New スーパールイージ U
1. 『New マリオ 2』に先を越されて
2. 「ひとくち乗ります」
3. トッテンで複数の問題を解決
4. 「もう1回」
5. 「遊び比べてほしい」
4. 「もう1回」
- 岩田
- 『New マリオ U』をもとに
『New ルイージ U』をつくって、
遊びにどんな違いが生まれましたか? - 竹本
- 『New マリオ U』のほうは
いままでのシリーズのノリで、
サクサクと遊べるようになっていますけど、
『New ルイージ U』のほうには
けっこう難しい仕掛けが入っています。 - 岩田
- 『New マリオ U』よりも難しいんですか?
- 竹本
- そうですね。
このソフトを社内の営業向けに
実際に遊んでもらったんですけど、
調整前のものなので難易度がかなり高いこともあって、
ある人が最初のワールドの砦のところで
何度も何度もミスをしていたんです。
そのとき僕は仕事があったので、
その場をいったん離れたんですけど、
戻ってきたときには、クリアしていて
とても満足そうな顔をされていたんですね。
そこで、コンティニューの回数を見せてもらったら、
20回にもなっていたんです。 - 岩田
- ふつうは5回くらい失敗しちゃうと
そこでめげちゃうものですけど。 - 竹本
- そうですよね。
でも、先ほども言ったように、
コースを短めにつくってあるので、
「何回も繰り返し遊ぶにはもってこいかな」
と、そのときに強く感じました。 - 岩田
- ですから、何度失敗しても
「もう1回」と思えるゲームになったんですね。 - 竹本
- あと、任天堂の中に
初心者やゲームが得意でないような
お客さんの気持ちになってゲームを評価する
ベテラン社員さんのチームがありますよね。 - 岩田
- ええ。いろんな人の気持ちを
理解できないといけないので、
もともとゲームがあまりうまくない人たちで
構成されてるんですよね。 - 竹本
- そのチームの中に、
『New マリオ U』の時は
まったくクリアできなかったんですけど
「今回のやつはコンプリートできました」
という人がいたんです。 - 岩田
- へえ~。
- 竹本
- 僕は正直、申し訳ないですがそのチームの中から、
コンプリートできるような人が出るなんて、
まったく予想していなかったんです。 - 岩田
- わたし自身も驚きです。
でもそれって、かき立てられる話ですね。
「これはクリアしないと」って(笑)。 - 竹本
- ですから、「ゲームが得意でないような人でも
繰り返し再挑戦すればクリアできるゲームにできた」
という手ごたえも感じることができました。 - 岩田
- そもそも『マリオ』シリーズにとって、
再挑戦したいという気持ちを
途切れないようにすることが
ものすごく大事なような気がするんです。
「もう少しでできそうな気がする」とか、
「やっているとちょっとずつ
自分が前進しているのがわかる」とか、
「やられたときは、ああオレが悪かった」
と思えるようにすることが、
『マリオ』が『マリオ』であるかどうかの、
とても大切な要素なんじゃないでしょうか。
- 手塚
- そうですね。
なので今回は難易度的には難しいんですけれど、
緊張を持続できるくらいの、
ほどよい長さのコースに
まとめることができたと思います。
だから、ミスをしても、
「もう少しでできそうな気がする」
という気持ちになって、
再挑戦できるんだと思います。 - 岩田
- ふつうは難易度を上げると、
「僕には無理」と感じる人も出てくるわけですよね。
ところが今回は、コースの長さを
ほどよい短さにすることができたので、
難易度を上げても大丈夫、ということなんですね。 - 手塚
- そうですね。
- 竹本
- それに今回は、
新しくつくり直した82コースのクリア条件を
すべて「100カウント以内」にそろえたんです。 - 岩田
- それはどうしてなんですか?
