New スーパールイージ U
1. 『New マリオ 2』に先を越されて
2. 「ひとくち乗ります」
3. トッテンで複数の問題を解決
4. 「もう1回」
5. 「遊び比べてほしい」
2. 「ひとくち乗ります」
- 岩田
- そのように手塚さんと竹本さんの思いが一致し、
短いコースをつくる実験がはじまって、
手ごたえはどうでしたか? - 手塚
- その時は、
『New マリオ U』のコースを短く加工して、
難易度を高くしただけのものだったんですけど、
遊んでみると、じつによかったんです。
もともと知ってるコースでも
遊びのバリエーションが拡がって、
とても新鮮な気持ちで遊ぶことができました。
でも、その時はまだ、追加コンテンツを
たくさんつくることは考えていなかったんです。 - 岩田
- 「追加コンテンツでコースを全部変えよう」なんて、
ふつうは思わないですよね(笑)。 - 手塚
- でも、それが
「全部を変えても大丈夫や」となったんです(笑)。 - 岩田
- 追加コンテンツなのに、ですか?
- 手塚
- はい。1コースを短くすることで
全部つくれると思いました。 - 岩田
- 竹本さん、手塚さんから
「全部を変えよう」と言われたとき、
どう思いましたか? - 竹本
- 「作業量がとんでもないな」と(笑)。
- 岩田
- 「もう1本、つくってください」と
言われたようなものですからね(笑)。 - 竹本
- それに、『New マリオ U』には
いろんなものを、できる限り詰め込もうということで、
スタッフみんなが持っているアイデアを出し切るように
がんばってつくっていたんです。
ところが、それが終わりかけの頃に、
手塚さんからそういう話をいただいたので、
「自分たちにもう1本つくれるかな?」と、
正直すごく不安に思いました。 - 手塚
- スタッフからも言われましたからね。
「へとへとなのに」とか
「全部出し尽くしたのに」とか(笑)。 - 岩田
- 「燃え尽きて真っ白なのに、
何を言うんですか!」みたいな(笑)。 - 手塚
- 雰囲気は完全にそうでしたね。
- 岩田
- 「コースが短い」と言っても、マラソンで長い距離を走ってきて、
ゴール目前になってから「もう1回ハーフマラソンを走ってくれ」
と言われるようなものですからね(笑)。 - 手塚
- そうですね。でも、僕は
「アイデアを出し尽くしたってホンマか?」と(笑)。
- 岩田
- 手塚さんは「まだまだ走れる」と?(笑)
- 手塚
- はい。冷静に考えたら、
「もっとつくれるんじゃないの?」と。 - 岩田
- そんな無茶なことを
しれっと言うのが手塚さんらしいですね(笑)。 - 一同
- (笑)
- 手塚
- 無茶な話はもうひとつありまして(笑)。
- 岩田
- はい(笑)。
- 手塚
- 3DSの『New マリオ 2』の開発が終わり、
手の空いたコース制作者がいたので、
その人たちにも合流してもらったんです。 - 岩田
- 新しい血を入れたんですね。
- 手塚
- まさにそうです。
同じ『New マリオ』でも、
携帯機でつくるのと、据置機でつくるのは
やっぱり違うんですね。
そこで「違うチームの血が入ることで、
また新しいものができるんじゃないかな」
という期待がありました。
もちろん、自分では
「わりと無茶を言ってるな」と思いつつも、
「まあ、はじめてみようよ」と、
スタッフに伝えました。 - 岩田
- 新しい血が入るとどんな感じでした?
