『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
第2回:「濃密な森」篇
- 岩田
- 今日はよろしくお願いいたします。
- 一同
- よろしくお願いいたします。
- 岩田
- 社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の
第2回ということで、今回は
「濃密な森」というテーマで、
みなさんに集まっていただきました。
それぞれ担当したところを含めて、自己紹介をお願いします。
藤林さんは前回も参加していますので、
足助(あすけ)さんからお願いします。 - 足助
- はい。情報開発本部の足助です。
僕が担当したのは、空中に浮かぶ島である
「スカイロフト」から、リンクが
初めて大地に降りてきたところにある、
「封印の地」というエリアです。
そこは、フィールドやダンジョンにたどりつく前の
つなぎ的な役割を持つエリアになっていて、
今作のシナリオ上、とても重要な場所にもなっています。
- 岩田
- その「封印の地」という地名からも、
なんだか訳ありな場所という雰囲気が漂ってきますね。 - 足助
- そうなんです(笑)。
そこでは超巨大なボスが登場するんですけど、
そのボスと戦うエリアを担当しました。 - 平向
- 情報開発本部の平向(ひらむき)です。
会社に入って最初にかかわったのが『ピクミン』(※1)で、
そのあとも、ずっと“ピクミン畑”を歩んできたのですが、
DSの『夢幻の砂時計』(※2)のタイミングで
『ゼルダ』にかかわることになりました。
- 岩田
- そのとき、藤林さんといっしょに
仕事をすることになったんですね。 - 平向
- そうです。今回、僕はプランナーとして、
企画のはじまりから最後まで、いっしょに仕事をしました。
担当のエリアは、足助さんが担当した「封印の地」から続く、
いちばん最初のフィールド「フィローネの森」と
「天望の神殿」というダンジョンになります。
『ピクミン』=ゲームキューブ用ソフト。主人公の「オリマー」が不思議な生命体「ピクミン」を引き連れながら隠されたお宝を探し出すAIアクションゲーム。1作目は2001年10月に、2作目は2004年4月に発売。「Wiiであそぶセレクション」として、それぞれ2008年12月、2009年3月にWii用ソフトとしても発売されている。
『夢幻の砂時計』=『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』。『ゼルダ』シリーズ初のニンテンドーDS用タイトルとして、2007年6月に発売された、ペンアクションアドベンチャーゲーム。
- 伊藤
- 情報開発本部の伊藤です。
僕はエフェクトと呼ばれている
特殊効果の仕事を全般的に担当しました。
じつは会社に入ってから、『風のタクト』(※3)、
『トワイライトプリンセス』(※4)、
『大地の汽笛』(※5)にかかわって、
今回の『スカイウォードソード』で
『ゼルダ』は4作目になります。
- 岩田
- 『ゼルダ』の特殊効果はお任せください、
という感じなんですね。 - 伊藤
- はい。
『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『トワイライトプリンセス』=『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』。2006年12月に、Wiiおよびゲームキューブ用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『大地の汽笛』=『ゼルダの伝説 大地の汽笛』。ニンテンドーDS用ソフトとして、2009年12月に発売されたペンアクションアドベンチャーゲーム。
- 岩田
- では最初に、今回の『ゼルダ』は、これまでのように
どんどん新しいフィールドをつくるというよりは、
同じフィールドを行き来して、
“勝手知ったる場所で遊ぶ面白さ”みたいなことを
追求するという構造になっていますが、
どうしてそういう構造でつくることになったのか、
という話からしてもらいましょうか。 - 藤林
- はい。いちばん最初に、プロデューサーの青沼さんから
「今度の『ゼルダ』はコンパクトにつくろう」
という話があったんです。 - 岩田
- 青沼さんは、宮本さんからずっと言われていたことを
今回は藤林さんに言ったわけですね(笑)。
新しいフィールドをどんどんつくって
ただ横に拡げるだけでは、だだっ広くなって
