「フィットメーター」
1. はじまりは“遠足”から
2. 歩数計から活動量計へ
3. 測定地獄
4. テレビの前にいなくても
1. はじまりは“遠足”から
- 岩田
- 今日は「社長が訊く『Wii Fit U』(※1)」ではなく
「社長が訊く フィットメーター(※2)」
という形でお届けします。
パナソニック(※3)さんと任天堂が協業して
この不思議な活動量計(※4)がどのようにつくられたか、
という話をお訊きできればと思います。
今日はよろしくお願いします。
- 一同
- よろしくお願いします。
『Wii Fit U』=2014年2月1日にWii U用ソフトとして発売予定のフィットネスゲーム。
フィットメーター=2013年10月31日に発売された、『Wii Fit U』の周辺機器。身につけることで1日の消費カロリーなどが測定でき、『Wii Fit U』に転送すると詳細なグラフをWii UやWii U GamePadの画面で見ることができる。なお、この「フィットメーター」を単体で活動量計として使用することはできない(使用する際には、『Wii Fit U』のソフト内でペアリングする必要があります)。
パナソニック=パナソニック株式会社。1935年に設立された家庭用電子機器、電化製品などの生産、販売、サービスを行う総合エレクトロニクスメーカー。大阪府に本社を置く。
活動量計=身につけて使用することで、カラダの揺れなどから、運動の強さを判定して消費カロリーを測定することのできる機器のこと。
- 岩田
- まず、みなさん自己紹介をお願いします。
- 遠山
- 活動量計のサービス企画を担当しています、
パナソニックの遠山と申します。
- 北堂
- フィットメーターの開発を担当しました、
同じくパナソニックの北堂と申します。
活動量計の計測ソフトをつくってます。
- 杉山
- 今作『Wii Fit U』では
プロデューサーを担当しました、
制作部の杉山です。
- 松永
- 『Wii Fit U』のディレクターを担当しました、
制作部の松永です。
- 林
- 『Wii Fit U』のサブディレクターを担当しました、
制作部の林です。
- 岩田
- はい。さっそくですが、みなさん
まず「『Wii Fit』(※5)に活動量計があったら?」
という話はどのようにしてはじまったんですか?
『Wii Fit』=2007年12月、Wii用ソフトとして発売されたフィットネスゲーム。
- 杉山
- あの、僕が言い出したんです。
『Wii Fit Plus』(※6)でMETs(メッツ)(※7)から
各トレーニングの消費カロリー(kcal)が
わかるようになりましたよね。
それとは別に、僕は自転車や登山が趣味なので
その時に汗だくになったぶんの消費カロリーと、
『Wii Fit』で運動したときの消費カロリーを
いっしょに管理できたらいいな、と
ずっと思っていたんです。
『Wii Fit Plus』=2009年10月にWii用ソフトとして発売された『Wii Fit』の続編。種目ごとに運動強度を表す「METs」が表示され、プレイ後に「体重」と「運動時間」から消費カロリーがわかるようになった。
METs(メッツ)=「Metabolic equivalents」の略。運動したり、カラダを動かしたりしたときの強さの単位。動かずにじっとしている状態が1METs。
- 岩田
- テレビの前にいないときの活動量も計って
ゲームといっしょに管理したいと思ったんですね。 - 杉山
- そうです。
それで活動量計に目をつけたのですが、
開発のノウハウがなかったんですよ。
どこに協力を頼むかを探していたところ、
ハード系のチームから
パナソニックさんを紹介されまして。 - 岩田
- ああ、そこから話がつながるんですね。
パナソニックさんとは以前、
ゲームキューブ(※8)をつくったときに
光ディスクの技術でいろいろとお世話になりました。
いまも継続的におつき合いいただいている会社ですが、
遠山さん、最初はどのように話がきたんですか?
ゲームキューブ=ニンテンドーゲームキューブ。2001年9月発売の家庭用テレビゲーム機。
- 遠山
- 最初はやっぱり“遠足”・・・ですよね?
- 松永
- そうですね。
- 岩田
- “遠足”というのは?
- 遠山
- 「美容・健康系の技術を見せてほしい」ということで
任天堂さんのメンバーの方が10名くらい、
うちの会社に来られたんです。 - 岩田
- ああ、こちら(京都)から
パナソニックさん(大阪)まで
出かけていったから“遠足”なんですか? - 遠山
- はい(笑)。
それでいろんな技術をご紹介させていただきました。
もしかしたら、最初から活動量計に目をつけて
いらっしゃったのかもしれませんけど。 - 岩田
- 杉山さん、最初から目をつけていたんですか?
- 杉山
- じつはそうです(笑)。
- 岩田
- でも、いきなり「活動量計を見せてください」
って直球で言うのも気が引けますよね。 - 杉山
- そのとおりです(笑)。
- 岩田
- 「大人数で、いったい何しに来たんだ!?」
と、遠山さんは思われませんでしたか? - 遠山
- 「何をお話しすればいいんだ!?」と
社内でちょっとした騒ぎになりました(笑)。
文化がやっぱり違いますので・・・。 - 岩田
- たしかに任天堂とパナソニックさんでは
文化の違いのようなものがあるのかも知れませんから、
「言葉が通じる人たちが来るんだろうか」と
感じられたんでしょうね。 - 遠山
- はい(笑)。
- 岩田
- でも、きっと活動量計以外にも
面白いものを見せていただいたんですよね。 - 松永
- そうですね。睡眠に関する技術とか
お肌にまつわる技術とか・・・。 - 遠山
- お肌をきれいにする技術なんて、
どうゲームになるのか
わからなかったですけど(笑)。 - 岩田
- まあ任天堂は『顔トレ』(※9)といって
表情筋をトレーニングするソフトを
外部の先生とつくったことがありますから
美容と健康系の技術とはまったく無縁、
というわけでもないんです。
『顔トレ』=『大人のDS顔トレーニング』。2007年8月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売された表情筋トレーニングゲーム。
- 遠山
- ああ、そうなんですね。
我々はそういった発想がないので
こういった技術がどうゲームになるのか、
ちっとも思い浮かばなかったですけど(笑)。