『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
第6回:「濃密なシナリオと演出」篇
- 岩田
- 社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』も
今回で6回目です。
では、初めて参加される3人のみなさんに、
自己紹介をお願いします。 - 森
- シネマシーン部分のシナリオと、
一部演出、絵コンテを担当した
企画開発本部の森です。
- 岩田
- 森さんはどれくらいの期間、
かかわっていたんですか? - 森
- 1年と3カ月くらいでしょうか。
- 岩田
- 5年の開発期間と比べると
ちょっと少ない印象ですが、
『ゼルダ』はゲームの骨格が決まってから
シネマシーンをつくるようにしないと、
あとで大変なことになってしまうんですよね。 - 森
- そうですね。
やっぱりゲームの中身を変更することが多いので、
開発の後半になってからの参加でしたが、
それでもけっこう・・・いろいろありました。 - 岩田
- そうでしょうね。
それはのちほど、ゆっくりお訊きします。 - 森
- はい。
- 若井
- サウンド全般のとりまとめと、
僕自身も作曲を担当した
情報開発本部の若井です。
『ゼルダ』には『風のタクト』(※1)で初めて参加しました。
なので、今回で『ゼルダ』は2回目です。 - ※1『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- 岩田
- 若井さんは、このプロジェクトの初期から
参加していたんですか? - 若井
- いえ、いちばん最初からではないですけど、
それでも3年くらい前からだったと思います。 - 岩田
- そういう意味では、長丁場ですね。
- 若井
- そうですね。
- 岩田
- 最後はサウンドスタッフが
総勢10名にもなったという話を訊いて、
先日のけぞっていたんですが(笑)。 - 若井
- ああ・・・(笑)。
- 岩田
- “濃密”になったサウンドの話も、
のちほどお訊きしますね。 - 若井
- はい。
- 吉田
- シネマシーンのディレクターを担当した
企画開発本部の吉田です。
- 岩田
- 吉田さんのかかわりは、
森さんと同じくらいですか? - 吉田
- はい、そうですね。
ただ、早くからまわりの環境を整えていましたので、
森さんよりはちょっと早くから参加しました。 - 岩田
- たくさんの量のシネマシーンを求められるので、
まずは土台と仕組みをしっかりつくって、
というところからはじまったんですね。 - 吉田
- はい。
- 岩田
- じゃあ、まずはシナリオの話からしましょうか。
シナリオって、どういうふうに決まっていくんですか? - 藤林
- まず、最初にざっくりと、
ゲームの枠組みに合わせたシナリオを考えて、
「こんな感じでどうでしょう」と
青沼さんに提案しました。 - 青沼
- そもそも今回は、
Wiiモーションプラス(※2)を使った
剣がテーマになっていますから、
『ゼルダ』で剣といえば、
やっぱりマスターソードだと。
そこで「マスターソード誕生の話」にしよう、
というのは、わりと初期から決まっていたんです。
Wiiモーションプラス=ジャイロセンサーを内蔵し、Wiiリモコンに取り付けることで細やかな動きを感知できるようになる周辺機器。
- 藤林
- そうでしたね。
- 青沼
- となると、シリーズのなかでも
「いちばん最初の話になるんじゃないの?」
ということを、その頃から言いはじめていて、
それを「ハイラル王国誕生の話」にもからめて
今回の『ゼルダ』で語る、というのはどうなんだろう、
ということになったんです。
ただ、一方で、空に浮かぶ島という、
システム上の設定なんかもできてきて
「それはどうして浮かぶことになったんだ?」と。
- 岩田
- もとはといえば、藤林さんが
「高いところから飛び降りたい」ということで、
「空に浮かぶ島」が生まれたんですよね。 - 藤林
- はい(笑)。
で、空と大地があるという設定にして、
それに加えて、マスターソードの誕生秘話などの
ハイラル創世の物語になりますので、
これまでのシリーズを振り返りながら、
ひとつひとつをつきあわせていったんです。
すると、たくさんの矛盾が出てくるんです。 - 岩田
- 『ゼルダの伝説』は初代から25年経ち、
たくさんのシリーズを重ねたので、
それぞれに物語や設定があって、
それをもとに新しい設定づくりをしようとすると、
どうしても矛盾との戦いになってしまうんですね。 - 藤林
- そうなんです。
で、2年前くらいのことなんですけど、
当時はシステムから、ステージやフィールドのことまで
同時にいろんなことを考えないといけない一方で、
森さんや吉田さんたち、シネマシーンのスタッフも
チームに合流しはじめていましたので、
「そろそろ箱書きを・・・」
と言われる時期になっていたんです。 - 岩田
- 「箱書き」というのは、
シナリオの要点をおおまかにまとめたものですよね。 - 藤林
- はい。で、かなり追い詰められていたので、
思い切って、自宅に丸1日こもって
「箱書き」を書くことにしたんです。
みんなには、体調不良ということにして(笑)。
- 岩田
- それは、あまり推奨できる話ではないですけど、
ひとりになって集中したかったんですね。 - 藤林
- はい。なので、家に閉じこもって、
朝から晩まで、ずーっと、
箱書きを書いていました。 - 岩田
- 体調が悪いのに・・・ですね?(笑)
- 藤林
- はい、体調は悪かったはずなんですが、
ものすごく、がんばりました(笑)。