『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
特別篇:糸井さんとのクリエイティブの雑談。
- 糸井
- あれ? 今日はこういう話でいいんでしたっけ?
クリエイティブについて、みたいなことになってるけど。 - 岩田
- 大丈夫です(笑)。
べつに、特定の商品にフォーカスしなくても、
糸井さんを交えて、
宮本さんのものづくりの話ができればいいわけで。 - 糸井
- あ、じゃあ、してるね。
- 宮本
- ずっと「必死」でやってるという(笑)。
- 岩田
- それと、今日の話って、
いろんなことの原則についての話ですから、
すごく汎用性が高いと思うんです。
たとえば、ちょっと言いかえると、
なぜ『マリオ』や『ゼルダ』が
25周年を世界中のファンのみなさんから
祝ってもらえるような存在になれたのか、
っていうふうにも受け取れると思いますし。 - 糸井
- そうだねぇ。
長持ちするものね、宮本さんのクリエイティブは。 - 岩田
- なぜ長持ちしたかっていうことの本質が
今日、こうして語っているようなことだと思うんですよ。
だって、ふつうに考えたら、
世界一売れたゲームソフトをつくったチームが
25年も続かないと思うんですよ。 - 糸井
- うん。
- 岩田
- なぜ25年後もこうやってつくり続けていて、
初心を維持し続けていられるのはどうしてなんだろう、
っていうことの回答がここにあるというか。 - 糸井
- あ、じゃあ、もう、
答えをしゃべってたようなもんじゃない。 - 岩田
- そうなんです(笑)。
その答えをずーっとしゃべってたような話。 - 糸井
- うん。
さっき宮本さんもおっしゃったけど、
根本的には「必死」だからですよね。 - 宮本
- そうですねぇ(笑)。
端的にいうと、だいたい、昼休みの話題は
「これじゃあかん」っていうところからはじまりますから。 - 岩田
- 「宮本さん、えらいことになってます」と。
- 宮本
- そうそう(笑)。
- 糸井
- ふふふふふ。
- 岩田
- ふつうはね、「えらいことになってます」って、
困りきった顔で言うものですよ。
ところが、そう言う中郷さんたちには、
どこかしら、うれしそうなところがありますからね。
だから、さっきの野球の話でたとえると、
バッターが打席に立って、バットを振ったら、
内野ゴロになってしまった、と。 - 糸井
- はいはい。
- 岩田
- で、打者が内野ゴロ打った途端に、
ベンチで見ていた中郷さんがちょっとうれしそうな顔で
「えらいことになってますわ」と。 - 糸井
- 「しかもツーアウトです」みたいな(笑)。
- 岩田
- というときに、
その内野ゴロを今からどうやってヒットにするか、
みたいなことを宮本さんたちは必死で話してる。 - 宮本
- ちょっと、審判に言うてこい、って。
- 一同
- (笑)
- 宮本
- いや、ほんとそんな感じです。
- 糸井
- うん、まったくそうだね。
そして、だからこそ、「必死」が基本なんだよね。
無理に野球になぞらえるつもりはないけど、
内野ゴロでも全力疾走しとかなきゃ。 - 宮本
- うん。そこは、プロかアマチュアか、
みたいなことじゃないですよね。 - 糸井
- そう、おんなじおんなじ。必死で走らなきゃ。
サボるときはサボっていいって言ってるんだから。 - 宮本
- そうそう。
- 岩田
- サボるのはいいっていうのと、
いつも必死じゃなきゃあかんっていうのが、
矛盾しませんか? っていう質問が
読んでいる方から寄せられそうですが・・・。 - 糸井
- あ、はいはーい(生徒のように手を挙げる)。
- 岩田
- はい、じゃあ、糸井さん、お願いします。
- 糸井
- それは、相田みつをさん(※6)が言っています。
「にんげんだもの」。 - 一同
- (笑)
相田みつをさん=日本の詩人・書家。『にんげんだもの』は、相田みつをさんの代表著書のひとつ。
- 宮本
- 「にんげんだもの」(笑)。
- 糸井
- つまり、そんな必死のままだと
一生を送れないんだよ。 - 岩田
- ずっとは。
- 糸井
- ずっとは送れないんだよ。
だけど、バッターボックスに立ったときと、
立ってないときは、絶対違うんでね。 - 岩田
- 自分の打順が来たときは必死になれ。
- 糸井
- そう。
あと、レギュラー目前の代打要員、みたいな人は、
ベンチでもずっと必死であるべきですよね。
そこのメリハリがわかったうえでできてないと。 - 岩田
- うん。
- 宮本
- うん、うん。