重なっていく感じで
ソフトができていったんですね。 - 手塚
- そうです。
- 岩田
- その3人の関係とは
ロジカルに説明するとどうなるんでしょうか? - 中郷
- うーん、わからないんです、そこは。
- 岩田
- わたしも長年観察しているんですけど、
どうも謎が解ききれない感じがまだあるんです。 - 中郷
- 強いて言いますと、
たとえば、まず最初に宮本さんが穴を掘って、
手塚さんがその穴を適当に埋めて、
最後に僕がローラーで固めていくというイメージがあって。
- 岩田
- ああ、なるほど。
- 中郷
- 僕はそのように感じてるんですね。
- 岩田
- そういう役割分担なんですね。
手塚さん、どうです? しっくり来ますか? - 手塚
- 来ました(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- わたしの目から見ると
すごく天然で役割分担をされている感じがするんです。
どちらかと言うと、関西の漫才トリオみたいな感じで。 - 中郷
- ああ、それはありますね(笑)。
- 手塚
- あるある(笑)。
- 岩田
- 「こうしたらウケると思わへん?」とか
いつも言ってますし(笑)。 - 中郷
- そうそう(笑)。
- 岩田
- だから、どうやってウケようかと、
土日に考えて、それを月曜に披露するという(笑)。 - 手塚
- やっぱり目標はウケることですから(笑)。
- 岩田
- で、「そう来たか、じゃあこっちはこうだ」みたいな、
そんなことが、3人の間で繰り広げられてる感じが
とてもするんですよね。 - 中郷
- つまり、3人は、
25年もの間、ずっと解散せずにやってきた
漫才トリオというわけですわ(笑)。 - 一同
- (笑)