『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
特別篇:糸井さんとのクリエイティブの雑談。
- 岩田
- 糸井さんがストップさせる企画って
おもにどういう感じのものが多いですか? - 糸井
- うーん、なんだろうね、
「それ、とんちんかんじゃない?」
っていうのをとめることが多いかなぁ。
つまり、こうやりたいねって
本来、思ってるものと、ぜんぜん違うところで、
その場が盛り上がるだけで、
うまくいっちゃいそうに見える企画とか。 - 宮本
- ああー。
- 糸井
- つまり、CMなんかでいうと、
それをつくったスタッフたちは
ものすごくおもしろかった。
でも、それ表現になってない、っていう。 - 岩田
- ある種の内輪うけのような。
- 宮本
- ああ、そういうの、ありますねぇ。
- 糸井
- うん。
- 宮本
- 似たようなことでいうと、
どういうふうにつくるのかが
決められていないものはとめますよね。
現場では「おもしろそう」って
盛り上がったんだろうけど、
それ、どこからどうつくるの? っていう。 - 糸井
- あ、なるほど。それは難しいね。
- 宮本
- 完全に見通しが立っている必要はないですけど、
ある程度は読めてなきゃいけない。
できあがりが読めてない企画にかぎって、
「でも、いろいろ夢があってたのしいじゃないですか」
みたいなことを言うでしょ、すぐに。 - 糸井
- ああー、なるほど(笑)。
- 宮本
- 「夢」とか「たのしい」とかが
いちばんに出てくる話は危ないんですよ。 - 糸井
- ぼくも禁止ですよ、「夢」。
「夢」は小さいほどいいって
ふだんからよく言ってます。 - 宮本
- ぼくも「夢」は自分で禁止してます。
「たのしい」とかもね、
なにが「たのしい」かわかってないと。
ただ「たのしい」だけじゃダメですよね。 - 糸井
- そうそう。
- 岩田
- しかし、この2人が「夢禁止」とか言って(笑)、
ちょっと、たまらないですね。 - 一同
- (笑)
- 宮本
- 「夢」はもう、昔から禁止です。
自分が困ったときによく使ってたから。 - 岩田
- 「夢」きらい。
- 糸井
- うん。
- 宮本
- 「夢」は絶対禁止。
- 岩田
- ははははは。
- 糸井
- 憶えてるんだけど、
宮藤官九郎(※5)っていう人にはじめて会ったときに、
「あなたは夢が小さくていいですね」
って言ったんですよ。
そしたら、やっぱりちゃんと伝わった。
宮藤官九郎さん=日本の脚本家、俳優、作詞家、作曲家、放送作家、映画監督、演出家、ミュージシャン、ギタリスト。
- 岩田
- 褒め言葉。
- 宮本
- うん、褒め言葉ですよね。
- 糸井
- そうそう。
つまり、夢という、理想のビジョンが
1こずつ、ちゃんと切り身になってる。 - 宮本
- 地に足が着いてる。
- 岩田
- そうですね。
具体的で、実現可能なんですよ。 - 糸井
- 彼には、こういうものを
つくりたいという気持ちがあって、
それをちゃんとひとつひとつ実現させてるから。 - 岩田
- 言い換えると、
現状とつながってないものは
きらいなんですよね。 - 糸井
- 現実とつながってない夢って、
要するに本気じゃないっていうことで。 - 宮本
- うん。
せめて、他人がどう言おうと、
自分の中ではつながってりゃいいんですけど。 - 糸井
- そうそうそう。
- 宮本
- 本人のなかでもつながってないものを、
プレゼンのときのいろんな言葉で
ごまかそうとするケースがいちばんよくない。
「とか」って言うでしょう?
具体的な説明が必要になるところで。
その「とか」はどこにあるの? っていう。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- 「とか」ってなんだ? と(笑)。
- 宮本
- そうそう。
「とか」があったら良さそうやけど、
その「とか」が、ぼくには見えないので。 - 糸井
- うん(笑)。
- 宮本
- だから、「とか」なしで出して、って言うんです。
そうするとわかってることはすごく少なくなって、
「それだけ?」って感じになるんです。
で、それだけじゃ、あかんよねと。 - 糸井
- ぼくは「地続きじゃないとだめよ」
っていう言いかたをよくするなぁ。
あの、昔、モノを撮影した写真にね、
そのモノの大きさをわかりやすくするために、
タバコの箱が置いてあったじゃないですか。
ぼくはあの箱の存在がすごく好きで。
なぜかというと、あの箱があるおかげで、
いっしょに写ってるモノが自分と地続きになるんですよ。
で、夢だけで語られる企画って、
だいたい箱を横に置かない話が多いんだよ。 - 岩田
- そのタバコの箱は
大きさのリファレンスであるだけでなく、
対象を現実とつなげて読み手に
実感させるという役割を持っているわけですね。 - 糸井
- そう、そう。