ゲーム&ワリオ
1. 「もっと乱れろ」
2. 便利でズルい入れ物
3. エネルギーをかけた16種類のゲーム
4. “オールスター応援状態”
5. 『ゲーマー』
6. 『メイドインワリオ』シリーズの集大成
2. 便利でズルい入れ物
- 岩田
- 最終的に、Wii U本体の内蔵ソフトから
パッケージソフトへと方向転換しました。 - 阿部
- はい。
- 岩田
- それはいつ頃のことだったんですか?
- 阿部
- 2011年の夏頃のことです。
『パイレーツ』の原型をつくってみると、
とてもよい手ごたえがあって、
その一方で、本体に同梱するソフトとしては、
ちょっとボリュームがありすぎるような気がしたんです。 - 岩田
- でも、パッケージにするからといって、
いきなり『メイドインワリオ』ではなかったんですよね? - 阿部
- はい。もともと『メイドインワリオ』のゲームは、
味のあるグラフィックで勝負してきましたけど、
Wii Uは高解像度のHD(※7)になりましたので、
そこをどうしようかと・・・。
HD=High Definition(ハイデフィニション)の略。テレビなどにおける高解像度(高精細、高画質)のこと。映像のピクセル数が多く、720本以上の走査線数を保持し、かつアスペクト比が16:9であることが条件。高解像度の映像を扱う地上波デジタル、BSデジタルなどのテレビジョン放送をHDTVと呼ぶ。
- 岩田
- スーパーフォトリアルの
『メイドインワリオ』というのもちょっとね。 - 坂本
- 超美麗な画像も
使いかた次第なんだと思いますけど、
全体がそうだと、やっぱり違和感がありますよね。
『メイドインワリオ』の場合はとくに。 - 阿部
- そこで、映像技術にくわしい
小林(仁志)さん(※8)たちに
監修してもらうことになり、
「自分たちが得意な表現で
やったらいいんじゃないか」という
アドバイスをいただきました。
小林仁志=企画開発本部 企画開発部 デザイン推進グループ所属。
- 森
- で、その時に、
デザイナーのひとりが描いた
ちょっと味のある船長の絵をたまたま小林さんが見て、
「この絵をぺらぺらで動かしたらよいのでは?」
というお話をされたんです。
そこからすごくつくりやすくなって、
「味を出す方向でいってもいいんや・・・」
ということで、開発を進めていきました。 - 阿部
- そうでしたね。
- 森
- それからあの頃は、物語をつくっていましたよね。
- 阿部
- そうです。物語をつくって
ゲームの流れをひとつにしようとしていました。
でも、自分たちにとってははじめての試みでしたし、
「より時間がかかってしまうんじゃないか」と思ったので
その年の12月までをデッドラインにして
試行錯誤を重ねていったんですけど
「これだ」という手ごたえを感じることができず、
しかも、そのまま進めていくと
とてつもなく時間がかかりそうだったんです。
そこで、「ワリオたちがつくったゲームとして
まとめたらどうかな」と考え、再構成して、
坂本さんに相談しました。 - 岩田
- 開発から丸1年たって、ようやく
『メイドインワリオ』という入れ物を使うことにしたんですね。 - 阿部
- そうです。
- 岩田
- 目の前に並んでいる人たちの顔を見ていると
最初から『メイドインワリオ』をつくるのが
必然だったような気もするんですが(笑)。 - 阿部
- はい(笑)。
- 岩田
- それに『ワリオ』という入れ物は、
すごく便利だと思うんですよね。
本来は相容れないようなものでも、
混ぜこぜにして入れられるわけですから。 - 坂本
- そうですね。
- 岩田
- まったく別に見えるようなものでも、
おもしろいものであれば
「だって『メイドインワリオ』なんだし」と
ある意味、開き直って入れることができますし。
でもそれって、ズルいとも言えますが(笑)。 - 坂本
- まあ、「便利でズルい入れ物」なんです(笑)。
- 岩田
- 森さんは、阿部さんから
「『メイドインワリオ』にしようと思うんだけど」
と言われた時、「やった!」と思いました?
それとも「また『メイドインワリオ』?」と思いました? - 森
- 「よっしゃよっしゃ」と思いました。
- 岩田
- (笑)
- 森
- ただ、残念な気持ちもあったんです。
それまでお話をつくっていたのを
途中でやめたわけですから。 - 阿部
- でも、その時に考えたネタも、
今回はちょこちょこと入っていて・・・。 - 森
- そうですね、生きてますね、今回。
- 阿部
- いろいろと混ぜ込んでいます。
- 岩田
- 「ただでは転んでませんよ」っていうことですか(笑)。
- 森
- はい。捨てるところ無しです(笑)。
- 阿部
- たとえば今回は
「シャカポン」というオマケがあるんです。
それを実際に遊んだときに
「オマケなのに、なんでこんなに
つくり込んだものが入っているんだろう?」
というのがあったりすると、たぶんそれは
その時につくったものだったりします。 - 岩田
- つくり込んだ「シャカポン」を見たら、
何かの残骸だと思えということですね(笑)。 - 阿部
- はい(笑)。
残骸になりかけていたものを
しっかり磨いてオマケにしました。
- 岩田
- ちなみにその「シャカポン」というのは
どんな仕組みになっているんですか? - 阿部
- これまで『まわるメイドインワリオ』(※9)や
『さわるメイドインワリオ』(※10)でも
オマケが出てきましたけど、
たとえば『まわる』の時は、
ガチャガチャのような
「ガチャコロン」というオマケがありまして。
『まわるメイドインワリオ』=ゲームボーイアドバンス用ソフトとして、2004年10月に発売された瞬間アクションゲーム。シリーズ3作目。
『さわるメイドインワリオ』=ニンテンドーDS用ソフトとして、2004年12月に発売された瞬間アクションゲーム。シリーズ4作目。
- 岩田
- ミニゲームとまではいかなくても、
触るとインタラクティブな反応が
楽しめるようなオマケですね。 - 阿部
- そうです。
それで今回は、ゲームを遊んでいると
「ポンメダル」というものが手に入ります。
で、そのポンメダル1枚につき1回、
ガチャガチャのような「シャカポン」ができて、
カプセルを開くとおもちゃが出てくるんですけど、
そのオマケを240種類用意しました。 - 岩田
- え? 240種類もつくったんですか?
- 森
- 最初は「100個つくろう」という話だったんです。
でも、気がついたら300個になっていまして、
でもメニューの都合で240個に絞りました。 - 岩田
- ・・・なんだかチームのなかに、
本物のワリオがいるような
無茶さ加減ですねぇ(笑)。 - 一同
- (笑)
- 阿部
- ただ、240個が全部、遊べるかというと、
そうではなくって、「ひみつカード」といって
いわゆるゲームの遊びかたの
ちょっとしたコツのようなものが
69種類入っていたり、
あとはキャラクターの紹介カードなども含めて、
全部で240種類なんです。 - 森
- インタラクティブに遊べるものは
100種以上ありますよね。 - 阿部
- そうですね。
- 岩田
- 一時期、わたしは
ウワサを耳にしたことがあったんです。
「開発スケジュールが押しているはずなのに、
阿部さんはこれを全部つくるって
言ってるらしいけど、正気か??」
っていう(笑)。 - 阿部
- もちろん物量が増えて
たいへんなところもあったんですが、
最後の最後で“助っ人”のみなさんに
お手伝いをいただきましたので・・・。 - 岩田
- はい、はい。
その“助っ人”の話は
のちほどお訊きすることにしますね。
でも、かなりダイナミックなことが
起こりましたよねぇ(笑)。 - 阿部
- はい。そうでした(笑)。