- 竹本
- とても新鮮でした。
こっちは正直に言うと、『New マリオ U』で
あれだけたくさんのコースをつくって、
疲れ切っているところに・・・。 - 岩田
- やる気満々の人たちが大量に流入してきて、
彼らがキャッキャ言いながらつくりはじめたんですね。 - 竹本
- そうなんです。
ですから、あとから合流した人たちのほうが
コースをつくるペースがすごく速くて、
「もとからいた人たちは大丈夫かな?」
と、ちょっと心配もしたんですけど、
あとから入った人たちの姿に刺激されたのか、
次第にいろんな新しいアイデアが出てくるようになりまして、
手塚さんが新しい血を入れてくれたのは、
当たりだったと思います。 - 手塚
- (うれしそうに)よかった(笑)。
- 竹本
- それに、たとえばコースづくりにしても、
Wii Uのチームだと、マルチプレイを想定しますので、
幅のあるコースを考えがちになるんです。
ところが3DSから合流したスタッフは、
1人プレイを前提で考えるので、
『New マリオ U』のコースとは
違う感じが出せるようになったと思います。 - 手塚
- しかも、みんながつくるスピードも速くて
「思っていたよりも、早くできそうだな」
と思いました。 - 岩田
- サクサクつくることができたんですね。
- 手塚
- ええ。
- 岩田
- その時、ルイージは?
- 手塚
- まだマリオでつくっていました。
- 岩田
- わたしは、このゲームの主役が
マリオからルイージに替わった日のことを
ハッキリ覚えているんですけど、
手塚さんが会議中に突然、
「『New マリオ U』の追加コンテンツは、
ルイージのゲームにしようと思うんですけど」
と、言いはじめたじゃないですか。 - 手塚
- はい、そうでした。
会議の時に、岩田さんから
「今年は“ルイージの年”にしたい」という話を聞いて、
「ああ、それならば、いまつくっているのは、
それに合わせるべきだ」と思ったんです。 - 岩田
- ちなみに、ルイージが世の中にデビューしたのは、
1983年に稼働をはじめた
アーケードゲームの『マリオブラザーズ』(※6)で、
それから30年が経ち、
今年は『ルイージマンション2』(※7)など
ルイージに関係するソフトがいくつか出ることもあって、
わたしが宮本(茂)さんに
「今年は“ルイージの年”ということにするのはどうでしょう?」
という思いつきを提案してみたんです。すると、
「いつも日の当たらないルイージに
注目してもらえるのはいいですね」
ということで賛成してくれて、
「じゃあ、ニンテンドーダイレクト(※8)で
わたしがルイージの帽子をかぶります」って(笑)。
『マリオブラザーズ』=アーケード用ゲームとして、1983年に稼働がスタートしたアクションゲーム。ファミコン版は同年9月に発売。
『ルイージマンション2』=2013年3月に、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
ニンテンドーダイレクト=「Nintendo 3DS Direct Luigi special 2013.2.14」と題して放映されたニンテンドーダイレクトのこと。今年(2013年)は、ルイージが1983年にアーケード版『マリオブラザーズ』で初登場してから30周年にあたることから、「ルイージの年」の象徴として、岩田がルイージの帽子をかぶって登場した。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- だから、手塚さんは「その話にひとくち乗ります」
という感じだったんですよね(笑)。 - 手塚
- 「ぜひ乗っからせてください!」
という感じでした(笑)。
じつは、追加コンテンツについては
すごく悩んでいたんです。
「どのような方向でつくればいいんだろう?」と。
そこで、ふつうに追加コンテンツをつくるよりも、
主役をルイージに替えたほうが
たくさんの人から注目されると思いましたし、
自分たちとしても、ルイージを軸に
このゲームをまとめていったほうが、
方向性もしっかり定まりますし、気持ちも乗って、
つくりやすくなるんじゃないかなとも思いました。 - 竹本
- そうですね。
- 手塚
- だから、わたしにとっては
“ルイージの年”がすごい助け船になったと、
いまでも思っています。 - 岩田
- ちなみにその会議の場で、
手塚さんから出てきたそのアイデアを
宮本さんとわたしが絶賛したんです。 - 手塚
- わたしが褒められることって
あんまりないんですけどね・・・(笑)。 - 一同
- (笑)