間延びすることもありますよね。 - 藤林
- そうなんです。そこで横に拡げるのではなく、
縦に、深いフィールドをつくると、
そこを訪れるたびに、新鮮な驚きが感じられて
新しい楽しさが見いだされるのではないかと思いました。 - 岩田
- つまり「コンパクトに」というのは、
単に言葉どおりに小さくて狭いフィールドをつくるということではなく、
同時により密度の濃いものにしようということなんですね。 - 藤林
- そうです。
- 岩田
- で、最初のフィールドとダンジョンの
プランニングをしたのは平向さんですが、
リクエストを出したのは、藤林さんですか? - 藤林
- はい。最初のフィールドである森は
とても重要な場所になりますので、
そこを繊細につくってくれる人ということで
平向さんにお願いしました。 - 岩田
- 平向さんとは、
『夢幻の砂時計』をいっしょにつくりましたので
気心が知れているんですかね。 - 藤林
- そうなんです。
- 岩田
- 平向さん、まずどんなことを考えながら
森をつくったんですか? - 平向
- はい。森は最初に訪れるフィールドになりますので、
「いかに今回の『ゼルダ』の世界に
自然に入りこんでもらうか」ということを
いちばんに考えました。 - 岩田
- 最初のフィールドってすごく大事ですよね。
そこでの印象が悪ければ、
その先に進んでもらえないでしょうから。 - 平向
- はい。そこで、森の雰囲気を
明るく楽しそうな感じにしようと。 - 岩田
- これまでのシリーズの森というと、とても薄暗くて、
怪しい雰囲気のところが多かったですよね。 - 平向
- ええ。今回はこれまでとは違った雰囲気で、
そこには大きなキノコが生えていたり、
いろんな生き物たちが住んでいて、
虫や小鳥なんかもたくさんいるんです。 - 藤林
- それらの虫や小鳥たちは、
「にぎやかしでいるんでしょ」と
感じる人もいるかもしれないんですけど、
じつは虫とり網で捕まえることもできるんです。
これ、宮本さんがやたら気に入っていて(笑)。
- 岩田
- 宮本さん、そういうのが好きそうですね(笑)。
でも、リンクは世界を救うために冒険の旅に出ているはずなのに、
「そんなこと、してる場合なの?」と
ちょっと思ったりするんですが(笑)。 - 藤林
- そうですね(笑)。
それに、アイテムを選択するサークルのなかに
弓とかバクダンといっしょに虫とり網が
1個入っているのも、良い意味で浮いていて、
“ゼルダらしい”と思っています。 - 伊藤
- その虫とり網で、実際に虫を捕ろうとすると、
ものすごい緊張感があるんです。 - 足助
- そうそう、そうなんです(笑)。
- 岩田
- 虫とりの緊張感というのも・・・(笑)。
- 藤林
- それくらいリアルなんです。
本物のセミやバッタを捕まえるときの緊張感が
そのまま味わえます。 - 岩田
- ああ、なるほど。
Wiiモーションプラスは、剣を振るだけじゃなく、
虫とり網を自由自在に振ることにも活きてるんですね。 - 藤林
- そうです。虫とり網を振る方向が
とても大事になるんです。 - 足助
- で、人によっては、
本物の虫とり網を持つように
Wiiリモコンプラスを握りかえたりして(笑)。 - 藤林
- そーっと、
ぎりぎりのところまで近づいていって
素早くひょいっと捕るんです(笑)。 - 伊藤
- 最初の頃はコツがわかっていないので
虫とり網をぶんぶん振り回して捕ろうとするんですけど、
次第にコツがわかってくると、
「この角度で振るのが絶妙だよね」と言いながら、
握りを変えながら捕ったりするんです。 - 藤林
- それに、それぞれの虫によっても
捕り方が変わるので、
大きく上から振りかぶるときもあれば、
下のほうからすくったほうがいいときもあって。 - 岩田
- そうか、虫とりそのものの奥が深いんですね。
こういう部分を異様につくりこむのも、ゼルダらしさですかね。
- 藤林
- そうですね。
虫といっても、バッタやセミ、トンボにチョウチョ、
カブトムシやクワガタ、それにカマキリなど
いろんな種類がいるんです。
小鳥にも種類があって、
めったに出ないんですけど青い鳥もいます。
その青い鳥を見つけたときは、「“青”いた!」って(笑)、
すごくドキドキしながらそーっと近づいていって、
捕れたときは、ものすごくうれしいんです。 - 岩田
- 虫や小鳥を捕って、何かいいことはあるんですか?
- 藤林
- そのあたりについては、いずれお話ししようかなと。
- 岩田
- はい、わかりました(笑)。