『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』
## サウンドトラックCD篇 岩田 : それでは、今回のサウンドトラックCD、
別名「近藤浩治さんセルフベスト盤」に収録された10曲に対して、
近藤さんからコメントをいただきたいのですが。 近藤 : はい。 岩田 : もちろん他の2人も、
それぞれの曲への想いを語っていただいてけっこうですので
よろしくお願いいたします。
別名「近藤浩治さんセルフベスト盤」に収録された10曲に対して、
近藤さんからコメントをいただきたいのですが。 近藤 : はい。 岩田 : もちろん他の2人も、
それぞれの曲への想いを語っていただいてけっこうですので
よろしくお願いいたします。
トラック01. Super Mario Bros. / 地上BGM 近藤 : ファミコンでは3音しか使えないのが特徴でしたので、
その制限された音のなかで、どれだけふつうに音楽を聴かせるか、
しかも3音だからこそ面白いというか、
味のあるものにしようという意気込みでつくりました。
さらに「地上」と「水中」と「地下」と「城」のそれぞれの曲が
ぜんぜん違った音楽に聞こえるようにしようと。 岩田 : たしかにぜんぜん違いますよね。 近藤 : で、『スーパーマリオ』の「地上BGM」なのですが、
最初にゲーム画面を見たとき、青空と草原が広がっていたので
そのイメージで曲をつくろうとしたんです。 岩田 : 『スーパーマリオ』が出てくる前は
ほとんどのゲームが黒バックでしたからね。 近藤 : そうです。なので、その青空がとても新鮮で、
そのゲーム画面に合うようにということで
ちょっと脳天気で外を散歩するような、
のほほんとした曲をつくってしまったんです。 岩田 : その、のほほんとした曲はどうしたのですか? 近藤 : ボツになりました。
やっぱりのほほんだと、マリオの走るスピードとかジャンプに
合わないということがわかったんです。
そこで、マリオの動くリズムに合わせてつくりなおして、
それでできたのが「地上BGM」の曲なんです。 岩田 : ゼロからつくりなおしたんですか? 近藤 : ♪チッチチッチチッチ・・・という
三連符のノイズが入ってますけど、
それは最初につくった曲から持ってきたんです。
全部つくりなおすつもりだったんですけど、
メロディだけをつくって聴いてみようとしたときに、
試しにそのノイズを入れると微妙にうまく重なって、
前に進んでいくというグルーブ感が出たので、
そのまま使ってみることにしたんです。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 永松 : あれは音楽的にはすごく不思議なんですよね。
♪チッチチッチって言ってるので、
本来ならそれに合わせてメロディも変えるところなんです。 横田 : たぶん音楽の定石でつくったら、
メロディもスイングするはずなんです。 近藤 : そうですね。 永松 : でも、ちょっと違和感がある感じになっていて
それが逆にゲームにマッチしてると思うんですよね。
だからこそ、すごく刺さっているというところも
あるような気がするんです。 横田 : そこが大きな個性になってるんでしょうね。
この曲は自分にとっての原点です。 永松 : そうですよね。
僕もいまの仕事の原動力になっていると思います。
というのも、1日に1回、必ず弾くようにしているんです。 岩田 : え、子どものときには弾けなかったのに? 永松 : おかげさまで弾けるようになりまして(笑)、
お昼休みの時間に、必ず弾くようにしています。 岩田 : はあー、お昼休みの儀式にするほど
永松さんにとっては原動力になる曲ということなんですね。 永松 : はい(笑)。
その制限された音のなかで、どれだけふつうに音楽を聴かせるか、
しかも3音だからこそ面白いというか、
味のあるものにしようという意気込みでつくりました。
さらに「地上」と「水中」と「地下」と「城」のそれぞれの曲が
ぜんぜん違った音楽に聞こえるようにしようと。 岩田 : たしかにぜんぜん違いますよね。 近藤 : で、『スーパーマリオ』の「地上BGM」なのですが、
最初にゲーム画面を見たとき、青空と草原が広がっていたので
そのイメージで曲をつくろうとしたんです。 岩田 : 『スーパーマリオ』が出てくる前は
ほとんどのゲームが黒バックでしたからね。 近藤 : そうです。なので、その青空がとても新鮮で、
そのゲーム画面に合うようにということで
ちょっと脳天気で外を散歩するような、
のほほんとした曲をつくってしまったんです。 岩田 : その、のほほんとした曲はどうしたのですか? 近藤 : ボツになりました。
やっぱりのほほんだと、マリオの走るスピードとかジャンプに
合わないということがわかったんです。
