New スーパールイージ U
1. 『New マリオ 2』に先を越されて
2. 「ひとくち乗ります」
3. トッテンで複数の問題を解決
4. 「もう1回」
5. 「遊び比べてほしい」
3. トッテンで複数の問題を解決
- 岩田
- 竹本さん、手塚さんから
「ルイージを主人公にするのはどう?」
と言われたとき、どう思いましたか? - 竹本
- 最初は「何を言ってるんだろう」と(笑)。
- 岩田
- あははは(笑)。
- 竹本
- でも、数日後にまた
手塚さんが同じ話をしにきたので、これは・・・。 - 岩田
- 本気だと(笑)。
- 竹本
- そうです。本気なんだと思いました。
そこでルイージを軸に
考え直してみることにしたのですが、
それまでは「82コースのすべてを変える」
ということで追加コンテンツをつくっていましたけど、
それはある程度の売りにはなっても、
自分としてはしっくりきていなかったんです。
ところが、主役を替えることでハッキリと
「ルイージのゲームです」
と言うことができますので・・・。 - 岩田
- 説明しやすくなりましたよね。
- 竹本
- そうなんです。
やっと説明がつくゲームになると思いました。
それからは自分自身も仕事に乗って、
すごくつくりやすくなりました。 - 手塚
- (うれしそうに)ああ、よかった。
- 竹本
- (笑)
- 手塚
- 実際に、ルイージに替えて
よかったことがいくつもありました。
マリオでつくっていたときは
そこそこ難しい遊びになってしまっていて、
自分としても「ちょっと難しいかな?」
と思うようなところもあったんです。
ところがルイージに替えると、
やっぱり操作も変えないとね、ということで、
つくり直してみたら、それまでは難しかった場所が
そうでもなくなったりしたんです。 - 岩田
- ジャンプ力もアップしますしね。
- 手塚
- ええ。その結果、
ほどよいバランスになりました。
それに、もともと追加コンテンツということで
ダウンロード版だけでいいと思ってたのですが、
パッケージ版も出すことになりまして・・・。 - 岩田
- 手塚さんは、任天堂の世界中の営業部隊から
「ぜひパッケージ版も出してください」
と、頼まれたんですよね? - 手塚
- はい。その時「本当にやるの?」
と思ったんですけど(笑)。 - 岩田
- まったく想定していなかったんですね。
- 手塚
- はい。自分としては
「追加コンテンツをみんなに知ってほしい」
ということしか頭にありませんでしたので、
それをパッケージにするなんて・・・。
でも、いろいろと考えてみると、
そういう広めかたもありなんだと思いました。 - 岩田
- パッケージ版も出すことで、
『New マリオ U』を遊んでいない人たちにも
触ってもらえる機会が増えるわけですからね。 - 手塚
- そうなんです。
それまでは『New マリオ U』を遊んだ人だけが対象で、
しかも「もっと遊びたい人」だけだったのが、
パッケージにすることで、
『New マリオ U』を遊んだ人だけでなく、
まだ遊んでいない人も対象になる、
というところがすごく大きいと思いました。 - 岩田
- でも、主役をルイージにしたことで、
マルチプレイをするときのプレイヤーキャラを、
新しく考えないといけなくなったんですよね? - 手塚
- トッテン(※9)ですね。
トッテン=『New スーパーマリオブラザーズ U』で登場した新キャラクター。キノピオの家からアイテム盗み出しコースでマリオと追いかけっこをする。敵をすり抜けて逃げるのが特徴。
- 岩田
- どうしてトッテンを選んだんですか?
- 竹本
- ルイージを主人公にすると決めた時点で、
手塚さんにはまず
「マリオは絶対に出したくないです」
という話をしていたんです。
- 岩田
- 情報開発本部のふだんの会話では
絶対にありえない話をしてますね(笑)。
「マリオは絶対に出したくない」だなんて。 - 竹本
- そうですね(笑)。
「キノピオを3人出してもいいんじゃない?」
という話も出てきたんですけど、
さすがにキノピオ3人が同時に出てくると
わけのわからない画面になってしまいますし、
「せっかくだから、新しいキャラを使いたいです」
と、しつこく手塚さんに言い続けていたんです。 - 岩田
- 竹本さんがしつこく言わなかったら、
なんとなくキノピオ3人になってたんですか? - 手塚
- ああ・・・たしかに
そうなっていたかもしれないですね。 - 竹本
- そこで、キャラクターを
いちから見直してみることにしました。
そもそも、このシリーズには
たくさんの敵が登場しますけど、
仲間になるようなキャラが少ないんです。 - 岩田
- 例によってピーチは最初からプレイヤーと離れ離れで
救いに行く対象ですしね(笑)。 - 竹本
- はい(笑)。
なのでトッテンしかいないと。
というのも、『New マリオ U』には、
トッテンを追いかける遊びが入ってますけど、
このキャラを、「敵をすり抜ける」性能のまま
プレイヤーキャラとして使えるだけでも
おもしろいのではないかと思いました。
そこで、試しにつくってみようということで、
プログラマーさんに頼んだのですが、
最初は「本当にトッテンでやるんですか?」
という反応だったんです。 - 岩田
- プログラマーは乗り気ではなかったんですね。
- 竹本
- そうなんです。
ところが実際につくってもらったら、
それを見せてくれる前に、
そのプログラマーさんから電話がかかってきて、
「トッテンが使えるのって新鮮な感覚です!
コースセレクト画面を歩いている姿もおもしろいですよ」
と、うれしそうに話してくれたんです。
その声を聞いて、手塚さんには
トッテンを推しまくるしかないと思いました。 - 岩田
- 手塚さんの了解をとる前に、
とりあえずつくってみたんですね。 - 竹本
- はい。そこで、
手塚さんにトッテンの試作を見せながら
「敵との当たり判定がないということは、
初心者向けとしてもイケるんじゃないでしょうか?」
という話をしました。 - 手塚
- そう。ちょうどその頃、
「初心者の方向けの仕様も必要やね」
という話をしていたんですけど、
その要望にトッテンがピッタリ合ったんです。
なので、宮本さんがよく言う・・・。 - 岩田
- 「アイデアとは
複数の問題を一気に解決するもの」(※10)。
「アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの」=『ほぼ日刊イトイ新聞』で紹介された宮本(茂)の言葉。くわしくは、「アイデアというのはなにか?」を参照。
- 手塚
- まさに、トッテンで
問題が解決できると思いました。
じつはここだけの話、1人用でも
トッテンで遊べるようにもしてあるんです。 - 岩田
- たしか、5月のニンテンドーダイレクト(※11)で紹介した時は、
複数プレイのときだけトッテンが使える、
という話をしましたけど・・・。
5月のニンテンドーダイレクト=「Nintendo Direct 2013.5.17」のこと。
- 手塚
- あのあと、仕様締め切りの頃でしたので
「隠し操作でもかまわないから、
初心者の方が快適に遊べるように」と、
1人用でも遊べるように仕込んでみました。
それでトッテンの出しかたなんですけど、
むかしのゲームには、隠しコマンドがありましたよね。
- 岩田
- はいはい。隠しキャラを
隠しコマンドで出したりしました。 - 手塚
- あえて具体的には言いませんが、
コースに入るときに“あること”をするだけなので、
おそらくかんたんに見つかると思います。 - 岩田
- そこは、お客さんにぜひ見つけてください
ということなんですね。 - 手塚
- はい。そのような隠しコマンドって、
最近のゲームではあまり入れませんでしたので、
ちょっと懐かしい思いをしながら、
自分で見つける楽しさも
味わってほしいと思っています。