『みんなのリズム天国』
4. 頭の中でぐるぐるまわる
- 岩田
- 今回、開発に時間がかかりましたけれど、
後半、加速しましたよね。
ゲームの開発現場で、終盤にガッと来るものは
いいものができることが多いんですが、
そのときに起こったことはなんだったんですか? - つんく♂
- うーん、後半、みんなの意志が固まって、
「こっちの方向ね」みたいな感じに
なってからは確かに早かったです。 - 米
- リミックスができはじめたころでしたよね。
そのときはどうつくったらいいか悩んでいたんですが、
そのころに正岡さんがリミックスをテストでつくってきて、
それがすごく手ごたえがあって、
「いけますね!」って話をしたおぼえがあります。 - 正岡
- あれは1年以上前でしたかね。
- 岩田
- あと、終盤に一気に人を増やしましたよね。
- 竹内
- グラフィックチームは、前作から引き続き
関(今日平)(※5)さんと2人で終盤までやりましたが、
仕上げのタイミングで3人増やしました。
スタッフそれぞれの力が、
思っていた以上に効果的に出たと思っています。
関今日平=企画開発本部企画開発部所属。前回の社長が訊く『リズム天国ゴールド』に登場。
- 岩田
- 前作はすごくコンパクトなチームでやっていましたから、
今作は当社比3倍ぐらいの感じになりました。
なぜ加わった人がうまくチームになじんで機能したと思いますか? - 竹内
- みんな若くて、純粋に前作のファンだったんです。
あと、バリエーションを持たせるために
軽く指示を出すだけで、基本ほったらかしでした。
(米さん、正岡さんを指しながら)
ここの関係と一緒ですけど(笑)。 - つんく♂
- みんな力を発揮できるから、自分で責任を持つんですよね。
- 竹内
- そうですね。
- 岩田
- なんだかみなさんを拝見していると、
自分の想像外のものが出てくることを
よろこんでいる感じがするんですよ。 - つんく♂
- はい、毎回、楽しみですねー。
「今日はどんな笑いが起こるんやろう!?」って。 - 岩田
- 過去のゲームを遊んで「ゲームの軸は何か」を
共有していたからこそ、いい感じでまわったんでしょうね。
米さんは、音がうまくいったのはどうしてですか? - 米
- サウンドに加わった2人も、前作のファンだったんです。
で、ぼくが「絶対、こうだ」と決めずに
その人の個性が出せるように指示しました。
- 岩田
- 普通のゲームとはちょっと違う、
やりがいのあるテーマだったのかもしれませんね。 - 米
- そうですね。
プレイしたあとに頭の中でぐるぐるまわる、
インパクト勝負な音づくりが大事でした。 - 岩田
- 音楽をつくる方は、世の人々の頭の中で
ぐるぐるまわる音楽をつくったときに
最高の達成感を味わえると思うんです。 - つんく♂
- そのとおりです。
どこかでリフレインする何かがあります。 - 米
- とにかくつんく♂さんの曲は、
頭の中でまわりやすい曲がすごく多かったんです。 - 岩田
- 『リズム天国』を遊ぶと、
ついもう1回やってしまうんですが、
そのとき頭の中で曲がずっとまわっているんですよね。
正岡さん、プログラム面でも人が増えたんですか? - 正岡
- 後輩が1人入ってきて、メインゲーム以外の
エンドレスゲームとかをお願いしました。
けっこう言いたい放題に、意見をしてくる性格で・・・。 - 岩田
- それ・・・褒めてるんですよね?
- 正岡
- 褒めてます、褒めてます!
これまで実装してなかったアイデアを
どんどん言ってくるんですよ。
しつこく、しつこく、言ってきたんで、
やってみたら・・・よかったんです。 - 岩田
- ・・・褒めてるときに「しつこい」って
言葉は普通は出ないんですけど・・・、
やってみたらよかったんですね(笑)。
- 正岡
- はい、かわいい後輩なんです。
やっぱり、新しい人が新しい目で
言いたいことを言うと、変わりますね。
あ、ほんとに褒めているんですよ? - 一同
- (笑)
- 岩田
- 任天堂側のアウトプットは、定期的にどう見えましたか?
- 飯田
- いや、もう・・・、
(東京・京都間の)遠距離恋愛の楽しみを
誰よりもぼくが楽しませてもらいました。
遠距離恋愛って、しばらく会わないと
彼女の髪型や化粧が変わっていたり、
洋服や小物の趣味が変わっていたり、
些細な変化に感動したりしますよね。
そんな感覚でいつも打ち合わせをしていたので、
何から何まで楽しかったです。
ぼくらも、ものをつくる仕事をしているので、
任天堂さんの引き出しや発想を見るたびに、
自分らの仕事の中で「こういう発想もありか」という
ヒントもいっぱいいただいて、すごい楽しかったです。
- つんく♂
- そういえば、今回、彼はイラストも描いてるんですよ。
- 岩田
- あ、そうなんですか!
- 飯田
- あ、はい。ぼくは音楽の仕事で東京に出てきたんですけど、
大阪ではデザインの学校に行ってまして・・・。 - 岩田
- すいません、デザインの学校に行った方が、
どうして音楽の仕事をされてるんですか?(笑) - 飯田
- ・・・ちょっと長くなってもいいですか?
- 岩田
- どうぞどうぞ。
たまにこういう質問をするんです(笑)。 - 飯田
- 両親がそういう人だったんです。
父親は絵が好きで、建築設計の仕事をしながら
若い頃はジャズバンドをしていて、
母親も音楽が好きで、学生の頃は歌やマリンバをやっていて、
ぼくら子どもは兄弟3人とも小学1年から
エレクトーンを習っていたんです。
父親は、日曜日にぼくらがミニカーで遊んでいると、
そのミニカーを立体的にチラシの裏に描いて見せてくれるような人で、
ぼくはいずれどちらかに進もうと思って、
音楽と絵の両方をやってたんです。
それで高校を卒業して、
デザインの勉強をしつつバンドをやってまして、
19歳のときにつんく♂さんと出会ったんです。 - 岩田
- じゃあ、その学校に通っているころから、
つんく♂さんと出会われて、道が決まったんですね。 - 飯田
- はい。で、デザインの学校を卒業したと同時に
音楽の仕事として東京に来る機会があって、
いまの自分がいるんです。
そういうお話をさせてもらったときに、
「じゃあ、飯田さんも描いてみる?」って
竹内さんに言っていただいて、
エンドレスゲームの「まんざい」に出てくる、
漫才師役の鳥2匹の絵を描かせていただきました。
あと、その中に出てくるかけ声もやらせていただきました。 - 岩田
- ああ。そういえばこのゲームは声も自家製なものが多いですね。
- 竹内
- そうですね。
“スタッフみんなが声優”って感じですね(笑)。
- 岩田
- ほぼ全員なんですか?
- 米
- 全員ではないですが、けっこうな数です。
- 岩田
- 声優のキャスティングはどうやって決めるんですか?
- 米
- たまたまスタッフの声色が、すごくバリエーション豊かなので、
「このキャラクターなら、この人がいい」とか、
そういうキャスティングになりますね。 - 岩田
- 自分の声が入り、自分の絵が動くゲームを遊ぶと、
いままでとはまた距離が変わりますか? - 飯田
- 近くなるというよりは、より客観的になります。
発表会でピアノを弾いている子どもを見る親の気持ちというか、
「お客さんは楽しんでいるだろうか・・・」
ってそんな気持ちで確認していました。 - 岩田
- ははは。「あの子、浮いてないかしら」っていう感じですか?
- 飯田
- ええ、「あの子、だいじょうぶかしら?」って。
あと、ぼくらが普段接するときの
任天堂スタッフのみなさんって、声が小さいんです。
でもゲームの中に入っているかけ声とかを聞くと、
「めっちゃ元気やん!」っていう面白さもあります。 - つんく♂
- そうそう、「声、張れるんや!」ってね(笑)。
- 岩田
- ギャップが大きいんですね。
みなさん、なんで普段は声が小さいんでしょう? - 米
- すいません・・・。
なんかいつも、緊張しちゃって・・・(笑)。
- 一同
- (笑)