そこで、マリオの動くリズムに合わせてつくりなおして、
それでできたのが「地上BGM」の曲なんです。 岩田 : ゼロからつくりなおしたんですか? 近藤 : ♪チッチチッチチッチ・・・という
三連符のノイズが入ってますけど、
それは最初につくった曲から持ってきたんです。
全部つくりなおすつもりだったんですけど、
メロディだけをつくって聴いてみようとしたときに、
試しにそのノイズを入れると微妙にうまく重なって、
前に進んでいくというグルーブ感が出たので、
そのまま使ってみることにしたんです。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 永松 : あれは音楽的にはすごく不思議なんですよね。
♪チッチチッチって言ってるので、
本来ならそれに合わせてメロディも変えるところなんです。 横田 : たぶん音楽の定石でつくったら、
メロディもスイングするはずなんです。 近藤 : そうですね。 永松 : でも、ちょっと違和感がある感じになっていて
それが逆にゲームにマッチしてると思うんですよね。
だからこそ、すごく刺さっているというところも
あるような気がするんです。 横田 : そこが大きな個性になってるんでしょうね。
この曲は自分にとっての原点です。 永松 : そうですよね。
僕もいまの仕事の原動力になっていると思います。
というのも、1日に1回、必ず弾くようにしているんです。 岩田 : え、子どものときには弾けなかったのに? 永松 : おかげさまで弾けるようになりまして(笑)、
お昼休みの時間に、必ず弾くようにしています。 岩田 : はあー、お昼休みの儀式にするほど
永松さんにとっては原動力になる曲ということなんですね。 永松 : はい(笑)。
トラック02. Super Mario USA / 地上BGM 近藤 : 『マリオUSA』(※10)は、ディスクシステム用につくった
『夢工場ドキドキパニック』(※11)がもとになっていまして、
まずそのリメイクをアメリカで発売することになりました。 岩田 : アメリカでは『スーパーマリオブラザーズ2』として発売したんですね。 近藤 : はい。日本での『スーパーマリオ2』(※12)は
初代『スーパーマリオ』の続編でしたが、
アメリカでは、『夢工場ドキドキパニック』のリメイクだったんです。
で、アメリカで『マリオ2』として出すことになったとき、
海外のファミコンであるNES(※13)には、
ディスクシステムにあった新音源がついてませんでしたから・・・。 岩田 : 新音源というのは、ディスクシステムに1音だけついていた、
波形(※14)が自由に定義できる音源のことです。 『マリオUSA』=『スーパーマリオUSA』。1992年9月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。今回の『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』に収録。 {:.note-sm .faded title="※10"} 『夢工場ドキドキパニック』=1987年7月に、ファミコンディスクシステム用ソフトとして、フジテレビジョンから発売されたアクションゲーム。 {:.note-sm .faded title="※11"} 日本での『スーパーマリオ2』=『スーパーマリオブラザーズ2』。1986年6月に、ファミコンディスクシステム用ソフトとして発売されたアクションゲーム。今回の『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』に収録。 {:.note-sm .faded title="※12"} NES=海外でのファミコンの名称。Nintendo Entertainment Systemの略。 {:.note-sm .faded title="※13"} 波形=音の信号の形状や形態を表すもの。代表的な波形として「矩形波」や「三角波」などがあり、波形が違えば、違った音色になる。 {:.note-sm .faded title="※14"} 近藤 : はい。なので、ディスクシステムでは4音使えたのですが、
NESではそれが使えませんので、
リメイクするときは、その音を補うために工夫してつくりました。
で、今度はそれを『マリオUSA』にリメイクすることになって・・・。 岩田 : もともとディスクシステム用のソフトだった
『夢工場ドキドキパニック』をリメイクして、
アメリカのNESで『マリオ2』として発売し、
さらにそれを再リメイクして、日本ではファミコン用ソフトとして
『マリオUSA』として出すことになったんですね。
ちょっとややこしいですけど(笑)。 近藤 : ファミコンにはデルタモジュレーションと呼ばれる、
