『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
第3回:「濃密な火山と敵モンスター」篇
- 岩田
- 『ゼルダ』の中身が“濃密”なので、
「社長が訊く」も“濃密”に・・・ということで、
今回は「火山」と「敵モンスター」についてお訊きします。
前回まで参加している藤林さん以外のみなさんから、
今回、何を担当したのか、自己紹介をお願いします。 - 冨永
- はい。主に火山のフィールドや、
ダンジョンのプランニングを担当しました、
情報開発本部の冨永です。
- 岩田
- 冨永さんは火山の世界をつくった人、なんですね。
- 冨永
- はい、そうです。
今日はよろしくお願いします。 - 木内
- 同じく、情報開発本部の木内です。
僕は主に、敵キャラクターのデザインを担当しました。
- 岩田
- 火山に出てくるものも含めて、
敵キャラクターは木内さんがつくったんですね。 - 木内
- そうです。
- 尾山
- 今回はデザイナーのサポートと、
演出まわりを担当しました、情報開発本部の尾山です。
- 岩田
- 尾山さんは、もうずいぶん前になりますけど、
「社長が訊く Wiiプロジェクト」の
『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』篇にも出てもらいましたね。 - 尾山
- はい。かれこれ5年くらい前になります。
- 岩田
- さて、藤林さん、
フィールドが「火山」ということですが、
どうして火山をつくることになったんですか? - 藤林
- 前回お話しした「森」のフィールドは
平面を基本につくっていたんですが、
高低差を取り入れたフィールドも遊びが多彩になるのでやりたいと。
それにふさわしい場所は何かと考えたときに、
「山」しかないだろうと思ったんです。 - 岩田
- なぜふつうの「山」じゃなくて、
「火山」なんですか? - 藤林
- やっぱり『ゼルダ』といえば、
シリーズでおなじみの火山地帯、
いわゆる「デスマウンテン」が思い浮かびますし、
遊びのネタがたくさん出るのが火山だったので、
選びました。 - 岩田
- では、「遊びのネタがたくさん出る」ということで、
「火山の担当」となったとき、
冨永さんはまず何から考えたんですか? - 冨永
- 今回は「がんばりダッシュ」という
新しいアクションができるようになりましたので、
高低差のある火山というフィールドと組み合わさると、
坂道をまずはテーマに、面白いことができそうだと思いました。 - 岩田
- まず「がんばりダッシュ」の機能を活かすための
地形をつくろうと考えたんですね。 - 冨永
- そうです。
険しい山の急な斜面でも、
今回は「がんばりダッシュ」で
一気に駆け上がることができますし、
で、そうなると、高いところから
ふもとを見おろせるようにしたいとも思いました。 - 岩田
- これまでのシリーズでも、
高いところに登って、景色を眺めるというのは
少なからずできていたと思うんですけど、
今回はどこが違うと思いますか? - 冨永
- 中だるみをしなくなりましたね。
これまでのシリーズでは、山道をつくろうとすると
ジグザグにするしかなくて、高いところまで登るには、
けっこう時間もかかったりしたんです。 - 岩田
- 今回は「がんばりダッシュ」で駆け上がることができるので、
そうはならないんですね。 - 冨永
- はい。思いっきり長い登り坂をつくっても、
テンポよく登ることができますし、
すごく高いところまで短時間で到達できます。
なので、そこからふもとを見おろして、
「いい眺めだなあ・・・」という気持ちになればいいなと思いました。 - 岩田
- 「絶景ポイント」があるんですね。
- 冨永
- そうなんです。
それと、火山のてっぺんまで行かなくても、
中腹からも景色が見られるようにしました。
ふつうはひとつの坂道を登り切ると、
そのまま先にどんどん進もうとするんですが、
今回はちょっと立ち止まって、後ろを振り返り、
ゆっくり景色も楽しんでほしいと思います。 - 岩田
- Aボタンが空いたことで
「がんばりダッシュ」ができるようになり、
その機能が坂道をどんどん増やすことになり、
さらにその結果、見晴らしのよい景色が
楽しめるようになるというのは、
一見無関係なつながりのように見えるだけに、
なんだか不思議ですよね。
- 冨永
- そうですね。
確かに気づいたら、「そういう楽しみもできていた」
という感じなんですけど、
プレイヤーの性能がひとつ増えたことで、
新しいことができていくんだなあと、
つくりながらも、とても新鮮な気持ちになりました。 - 岩田
- ちなみに「火山」というものを活かしたネタでは、
ほかにはどんなものがあるんですか? - 冨永
- やはり火山ですから、
ダンジョンだけでなく、フィールドのいたるところで
溶岩がぐつぐつ煮えています。
その溶岩は上がったり、下がったりすることもあって、
ときにはその溶岩を抜かないと
先に進めないようなこともあります。
あとは・・・あ、でも、これ以上は・・・。 - 岩田
- 遊んでからのお楽しみ、ということですか?
