『スーパーマリオ 3Dワールド』
1. 「全部入れよう」
2. 「機能が先」
3. 「生理的に心地いい」
4. 時間が解決したこと
5. マルチプレイの原点
6. 「『3Dワールド』でないと意味がない」
7. 3Dマリオの集大成
1. 「全部入れよう」
- 岩田
- 今日はWii Uで発売される
『スーパーマリオ 3Dワールド』のスタッフに、
集まってもらいました。
長年3Dマリオを手がけてきた東京制作部が
3DSで『3Dランド』(※1)をつくって、
「3Dマリオの新しい形ができた」という話
をしてから、はや2年になります。
今回はどのようにはじまって、
どうなっていったのかをお訊きしたいと思います。
では、小泉さんから自己紹介をお願いします。
『3Dランド』=『スーパーマリオ 3Dランド』。2011年11月にニンテンドー3DS用ソフトとして発売された3Dアクション。
- 小泉
- プロデューサーの小泉です。
前回の『3Dランド』の時にも
似たような話をしたんですが、
今回は林田さんと元倉さんの2人が
ディレクターとしてかかわり、
人数も増え大きな隊列になったということで、
そのしんがりを務めました。
- 岩田
- 後ろから、こぼれたものをひろう役割ですね。
- 小泉
- はい。まずは「器をどうしよう?」
というところからはじめていって、
中盤以降はみんなが倒れないようにしつつ、
でも、納期も守れるように、
人員の増強なども行いました。 - 岩田
- では、林田さん。
- 林田
- 今回わたしは元倉さんと一緒に
ディレクターという立場なんですが、
どちらかというと元倉さんがチームの先導役で、
わたしは相談役みたいな感じです。
わりと気楽な立場で、あーだこーだと言いつつ、
新しいことにもトライできました。
- 岩田
- 元倉さん、東京に2人、
京都にも1人、ボスがいるわけですよね。
すごい人たちに囲まれて、
ディレクターをしたんですね。 - 元倉
- はい(笑)。前回の『3Dランド』では
デザインリーダーを担当していましたが、
今回はディレクターとして、
のびのびとやらせていただきました。
- 宮本
- なんか、言わされてない?
- 一同
- (笑)
- 元倉
- いえいえ。かなり早い段階から
宮本さんには見ていただきましたし、
林田さんもすぐ横にいたので、
つくる過程でもいろいろ意見をもらって。
ディレクションに関しては、
とくに大きな問題はなく、
進められたと思います。 - 岩田
- 「ちゃぶ台返し」はなかったんですか?
- 元倉
- えーと・・・、なかったですよね?
- 宮本
- たしかに今回は、「ちゃぶ台返し」がないんですよ。
けっこうめずらしい気はしますね。 - 岩田
- 宮本さんは今回どんなかかわりを?
- 宮本
- 「ちょっとずつ、長くかかわってきた」という感じですね。
東京制作部が独立して以来、
手塚(卓志)さん(※2)と一緒に見てきたんですけど、
『マリオギャラクシー2』(※3)あたりからはもう、
単独でも十分機能する体制になってるんですね。
手塚卓志=情報開発本部 制作部 統括。『スーパーマリオ』シリーズや『ヨッシー』シリーズ、『どうぶつの森』シリーズなど、数多くのゲーム開発にかかわる。過去、社長が訊く『New スーパールイージ U』、社長が訊く「スーパーマリオ25周年」『スーパーマリオ』生みの親たち 篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』携帯機ゼルダの歴史 篇、社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』その2、社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』プロデューサー 篇、E3 2012 特別 篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ U』、E3 2012 特別 篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』に登場。
『マリオギャラクシー2』=『スーパーマリオギャラクシー 2』。2010年5月にWii用ソフトとして発売された、3D空間を冒険するアクションゲーム。第1作『スーパーマリオギャラクシー』は、2007年11月に発売された。
