ゲーム&ワリオ
1. 「もっと乱れろ」
2. 便利でズルい入れ物
3. エネルギーをかけた16種類のゲーム
4. “オールスター応援状態”
5. 『ゲーマー』
6. 『メイドインワリオ』シリーズの集大成
4. “オールスター応援状態”
- 岩田
- 開発の終盤になってから
“オールスター応援状態”が必要になったのは、
今回のゲームが『メイドインワリオ』なんだけど、
『メイドインワリオ』ではなかった、
ということが大きかったわけですね。 - 阿部
- そうですね。
16個もゲームがあったので・・・。 - 岩田
- 1個1個の仕上げをしっかりしようとすると、
ディレクターひとりでは手が回らないんですね。 - 阿部
- もちろんできあがったゲームもあったんですけど、
最後のタイミングで、全部に手が回らなくなりまして。 - 岩田
- “助っ人”に調整をお願いしたのは、
16本のうちどれくらいだったんですか? - 阿部
- 4本です。
吉川(和宏)(※11)さんには『アロー』というゲームを、
松宮(信雄)(※12)さんには『カンフー』というゲームを、
そして田邊(賢輔)(※13)さん、田端(里沙)(※14)さんには
『アシュリー』と『アイランド』の
2本のゲームを見ていただくことにしました。
吉川和宏=企画開発本部 企画開発部所属。これまで『星のカービィ Wii』や『斬撃のREGINLEIV』などを担当。過去、社長が訊く『斬撃のREGINLEIV』に登場。
松宮信雄=企画開発本部 企画開発部所属。これまで『大合奏!バンドブラザーズ』、『スーパーマリオスタジアム ファミリーベースボール』、『毛糸のカービィ』などを担当。過去、社長が訊く『毛糸のカービィ』に登場。
田邊賢輔=企画開発本部 企画開発部 統括。これまで『ペーパーマリオ』シリーズや『ドンキーコング リターンズ』、『メトロイドプライム』シリーズなどを担当。過去、社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』や、社長が訊く『ドンキーコング リターンズ』、社長が訊く『メトロイドプライム3 コラプション』に登場。
田端里沙=企画開発本部 企画開発部所属。これまで『メトロイドプライム』シリーズ、『ドンキーコング リターンズ』などを担当。過去、社長が訊く『ドンキーコング リターンズ』や、社長が訊く『メトロイドプライム3 コラプション』に登場。
- 岩田
- でも、いろんな人がいっぱい来て、
みんなが口を出すようになると、
現場が混乱しませんでしたか? - 森
- いろんな意味で
すごかったですよ、本当に(笑)。
ただ、阿部さんに何かを聞いても
「そこはもう田邊さんに任せているから!」
みたいに言われてました。 - 阿部
- 僕は、仕事をお願いした以上は
その人たちにお任せするというスタンスでしたし、
むしろ逆に僕が口を出すと
「ややこしくなってしまう」と思ったんです。 - 森
- たしかにそうですね。
- 阿部
- あとデザインのほうも
たくさんの助っ人にお願いしました。
「3Dの表現でとくに磨いたほうがいい」と思ったのが
『スキー』と『アイランド』だったんです。 - 森
- そうですね。
- 阿部
- で、その2本に関しては、
監修をお願いしていた小林さんを中心にした
企画開発部の3Dデザインチームが結成されて・・・。 - 岩田
- 監修役のメンバーがチームをつくって
実際に映像をつくりに行っていたんですね?(笑) - 阿部
- はい。
1か月半くらい、みっちりと。 - 森
- とくに『アイランド』がたいへんでしたよね。
『アイランド』というゲームは、
「しゃぎぃ」というキャラクターを
パチンコのようなもので飛ばして、
島の上に何匹のせられるかを競う遊びなんですけど、
瀬戸際になってから、バトルがありまして・・・。 - 岩田
- バトルというのはなんですか!?
- 森
- 締め切りまで残り
1か月くらいしかない時に、
田邊さんが助っ人で入ってこられて、
「『アイランド』なんだから、リゾート地でしょう?
だったら、自然が豊かなリッチな絵がいいよ!」
と言いはじめたんです。
すると、小林さんたちは
「1か月でスケールを大きくつくりなおすのは
現実的ではない!」
みたいに言い返したりして・・・。 - 岩田
- 森さんはそのバトルを
どんな思いで見ていたんですか? - 森
- 「怖いミーティングしているなぁ」って(笑)。
- 岩田
- (笑)。
助っ人に来たのに
その人たちが真剣にやりあっていたんですね。 - 森
- そうです。本当に真剣でした。
小林さんたちは期限内に納めるために、
「クオリティの高いグラフィックを
コンパクトにつくるために、
全体のサイズをおもちゃと考えて
小さい造形でまとめてはどうでしょう?」
という提案をしたんですけど、
それを聞いた田邊さんは
「それじゃ、ちまちまして豪快さが出ない!
