『キキトリック』
3. 耳にも“思い込みのカベ”がある
- 岩田
- 少し専門的になりますけど、
劣化雑音のノイズ君以外のキャラクターも含めて、
どんなことをすると情報の欠落した音声がつくられて、
なぜ人はそれをきちんと聞けてしまうのでしょうか。
専門家の立場からお話してもらってもいいですか?
- (オトデザイナーズ)坂本
- はい。音の聞き分けで、いちばん典型的な例は、
『タモリ倶楽部』(※9)の「空耳アワー」(※10)です。
外国の曲なのに日本語の歌詞がのると、
そう聞こえてしまいますよね。
『タモリ倶楽部』=1982年からテレビ朝日系で放送されている、タモリさんが司会を務める深夜のバラエティ番組。
ようちえん」では
園児の言い間違いを指摘するんですが、
「とうころもし」とか「エベレーター」とか
単体で聞いたら誰でもわかるんですけど、
すごくテンポよく単語をつなげられると、
途中でポンッと「とうころもし」って入っていても
気づかないんです。
- 岩田
- 最初のとっかかりは劣化雑音でしたけど、
本当にバラエティ豊かなものになりましたね。
坂本(賀勇)さんは、
少し離れたところからソフトを見ていて
面白いなと思ったのはどんなところですか?
- (任天堂)坂本
- やっぱり僕も「空耳アワー」が好きなんです(笑)。
聞こえないものでも文字やイラストを見ると、
そのとおりに聞こえてしまうところが
面白いなぁと思っていました。
あとは“聞こえている人”と“聞こえない人”と、
“聞こえているつもりの人”がいたときの会話の面白さですね。
それこそローカルなコミュニケーションというか、
自信たっぷりなのに間違えたり、
みんな聞こえているのに自分だけ聞き取れなかったりして、
「これは新しいゲームのスタイルになるな」
というところにいちばん興味をひかれました。
- 岩田
- わたしは、どの映像の音が流れているかを当てる
「電器店」が面白くて好きです(笑)。
- 佐藤
- あれはみなさんが楽しんでくれて、
アニメーションとか、実写とか、
映像もわりとバラエティに富んだものが入っています。
坂本さんのチームならではの味で、
すごく楽しいものになりました。
- 岩田
- あのへんのごちゃ混ぜ感が何とも言えないですね。
何しろ『メイドインワリオ』(※12)や『リズム天国』を
つくってきた人たちの血でできているわけですから。
『メイドインワリオ』=2003年3月、1作目がゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売されたアクションゲームシリーズ。
- (任天堂)坂本
- 「電器店」のムービーは僕もすごく好きで、
「かなり面白いから一覧で見られるようにして!」
と佐藤さんに頼みました。そうすれば、
登場したものは後でじっくり見直せますから。
- 岩田
- つくっている人たちが非常に楽しんでいるのが、
プレイしていてひしひしと伝わってきます(笑)。
ゲームとして見る以外にも、
「何てバカなことをやってるんだ・・・!」
ってつっこみたくなることも含めて、面白いです(笑)。
- 一同
- (笑)