- 冨永
- はい(笑)。
まあ、今回も『ゼルダ』らしい謎解きや遊びを
随所に盛り込むことができたと思います。 - 岩田
- 演出まわりを担当した尾山さんは、
火山の地形では、どんなことを考えてつくりましたか? - 尾山
- わたしは火山だけに特化して何か、
というのはとくにないのですが、
プレイヤーの演出を入れるにあたり、
リンクが溶岩に落ちたときは
どんな演出にするのかについて、
時間をかけていろいろ試してみました。 - 岩田
- これまでの演出だと、リンクが溶岩に落ちると、
ちょっと苦しそうな感じでしたよね。 - 尾山
- そうなんです。
『トワイライトプリンセス』(※1)のときは
比較的シリアスに表現していましたけど、
今回の『スカイウォードソード』は
『風のタクト』(※2)ほどコミカルではないんですが、
『トワイライトプリンセス』ほどシリアスにはならないように・・・。 - 岩田
- 絵づくりが、これまでの、どの『ゼルダ』とも違いますよね。
『トワイライトプリンセス』=『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』。2006年12月に、Wiiおよびゲームキューブ用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- 尾山
- はい。開発序盤では
『トワイライトプリンセス』に近い演出が入っていたんです。
すると、まわりのスタッフから
「今回は、これじゃないよね」「違和感があるね」
という声があがったんですね。
やっぱりシリアスすぎると、今回の絵には合わなかったんです。
たとえば『マリオ』の場合、敵にやられても
不快には感じませんよね。 - 岩田
- 確かに『マリオ』だと、
みんなで笑って、「さあ次!」
ということになりますね。 - 尾山
- そうなんです。なので今回は、
「さあ次!」と、何度もトライしたくなるような
演出にすることを大事にしました。
そこで、リンクが溶岩に落ちたら
どのような動きをすればいいのか、
みんなの声を聞きながら、何度も調整しました。 - 藤林
- 「苦しそう」ではなく、
「あ、リンク、熱そう」という感じを出すようにしたんです。 - 尾山
- なので不快な気持ちにならず、
リトライできるようになっていると思います。 - 岩田
- なるほど。それは今回のデザイン論全般に
共通して言えることのような気がします。
『トワイライトプリンセス』のように
リアリティを目指す、フォトリアリティの世界と、
『風のタクト』のように
デフォルメする世界とがあって、
そのふたつの世界との間で、どうバランスをとるか、というのは、
たぶんすごく大きなテーマだったはずなんですよね。 - 尾山
- そうなんです。
そのあたりのことは、きれいにかみ合わないと、
世界から浮いてしまいますので。 - 藤林
- なので今回のリンクが溶岩に落ちると・・・。
- 尾山
- けっこう跳び上がります(笑)。
しかも、緑の服に火がついたりとか、
ちょっとだけコミカル寄りの演出にしています。