『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』
第7回:「女性スタッフ」篇
- 岩田
- 廣野さんは今回、
キャラクターをつくったわけですよね。 - 廣野
- はい。
- 岩田
- キャラクターをつくるとき、はじめから
けっこう細かく設定が決まっているものなんですか? - 廣野
- いえ、細かくないです。
「◯◯っぽい感じにしてください」と
けっこうざっくり言われることもありました。 - 岩田
- 最初はざっくりと注文を受けたものが、
最終的にどうしてあんなに濃いキャラクターになるのか、
わたしにはちょっと興味があるんですが。 - 廣野
- ・・・いろいろと妄想してみるんです、最初に。
- 岩田
- へえ、妄想ですか(笑)。
- 廣野
- わたしがこのプロジェクトに参加したときは
地形もまだできていませんでしたので、
たとえばゼルダのコスチュームを考えるとき、
「空」を舞台にしているから
「バックの青空に映える赤がいいかな」とか。 - 岩田
- はい。
- 廣野
- しかも鳥に乗るので
「マントがなびくとかっこいいかな」とか、
「スカイロフト」は高い場所にあるので
「気候はちょっと寒いのかな」とか
自分でいろいろ妄想して、
地形担当の人やデザインリーダーといっしょに相談しながら
「じゃあこういう服を着ている世界にしよう」ということで
キャラクターをつくりあげていきました。 - 岩田
- デザインリーダーは、
「どんどん妄想しなさい」と
背中を押してくれるんですか? - 廣野
- そうですね(笑)。
それに、キャラクターを考えるにあたっては、
いろいろなパターンのイラストを用意するんですが、
それをもとに、ネタをかぶせてくれることもありますし、
そこから絞り込んでいったモデルに対して、
プランナーさんやシナリオ担当の人が
個性的なセリフを付けてくれたり、
サウンド担当の方が、実際に声を付けてくれたりして、
ひとつのキャラクターに、
いろんな人のアイデアとかネタとかが、
最終的にはギュッと詰め込まれる感じなんです。 - 岩田
- つまり、みんなで寄ってたかって、
キャラクターをどんどん濃くしていくんですね。 - 廣野
- そうですね。
- 岩田
- まるで襲いかかるように?(笑)
- 廣野
- はい。だから濃くなるんです(笑)。
- 岩田
- ちなみに、「濃い」といえば、
あのギラヒムのことなんですが、
そもそもあの敵は、どうしてあんなに濃くなったんですか? - 廣野
- 最初はあんなふうな設定はもちろんなくて・・・。
- 岩田
- 最初はどういうお題だったんですか?
- 廣野
- 剣戦闘をする敵で、
何か目的を持って暗躍する魔族長、
性格はちょっとキザで、ナルシストのような・・・。 - 岩田
- お題はそれだけなのに、
最後はあんなふうに仕上がっちゃうんですか?(笑) - 廣野
- そうですね。
大事なキャラなんですけど、詳細がわからないので、
みんなでアイデアをいろいろ出しあって、イメージを固めていきました。
デザイン的には、キャラクターのシンボルになるような図形があると
印象が強くなるという意見があったので、
ひし形を多く取り入れたデザインになりました。
衣装だけでなく、エフェクトにも取り入れてもらいました。 - 丸浪
- さらに、先ほどの話にあったような感じで、
シネマシーンやシナリオ担当の人たちも
乗っけられるだけ乗っけていくんです(笑)。 - 保坂
- やっぱり寄ってたかって、という感じで、
最初は「くねくねと変な動きをするんだよ」と
文字だけで書かれていたのが、
絵コンテを描く人の手にかかると
その数段上をいくような絵に変わっていたりしていました。 - 廣野
- で、敵担当の人からは不気味さを強調するために、
「舌なめずりをさせたい」という話があったんです。
そこで、舌に骨とかを入れて(※12)。
舌に骨とかを入れて=CGツールでのアニメーションのために、関節をつくって入れることを「骨を入れる」と表現する。
- 岩田
- わざわざ舌に関節まで入れたんですか?
- 廣野
- はい。それで、最初に登場したときの
舌をしゃーと出すシーンができたんです。 - 久田
- サウンドの人たちも
「もっとこんな声を!」ということで、
すごく気合いが入ってました。 - 廣野
- ホントにそうでした(笑)。
- 久田
- その結果、全身タイツ姿で、
こんなふうな感じで・・・
(ギラヒムが登場するときのポーズをとりながら)
「ふっふっふ」と高笑いをしながら出てくることに(笑)。 - 一同
- (笑)
- 久田
- なので、ギラヒムは
みんなで育てたようなところがあるんです。 - 丸浪
- みんなで寄ってたかった結果、
あのような濃いキャラになったんだと思います。 - 岩田
- でも・・・ああいったナルシストのような敵って、
女性の目から見て、どうなんですか? - 久田
- みんなから愛されています。
- 一同
- (そろってうなずく)うんうん。
- 岩田
- そうなんですか(笑)。
- 廣野
- 自分から、
「ギラヒム様と呼んでくれて構わないよ」
とか言うんですけど・・・。 - 保坂
- なかには「ギラ様」と呼ぶ人もいますからね。
- 廣野
- そう(笑)。
- 久田
- なので、大人気です(笑)。
- 廣野
- すごく愛されてると思います。
- 岩田
- ・・・かぶせ合いのクリエイティブで、
女性からも愛される敵になったんですね(笑)。 - 廣野
- そう思います。
何度も出てきますし、セリフも個性的ですので、
ぜひ楽しみながら戦ってほしいです。 - 岩田
- わかりました。
では、ここで話題を変えて、
プランナーの保坂さんにお訊きします。
保坂さんは「火山」を担当したということですけど、
もともとどういうテーマではじまったんですか? - 保坂
- わたしがプランニングを担当したのは、
「火山」の2回目だったんです。 - 岩田
- つまり、1回目を遊んでいるので、
基本はすでに学んでいる状態での
「火山」の遊びを考えたんですね。 - 保坂
- はい。それに1回目に苦労して倒した強い敵でも、
すでに倒し方がわかっているので
「普通の敵として、いっぱい出してもいい」とか
「その代わりに新しい敵をつくってもいい」とか・・・。 - 岩田
- ああ、そのお題の出し方も面白いですね。
そういうふうに言われて、何から考えるんですか? - 保坂
- まず、ダンジョンで入手できるアイテムを使ってできる遊びを
思いつく限り書き出します。
で、それをパズルのように並べ替えながら、
まずここで基本をマスターしたから
その応用の遊びをこっちでやって、みたいに
遊びの流れを考えるようなことをしていました。
- 岩田
- まず構成要素を用意して、
ダンジョンを進む流れを考えていくんですね。 - 保坂
- そうです。
でも、ダンジョンを考えるにあたって、
わたしがどうしてもこだわったことがあったんです。
そもそも、ときどき岩が落ちてきたり
たくさんの怖い敵が襲ってきたりするような場所に、
あんな小さな身体のリンクが
単身で乗りこんでいくということに、なんだか・・・。 - 岩田
- 「どうして独りでそんな場所に?」と思いますよね。
- 保坂
- そうなんです。
こんなこと、自分ではできないと思ったんです。
もちろんゼルダを助けるという大きな目的があるとはいえ、
もしわたしだったら、途中でキレてしまうかもと。
そこで、ダンジョンに登場する
キャラクターたちに協力してもらうことにしました。 - 久田
- キャラクターたちがほめてくれるんです。
- 岩田
- ほめる? リンクを?
- 保坂
- (うれしそうに)はい、そうです(笑)。