ゲーム&ワリオ
1. 「もっと乱れろ」
2. 便利でズルい入れ物
3. エネルギーをかけた16種類のゲーム
4. “オールスター応援状態”
5. 『ゲーマー』
6. 『メイドインワリオ』シリーズの集大成
3. エネルギーをかけた16種類のゲーム
- 岩田
- 今回の『ゲーム&ワリオ』では、
多人数のゲームも含めてWii U GamePadだけで
Wiiリモコンを使わずに遊べるようになっていますが、
そうしたのはどうしてなんですか? - 阿部
- それも「Wii U本体の同梱ソフトをつくる」
という話からはじまったからなんです。
Wii Uのお客さんが全員、
Wiiリモコンをお持ちだとはかぎりませんから。 - 岩田
- ああ、そういうことなんですね。
- 阿部
- ただ、開発してみるとコロンブスの卵というか、
「ああそうか、Wii U GamePad1台あればみんなで遊べるよね」
というバリエーションがいくつかあって、
しかも決してワンパターンじゃなかったんです。
いろんな遊びかたが提案できたのは
Wii U GamePadが多機能だったことが
とても大きかったと思います。
まず大きな画面のタッチスクリーンもついていますし・・・。 - 岩田
- ジャイロセンサーもあるし。
- 阿部
- はい。加速度センサーもあるし、カメラもあるし、
マイクもあるし、ホントに何でもあるんですよね。
だから「そのような多機能をいかに活かすのか?」
ということを考えながらつくりました。
その意味でいうと、思いついたことは
何でもできそうでしたし、
「とりあえず世の中にないものをこの構造でつくりたい」
ということをひたすら考えていました。 - 岩田
- 16種類それぞれのゲームを見ると、
全ゲームのなかでテイストがきれいにそろって、
というわけじゃないですよね。 - 森
- そうですね。
- 阿部
- 『メイドインワリオ』シリーズでいくと決めてからは、
むしろそれをあえて・・・。 - 森
- バラバラにしようと。
- 阿部
- 違いを出すことを意識してやっていきました。
『メイドインワリオ』という入れ物が使えるので、
このゲームはこのキャラクターがつくった、
ということを前面に出すようにしてまとめました。
これまでの『メイドインワリオ』は
「瞬間アクション」でしたけど・・・。 - 坂本
- そもそも今回の構造は
『メイドインワリオ』ではないんです。 - 岩田
- だから一つひとつにボリュームがあるんですね。
今回は、これまでのような
『メイドインワリオ』のプチゲームとは違って、
1個あたりのゲームに
かなりのエネルギーと手間をかけてつくられていますよね。 - 阿部
- そうですね。じつはチームのなかでは、
「ミニゲーム」という言葉も
使わないようにしていたんです。
たぶん「ミニゲーム」と言っちゃうと、
そういう気持ちでつくってしまうと思って、
あえて全部「メインゲーム」という言いかたをして、
「1個1個のゲームを単独で売ってもいいものとして考えよう」
という意識でつくっていました。
そうした意識が強かったので、
16種類のゲームすべてに
それぞれのタイトル画面をつくったんです。
- 岩田
- たしかにタイトル画面もすごく個性的ですよね。
しかも、それぞれの味を感じます。 - 阿部
- もともとイメージしたのは、
むかしのファミコンソフトのパッケージなんです。
あの頃のパッケージって、
とても豪華なイラストが載っていましたけど、
いざゲームのなかを見てみると、
すごくチープな画面だったりしましたよね。 - 岩田
- はいはい(笑)。
- 阿部
- 「その時感じたような
ギャップによるおもしろさを表現したい」と思って、
今回は、デザイナーさんそれぞれのテイストで
自由に描いてもらいました。 - 坂本
- だから、めちゃくちゃこっているんです。
- 森
- しかも、実際にゲームに出てこないものとかも
描かれたりしていますし。 - 阿部
- 「この絵がこのキャラなのか?」とか(笑)。
- 森
- そうそう(笑)。
- 坂本
- たしか5、6名のデザイナーさんで・・・。
- 阿部
- いえ、もうちょっといました。
イズさんにも描いてもらいましたし。 - 坂本
- 僕もタイトル画面を監修させてもらって、
「これはまだまだ足りてない」とか言って
ダメ出ししたりして(笑)。 - 岩田
- まだまだ“こってり度”が足りない、
ということですか(笑)。
- 坂本
- はい(笑)。
- 阿部
- ですから、タイトル画面にかかっているコストは、
おそらく通常のゲームのタイトル画面1個分よりも、
今回の1個1個のタイトル画面のほうが高いと思います。
あれほど手間をかけたタイトル画面は
ほかにあまりないと思いますので、
ご覧になると、たぶんびっくりされると思います。 - 森
- パッケージ並みにかけていますよね。
- 岩田
- なんだかとっても変な自慢をされている感じなんですけど(笑)。
- 一同
- (笑)
- 坂本
- やっぱりそこは、手が抜けないというか、
がんばりどころやなあと(笑)。 - 岩田
- まあ・・・『メイドインワリオ』ですからね(笑)。
- 坂本
- ええ(笑)。
- 森
- しかも、ゲームのステージ選択画面とか、
メニューとかも、それぞれつくりましたので、
単純に16本のゲームをつくったのと
同じような労力がかかっています。 - 岩田
- 流用していないんですね。
- 森
- はい。
- 阿部
- それに、操作系も
タッチスクリーンを使うものであったり、
ジャイロセンサーを使うものであったり、あるいは・・・。 - 森
- 縦持ちだったり、横持ちだったり。
- 阿部
- そんなふうに操作系がけっこう入り乱れているので、
インターフェイスの部分でも、
「どのように誘導すればわかりやすくなるのか」とか、
そういう部分でもけっこう試行錯誤しました。 - 森
- しかも、今回はボリューム満点ですしね。
- 阿部
- そうなんです。
たとえば『ゲーマー』という
ナインボルトのステージがありますけど、
そこには『メイドインワリオ』でおなじみの
プチゲームが入っています。 - 岩田
- 『ゲーマー』1個だけで
『メイドインワリオ』1本分、
みたいなところがあるんでしょうか? - 阿部
- 『ゲーマー』に入っているプチゲームの数は
22種類なので、これまでのシリーズの
10分の1くらいではあるんですけど、
その周りの新しい遊びの部分については、
すごく手間をかけていますので、
それだけでも1本のゲームになっていると思います。 - 岩田
- 1個1個のゲームをつくるのに
そこまで手間がかかる構造だったから、
最後の最後でたくさんの“助っ人”が
必要になったんでしょうね。 - 阿部
- そうなんです。
- 岩田
- では、そろそろその話を訊きましょうか。
“オールスター応援状態”の話を。 - 阿部
- はい(笑)。
- 森
- まさに“スマブラ状態”でしたよね。
- 岩田
- あ、実際に “スマブラ状態”って呼んでいたんですか?
- 森
- いえ、助っ人のみなさんが
“ニンテンドウオールスター!”状態でしたので、
わたしが個人的にそう呼んでいました(笑)。
任天堂のプロデューサーさんや
ディレクタークラスの人たちがいっぱい集まって、
ゲームのアイデアを出し合ってつくるというのは、
「こんなこと、いままでなかったぞ・・・!」
と思いましたから。 - 岩田
- 実際、はじめてのことだったんです。
企画開発部ができて以来、1本のゲームのために、
全制作チームから応援に駆けつけるというのは、
これまで一度もなかったことですから。