パーカッションをサンプリングして、使える機能があるんです。
そのままだとすごく音が悪いんですけど、
『マリオUSA』のときは、それをパーカッションとして使って、
ちょっとは豪華で、きれいな音が聞こえるようにしました。 岩田 : 3音と4音ではえらい違いですし、
たぶん「しょぼくなったよね」と言われないように
ものすごく闘志を燃やしてつくったんでしょうね。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 近藤 : そうです、はい。 岩田 : それに、ファミコンですから、
音色と言っても、ほとんど選択肢はなかったんです。
そこで、矩形波の信号が出ているところと出ていないところの
割合をちょっといじったり、細かく切り換えたりすることで、
いろんな味を出すようにしていたんですよね。
わたしはファミコン当時、
サウンドプログラムも書いてましたので、
いろいろと工夫して音をつくっていた覚えがあります。 近藤 : はい、そうでしたね(笑)。
いろいろ工夫してやれるのが楽しい時期でした。
『夢工場ドキドキパニック』(※11)がもとになっていまして、
まずそのリメイクをアメリカで発売することになりました。 岩田 : アメリカでは『スーパーマリオブラザーズ2』として発売したんですね。 近藤 : はい。日本での『スーパーマリオ2』(※12)は
初代『スーパーマリオ』の続編でしたが、
アメリカでは、『夢工場ドキドキパニック』のリメイクだったんです。
で、アメリカで『マリオ2』として出すことになったとき、
海外のファミコンであるNES(※13)には、
ディスクシステムにあった新音源がついてませんでしたから・・・。 岩田 : 新音源というのは、ディスクシステムに1音だけついていた、
波形(※14)が自由に定義できる音源のことです。 『マリオUSA』=『スーパーマリオUSA』。1992年9月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。今回の『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』に収録。 {:.note-sm .faded title="※10"} 『夢工場ドキドキパニック』=1987年7月に、ファミコンディスクシステム用ソフトとして、フジテレビジョンから発売されたアクションゲーム。 {:.note-sm .faded title="※11"} 日本での『スーパーマリオ2』=『スーパーマリオブラザーズ2』。1986年6月に、ファミコンディスクシステム用ソフトとして発売されたアクションゲーム。今回の『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』に収録。 {:.note-sm .faded title="※12"} NES=海外でのファミコンの名称。Nintendo Entertainment Systemの略。 {:.note-sm .faded title="※13"} 波形=音の信号の形状や形態を表すもの。代表的な波形として「矩形波」や「三角波」などがあり、波形が違えば、違った音色になる。 {:.note-sm .faded title="※14"} 近藤 : はい。なので、ディスクシステムでは4音使えたのですが、
NESではそれが使えませんので、
リメイクするときは、その音を補うために工夫してつくりました。
で、今度はそれを『マリオUSA』にリメイクすることになって・・・。 岩田 : もともとディスクシステム用のソフトだった
『夢工場ドキドキパニック』をリメイクして、
アメリカのNESで『マリオ2』として発売し、
さらにそれを再リメイクして、日本ではファミコン用ソフトとして
『マリオUSA』として出すことになったんですね。
ちょっとややこしいですけど(笑)。 近藤 : ファミコンにはデルタモジュレーションと呼ばれる、
パーカッションをサンプリングして、使える機能があるんです。
そのままだとすごく音が悪いんですけど、
『マリオUSA』のときは、それをパーカッションとして使って、
ちょっとは豪華で、きれいな音が聞こえるようにしました。 岩田 : 3音と4音ではえらい違いですし、
たぶん「しょぼくなったよね」と言われないように
ものすごく闘志を燃やしてつくったんでしょうね。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 近藤 : そうです、はい。 岩田 : それに、ファミコンですから、
音色と言っても、ほとんど選択肢はなかったんです。
そこで、矩形波の信号が出ているところと出ていないところの
割合をちょっといじったり、細かく切り換えたりすることで、
いろんな味を出すようにしていたんですよね。
わたしはファミコン当時、