雄大な大自然の中で、しゃぎぃを大空にぶっ飛ばす
バカバカしさが出ないとおもしろくないっ!
ワリオでやってる意味がない!」
みたいなことを言って、
最後は「大自然じゃあー!!」と(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- これだけ聞いていると、田邊さんの人格が誤解されそうですが、
たしかに、現場に入るとすごく熱くなるんですよねぇ、
田邊さんは(笑)。
わたしがハル研究所時代に、田邊さんは任天堂側の担当として
お世話になったので、その時のことを思い出します。 - 阿部
- 田邊さんが、「大自然」と言ったのは、
「壮大なスケールの中で遊ぶことで、
このゲームがもっと楽しくなる」
ということだったんです。
それを表現するためにも
「3Dでなんとかしたい」と。
でも、グラフィックの人たちも、
すごく能力の高い人たちが集まっていましたし
最終的には壮大な雰囲気が出せて、
しかもしっかりとした
クオリティのものになりました。
- 森
- リッチなものになりましたよね。
- 阿部
- むしろ、あのゲームだけに使うのが
もったいないくらいで
「こんなところまでつくり込んでいるんだ」
という感じになりました。 - 坂本
- 僕は、企画開発部のデザイナーさんたちが来る前に、
もちろん『アイランド』も見ていて、
「十分きれいやし、いいんやない」と思っていたんです。
でも、彼らが「こんなんじゃダメです」と言うから、
「そんなもんかな」と(笑)。 - 岩田
- はい(笑)。
- 坂本
- ところが、彼らが手を入れてくれると、
まったく違うものになったんです。
「ああ・・・HDというのはこういうことなんや・・・」と。 - 岩田
- なんだか、HD初体験の『メイドインワリオ』チームが、
最後にやってきたCGの先生たちに、
“脱帽しましたの巻”みたいですね(笑)。 - 坂本
- はい。わたしが間違っていました。
- 一同
- (笑)
- 阿部
- でも、そういった贅沢な使いかたをすることで、
『メイドインワリオ』らしさにもつながっていると思います。 - 岩田
- アンバランスな贅沢という感じですか?
- 阿部
- そうですね。飛ばしているのは、
こんなちっこいキャラですから。 - 坂本
- 「大自然じゃあー!!」とか言いながら
ちっこいキャラを飛ばすんです(笑)。
- 一同
- (笑)
- 阿部
- じつはオマケの「シャカポン」も、
デザイナーさん3人に常駐してもらって、
いろいろと好きなものをつくってもらいました。 - 森
- もともと『鬼トレ』(※15)を
担当していた人たちが来てくれましたしね。
『鬼トレ』=『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』。2012年7月にニンテンドー3DS用ソフトとして発売された、脳活性化ソフト。
- 岩田
- 森さん、そのように
いろんな人が開発にかかわってくると、
自分たちだけの楽園が、
踏み荒らされたように感じませんでしたか? - 森
- いえ、逆に新しい風が吹いたように思いました。
新しく来ていただいた方のアイデアが
「ああ、そうきたかぁ」みたいにおもしろくて、
わたしたちにとっても刺激になりましたし。 - 岩田
- そこがまた『メイドインワリオ』という
器の便利なところで、
全部のテイストをきれいにそろえるというところに
エネルギーを使わなくていいわけですからね。 - 阿部
- そうですね。
とくに「シャカポン」はオマケなので、
「よりバリエーションがあったほうが
おもしろいだろう」
ということなんです。 - 坂本
- 助っ人で入ったデザイナーさんが
まるで狙い澄ましたように
「シャカポン」のアイデアを出してきたことには
正直驚きましたね。
たぶん『メイドインワリオ』のことを
理解していたんだと思いますし、
感性の豊かな人たちだったんだと思います。 - 阿部
- そういえば、
デザイナーさんたちの座席からお互いに
「へー、こんな絵も描くんだ」
と話す声がよく聞こえてきました。 - 岩田
- それまでかかわった仕事では、
描いたことのないような絵を、
今作では描いていたんですね? - 阿部
- そうなんです。だから
「あの人にはこんな引き出しもあったんだ」
という発見もあったようです。 - 坂本
- 僕も現場をのぞきに行ったんですけど、
すごくうれしそうにしてましたよ。
誰がつくったものなのか聞いてみたら
意外だったり、いかにもだったり(笑)。 - 岩田
- まさに「ぽてんしゃる解放」ですね。
- 阿部
- そうですね。
- 坂本
- すごくのびのびしてたよね、みんな。
- 阿部
- はい。だから、本当に助けられました。