- 竹本
- もともとはコースをつくる人に対して、
基準として定めたルールだったんです。 - 手塚
- たとえば「短めにつくってね」と言っても、
人それぞれに・・・。 - 岩田
- たしかに、「短めに」と言われても
感じる長さは人それぞれですからね。 - 手塚
- ええ。そこで「100カウント以内で」
ということを絶対的な基準にして
コースをつくってもらいました。 - 岩田
- もともとつくる側の基準だったものが、
最後にルールとして残るのがおもしろいですね。 - 竹本
- それを残したほうが
お客さんにもわかりやすいと思いました。
たとえば残り10カウントくらいのところで
ミスをしても、「もうすぐゴールだ」
という気持ちになりますので・・・。 - 岩田
- 「じゃあ、もう1回」と。
- 竹本
- そうです。
再挑戦したくなると思います。 - 手塚
- ただ、あまりに100カウントに
しばられてつくったので、けっこうギリギリでないと
クリアできないコースが出てきたんです。
それはそれで、ほどよい緊張感が生まれて
いいときもあるんですけど、
そんなコースばっかりになると
よくありませんので・・・。 - 竹本
- そうですね。
もともと僕は『マリオ』が得意なほうですし、
ルイージのジャンプ力も僕が調整しましたので・・・。 - 岩田
- 熟知してるんですよね。
- 竹本
- はい。慣れてるはずなんですけど、
難しいところで一瞬戸惑ったりすると、
100カウントを過ぎてしまった、
というコースがそこそこあったんです。
「これはさすがにまずいな」と思いつつも、
コースとしてはとてもよくできていましたので・・・。 - 岩田
- 「いまさらコースを
さらに短く削るのもなんだしなあ」と? - 竹本
- そうです。
どこかを削ると、そのコースの良さが
台無しになってしまうと思いました。
そこで一気にカウントを
200まで伸ばしてみましょうか
という話もしたんですけど・・・。 - 岩田
- 2倍に増えるとかなり間延びしますよね。
- 竹本
- そうなんです。
それに100のほうがキリがいいですし。 - 岩田
- それで、どんな解決方法を見つけたんですか?
- 手塚
- これは言っていいのかな?(笑)
- 竹本
- 言っちゃっていいんでしょうか(笑)。
- 手塚
- じつは『New マリオ U』と比べて
1カウントあたりの長さをちょっと長くしたんです(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- それって、ぎゅーっと絞っていたら
ふつうの人が遊べなくなっちゃうので、
最後にちょっとゆるめました、
みたいな感じなんですね。 - 手塚
- まさにそのとおりです。
- 竹本
- じつは、もともと『マリオ』では、
1カウントは、1秒よりも
けっこう短くつくることが多いんですけど、
「コースを変えずに、
1カウントを1秒くらいにする手もありますよ」
ということを手塚さんに言って調整したんです。 - 手塚
- それでとても遊びやすくなったと思います。
今回も社内のいろんな人に触ってもらって
感想をもらったりしたんですけど、
「最初は難しくて、
こんなのは無理だと思いましたけど、
何回もやる楽しさがすごくわかってきました」
という声も多く聞かれましたし。 - 岩田
- 難しいところでミスをしても
「もう1回」という気持ちになるんですね。
何がそうさせるんだと思いますか? - 竹本
- やっぱりコースを短くしたことが、
いちばん大きいように思います。 - 岩田
- ただ「コースを短くした」と聞くと、
量が減った感があって、お客さんにとっては
損をしたような気がするじゃないですか。 - 手塚
- そうですね。でも、短くなっても
コースの密度は濃くなりましたし、
これからの『マリオ』シリーズは
これくらいサイズのコースに戻そうかと
思ってるくらいなんです。 - 岩田
- へえ~。
じゃあ、このタイトルをつくることで
「密度が濃くて短いコースの良さを再発見した」
ということなんですね? - 手塚
- そうですね。
もちろん、そのときどきで
長いものもあったほうがいいとは思いますけど。 - 岩田
- でもやっぱり、短いのもいいなあと?
- 手塚
- はい。