サウンドプログラムも書いてましたので、
いろいろと工夫して音をつくっていた覚えがあります。 近藤 : はい、そうでしたね(笑)。
いろいろ工夫してやれるのが楽しい時期でした。
トラック03. Super Mario Bros. 3 / アスレチックBGM 近藤 : 次は『マリオ3』の「アスレチックBGM」。
さっきも言ったように、デルタモジュレーションで
いろんなパーカッションが入れられるようになったのと、
カセットの容量が増えて、曲数もけっこう入れられるということで、
いろんな曲をたくさん入れてみました。
ところが「印象に残る曲が少ない」と言われたりしました。 岩田 : ああ、曲が増えたぶん、印象が薄くなったということですか。 近藤 : そうなんです。
しかも、初代『スーパーマリオ』の「地上BGM」のトラウマと言いますか、
あの曲が自分にすごく影響して、『マリオ3』のときは
すごく苦労したという思いがあります。 岩田 : 自分でつくったとはいえ、あの曲を超えていくのは
やっぱり大変だったんでしょうね。
たくさんの人に強烈な印象を残したわけですから。
そういうものと闘ったんですね、自分のなかで。 近藤 : はい。初代『マリオ』の曲をつくったとき、
もともと自分のなかではラテンというイメージを持っていなかったんですけど、
周りから「ラテンだ」「ジャズだ」と言われていたので、
そんなふうに自分でもイメージを植え付けてしまったんです。
そこで『マリオ3』の曲をつくるときは
「ラテンとは違うのをつくろう」と思うようになって、
「今度はレゲエで行ってみよう」と。 岩田 : ジャンルで考えて曲をつくろうとしたんですね。 近藤 : はい、ジャンルからつくってしまって、
「地上BGM」をレゲエっぽい曲にしてみたんですけど、
いま考えると、どうだったのかなと(笑)。
ちょっとゲームのリズムには合ってなかったかもしれません。 岩田 : 初代『スーパーマリオ』の「地上BGM」は
プレイのリズムに合うようにつくったのに、
レゲエはゲームのリズムじゃなかったんですね。 横田 : でも、すごくいい曲ですよね。 永松 : ホントにいい曲だと思います。 近藤 : 実は、もうひとつの候補曲があったんです。
最後の最後まで手塚さんと宮本さんと
「どっちにする?」「こっちにしようか」みたいに悩んで、
入れた曲なんです。
その意味でも、『マリオ3』のときは苦労しました。 [5. 近藤浩治のCD収録曲解説(2)](/others/interviews/jp/wii/svmj/vol1/5/) {:.read-more}
さっきも言ったように、デルタモジュレーションで
いろんなパーカッションが入れられるようになったのと、
カセットの容量が増えて、曲数もけっこう入れられるということで、
いろんな曲をたくさん入れてみました。
ところが「印象に残る曲が少ない」と言われたりしました。 岩田 : ああ、曲が増えたぶん、印象が薄くなったということですか。 近藤 : そうなんです。
しかも、初代『スーパーマリオ』の「地上BGM」のトラウマと言いますか、
あの曲が自分にすごく影響して、『マリオ3』のときは
すごく苦労したという思いがあります。 岩田 : 自分でつくったとはいえ、あの曲を超えていくのは
やっぱり大変だったんでしょうね。
たくさんの人に強烈な印象を残したわけですから。
そういうものと闘ったんですね、自分のなかで。 近藤 : はい。初代『マリオ』の曲をつくったとき、
もともと自分のなかではラテンというイメージを持っていなかったんですけど、
周りから「ラテンだ」「ジャズだ」と言われていたので、
そんなふうに自分でもイメージを植え付けてしまったんです。
そこで『マリオ3』の曲をつくるときは
「ラテンとは違うのをつくろう」と思うようになって、
「今度はレゲエで行ってみよう」と。 岩田 : ジャンルで考えて曲をつくろうとしたんですね。 近藤 : はい、ジャンルからつくってしまって、
「地上BGM」をレゲエっぽい曲にしてみたんですけど、
いま考えると、どうだったのかなと(笑)。
ちょっとゲームのリズムには合ってなかったかもしれません。 岩田 : 初代『スーパーマリオ』の「地上BGM」は
プレイのリズムに合うようにつくったのに、
レゲエはゲームのリズムじゃなかったんですね。 横田 : でも、すごくいい曲ですよね。 永松 : ホントにいい曲だと思います。 近藤 : 実は、もうひとつの候補曲があったんです。
最後の最後まで手塚さんと宮本さんと
「どっちにする?」「こっちにしようか」みたいに悩んで、
入れた曲なんです。
その意味でも、『マリオ3』のときは苦労しました。 [5. 近藤浩治のCD収録曲解説(2)](/others/interviews/jp/wii/svmj/vol1/5/) {:.read-more}