- 岩田
- 宮本さんは東京に行ったときに、
ときどき開発現場に寄って様子を見てくるということを
していましたよね。 - 宮本
- そうですね。『マリオギャラクシー』の頃は
マップの調整にまで泊まりこんで見てましたけど、
『3Dランド』から『3Dワールド』になるにしたがって
気になるところをチェックするくらいで、
おもにゲーム全体の考えの確認をするのが中心です。
『3Dランド』をつくるときに、
2Dの『Newスーパーマリオ』シリーズ(※4)との
決定的なちがいは何か、共通点は何かということを、
徹底的に議論しましたし、
今回はそのコンセプトをより推し進めて、
「『Newスーパーマリオ』のほうが好きな人も楽しめる
据置機向けの3Dマリオをつくろう」
という野望がありました(笑)。
『Newスーパーマリオ』シリーズ=3Dポリゴンで描かれたマリオの2D横スクロールアクションシリーズ。第1作は2006年5月にニンテンドーDS用ソフトとして発売。その後ニンテンドー3DS、Wii、Wii U用でそれぞれ新作が発売されている。
- 岩田
- それに関連して『3Dランド』の「社長が訊く」では、
「『2Dマリオのお客さん』と
『3Dマリオのお客さん』の乖離」
といったお話を訊きましたよね。 - 林田
- 先に言ってしまうと、『3Dワールド』は
『3Dランド』を開発していた当初から、
その後続けてつくるつもりで考えていたんです。 - 岩田
- 『3Dランド』をつくっていたときから、
次は据置機でマルチプレイを実現しようと
決めていたんですか? - 林田
- いえ、むしろ『3Dランド』でも
マルチプレイをやりたかったんです(笑)。 - 岩田
- 先日、新たな紹介映像も公開されていますが、
わたしの印象はひとことで言うと
「密度がすごい」という点に尽きます。
わたしが言うと、手前味噌ですが、
これを語らずにはいられないんですよ。
あの密度がものすごく詰まった感じは、
いったいどうやってできていったんですか? - 林田
- じつは、今年のE3(※5)の前の頃から
「要素があふれちゃってるよね」という話を
元倉さんとずっとしていたんです。
E3=Electronic Entertainment Expo(エレクトロニック エンターテインメント エキスポ)の略で、年に1度、米国のロサンゼルスで開催されるコンピューターゲーム関連の見本市。2013年のE3は6月11日から13日までの3日間開催。
- 岩田
- そうだったんですか。
- 林田
- 僕はずっとコースデザインをやってきたので、
「どう整理してコースを組み立てるか」を
軸にして考えるんですけど、普通ならどう考えても、
入りきらない物量だったんですね。 - 岩田
- 見るからに過剰だったわけですか。
それはなぜ、そんなことに? - 林田
- ひとことで言うとそれは、元倉さんが
「全部入れよう」という方針だったからです(笑)。 - 小泉
- うん。スケジュールは変わらないけど
最後まで「全部入れたい」も変わらなかったね。 - 林田
- その結果、要素が凝縮されて、
ぎっしり詰め込まれている感はあります。 - 元倉
- チームの方針としてまず、
みんなでアイデア出しをするということを
何度もやってきていたんですね。
たとえば氷のコースだったら、
どんな遊びが楽しいか、みんなでネタを考えるんです。 - 岩田
- チームはだいたい何人くらいいたんですか?
- 林田
- 当初40~50人だったものが、
最終的には100人近い規模になっています。
みんなでアイデア出しをすると、
いままでのプロジェクトの2、3倍の量があって、
もうとにかく総量が多いんですね。 - 岩田
- ああ、だから、なんですね。
わたしは『とびだせ どうぶつの森』(※6)を遊んだとき、
やはり詰め込まれたアイデアの総量に
「ここまでやるのか!」と圧倒されたんですが、
それと同じことが今回、アクションゲームの中に
詰め込まれている感じが、
あの数分の紹介映像を見ただけで、感じられたんです。
いろんな驚きを次々に見せつけられて、
そしてまだまだ見せていないものも
わんさかとあるわけですよね。
『とびだせ どうぶつの森』=2012年11月にニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたコミュニケーションゲーム。