『Wii Sports Club』
1. 「早くWii Uで遊びたい」
2. “おらがクラブ”の戦いに
3. 悔しがる対戦相手のMii
4. よりリアルなテニスに
5. いつの間にかやってくる
1. 「早くWii Uで遊びたい」
- 岩田
- じつは7年前に初代の『Wii Sports』(※1)が出た時、
わたしは会社から帰宅すると、
毎晩のようにムキになって(笑)、遊んでいたんです。
あんなに軽いWiiリモコンを振るだけでも
こんなに汗をかくのかという
不思議な感覚を、当時は味わっていて、
そういうことがかなり長く続いていたんです。
『Wii Sports』=2006年12月にWiiと同時発売された、「テニス」「ベースボール」「ボウリング」「ゴルフ」「ボクシング」の5種目を収録したスポーツゲーム。
- 嶋村
- 汗をかくまで、ですか?(笑)
- 岩田
- もちろん自分では、
Wiiリモコンは軽く振るだけでいい、
ということはわかってるんです。
まあ、少しだけですけど、
本物のテニスをしたこともあったので、
かなり真剣に足でステップを踏んで、
腰を入れて遊んでいました。
それがたぶん、自分なりに
いいストレス解消になっていたんでしょうね。
それで、今日は『Wii Sports Club』について
いろいろと話をお訊きするんですが、
「ああ、久しぶりにあの日々が帰ってくる」
と思うと、とてもわくわくしているんです。
それに、今日は実際に触ることができるんですよね? - 嶋村
- はい。「テニス」と「ボウリング」の2種目が
すぐにでも触れる状態なんですけど、
ゲームの特徴を伝えやすいということで
「テニス」で遊んでいただくことになっています。 - 岩田
- Wii U版の『Wii Sports』ははじめて触るので
とても楽しみにしています。
その模様は、これから
動画で撮影することになっていますので、
これをお読みのみなさんには
「うごく社長が訊く」として
ご覧いただければと思っています。
それでは、みなさん、自己紹介をお願いします。 - 嶋村
- 制作部の嶋村です。
- 岩田
- 嶋村さんは、『Wii Sports』、
『Wii Sports Resort』(※2)に続いて今作も担当して、
『Wii Sports』から逃れられない人なんですよね(笑)。※2『Wii Sports Resort』=2009年6月にWiiモーションプラス対応ソフトとして発売されたスポーツゲーム。「ウェイクボード」や「マリンバイク」「チャンバラ」「アーチェリー」など、バラエティー豊かな12種類のスポーツを南国のリゾートを舞台に楽しめる。 - 嶋村
- はい(笑)。
先に言われてしまいましたけど、
『Wii Sports』シリーズの初代から
『Wii Sports Resort』、それに今回の『Wii Sports Club』でも
ディレクターを担当しました。 - 岩田
- 「また自分が担当するの?」と思いましたか?
- 嶋村
- いえいえ、そんなことはないです(笑)。
やっぱり思い入れのあるソフトですし、
ほかの人にディレクターをお願いして、その結果
「これって『Wii Sports』じゃないな・・・」
と、あとから後悔するよりは、
ぜひ自分でやってみたいという気持ちもあって、
自分から「やります」と手を挙げました。 - 岩田
- ただ今回は、これまでの構造と
かなり変わりましたけど、そのことについては、
のちほどたっぷりお訊きすることにします。 - 嶋村
- はい。
- 牧野
- 企画開発部の牧野です。
今回は、バンダイナムコスタジオ(※3)さんに
開発をお願いしていまして、
最初はコーディネーターの立場で
このプロジェクトに参加しましたが
最終的には“何でも屋”みたいになりまして。
主にネットワーク部分を担当していたんですが、
「ここはこういう仕様にしませんか?」ということも
提案したりしていました。
バンダイナムコスタジオ=株式会社バンダイナムコスタジオ。2012年に設立されたゲームソフトの企画・開発会社。バンダイナムコゲームスの子会社。
- 岩田
- コーディネーターといいながら、
仕様も書いていたんですか? - 牧野
- はい・・・かなり。
- 鈴木
- 企画開発部の鈴木です。
僕も最初はコーディネーターとして、
バンダイナムコスタジオさんの窓口になったり、
海外版のローカライズのために
海外の子会社ともやりとりをしていたんですが、
最終的には、牧野さんと同じように、
自分にできることは何でもやっていた、
という感じになっていました。
- 嶋村
- 牧野さんと鈴木さんのふたりは
途中からは、完全にプランナーの役割も果たしていましたね。
あと、今回の開発は
バンダイナムコスタジオさんにお願いしましたけど、
任天堂のネットワーク開発運用部や、
このふたりの所属する企画開発部、
それに僕の所属する情報開発本部のみんなが
ちょっとずつ手弁当で手伝ってくれたんです。 - 岩田
- 任天堂の社内でも
いろんな人が手伝ってくれたんですね。 - 嶋村
- はい、総力戦でした。
- 牧野・鈴木
- そうでしたね。
- 岩田
- なぜ手伝ってくれたんですか?
- 嶋村
- それはやっぱり
『Wii Sports』だったからなんだと思います。
みんなそれぞれに、このソフトに対する想いが強くて、
「ここまでやらないとダメでしょう」と、
いろんな人が手伝ってくれて、
本当にありがたかったですね。
そのおかげもあって、
なんとかここまでたどり着けたというのが
正直な気持ちです。 - 岩田
- さて、今回の
『Wii Sports Club』をつくるにあたっては、
いくつかのポイントがあったと思います。
まず、「Wiiリモコンプラス(※4)を使って、
『Wii Sports』をつくったらどうなるのか?」
というのがひとつですね。
Wiiリモコンプラス=2010年11月に発売された、ジャイロセンサーを内蔵したWiiリモコン。なお、WiiリモコンにWiiモーションプラスを接続しても、同等の機能が使えるようになる。
- 嶋村
- はい。初代の『Wii Sports』は
ジャイロセンサーの機能が付いていない
Wiiリモコン対応のソフトでしたから。 - 岩田
- それから、
「Wii U GamePadをどこで活用するか?」
というのがひとつ。
そして、前作の時は、
お客さんから強く切望されていた、
「ネットワーク対戦をどうにか実現できないか?」
といった開発テーマがありましたよね。 - 嶋村
- はい。
- 岩田
- そういったテーマに加えて
「売りかたも刷新しよう」という話もあって、
けっこういろいろな要素があったと思います。
もともと初代の『Wii Sports』という
土台があったにしても、
まず何からはじめたんですか? - 嶋村
- いま、岩田さんがおっしゃったように、
切望されていたインターネット対戦を
どう楽しくつくるか、ということに、
まず注力しようと決めました。 - 岩田
- でも、インターネット対戦をするといっても、
プレイヤーが交互に操作する
「ゴルフ」や「ボウリング」であれば
すぐにできるだろうとは思いましたけど、
「テニス」はどうするの? とか、
「ボクシング」はどうするの? とか、
ちょっと考えただけでも、
そう単純にはできないはずなんですが・・・。 - 嶋村
- そうですね。やっぱり、
「テニス」のインターネット対戦に関しては
かなり試行錯誤をしまして・・・。
けっこう前の話ですけど、岩田さんがメールで、
制作部の江口(勝也)さん(※5)に対して
「できるだけ早くWii Uで『Wii Sports』を遊びたい」
と伝えられたことがありましたよね。
江口勝也=情報開発本部 制作部部長。『どうぶつの森』シリーズをはじめ、『Wii Sports』や『Wii Sports Resort』などのプロデューサーも担当。また、Wii Uの開発では、総合プロデューサーを担当し、『Nintendo Land』のプロデューサーも担当。過去、社長が訊く ゲームセミナー2008~『どうぶつの森』ができるまで~、社長が訊く「スーパーマリオ25周年」『スーパーマリオ』開発経験者 篇 その1、E3 2012特別 篇 社長が訊く『Wii U』、社長が訊く『Nintendo Land』に登場。
- 岩田
- はい、ありました。
- 嶋村
- そのメールには、
「ボウリング」と「ゴルフ」の2種目は
インターネット対戦を行うことが必須で、
ほかの種目については「可能であれば」
ということが書かれていましたよね。 - 岩田
- はい。そう書きました。
わたしはプログラマー出身ですから、
何が難しくて、何がそうではないかは、
一応わかっているつもりですから。 - 嶋村
- でも、Wii Uという新しいハードで、
『Wii Sports』を楽しんでいただくことを考えたときに、
切望されていたネットワーク対戦は
ちゃんとやらないわけにはいかないだろうと思いました。
そこで、『Wii Sports』の象徴的な種目である
「テニス」のインターネット対戦を実現させることを、
まず最初の目標にして、それで開発を進めていきました。 - 岩田
- わたしは、その話をはじめて聞いたとき、
「ホントに? それっていつできるんですか?」
と聞き返したくらいなんですけど(笑)。
- 嶋村
- だから「開発が延びるんじゃないか?」
と思われたかもしれませんが(笑)。 - 岩田
- すぐにメドが立ちましたか?
- 嶋村
- いえ、まったく(キッパリ)。
- 一同
- (笑)