『Wii Sports Club』
1. 「早くWii Uで遊びたい」
2. “おらがクラブ”の戦いに
3. 悔しがる対戦相手のMii
4. よりリアルなテニスに
5. いつの間にかやってくる
2. “おらがクラブ”の戦いに
- 岩田
- そもそも「テニス」の
インターネット対戦を実現するにあたって、
どんな困難がありましたか? - 牧野
- ふつうのネット対戦のゲームだと、
ボタンを押した情報を相手に送って、
それで同期させるゲームが一般的なのですが、
ところが今回は、ボタンだけでなく
Wiiリモコンプラスのジャイロセンサー(※6)と
加速度センサー(※7)などが感知した複雑な情報を、
まるごと相手側に送らないといけませんので、
それ自体が新しいチャレンジでした。
ジャイロセンサー=物の角度や回転速度を検出し、姿勢制御などに利用される計測器のこと。
加速度センサー=速度の変化を検出するための回路素子のこと。Wiiリモコンに搭載している加速度センサーでは、三次元の加速度を検出することが可能。
- 岩田
- しかも「テニス」というスポーツは
ひとつのコートで最大4人が
同時に戦うわけですからね。 - 牧野
- はい。だから最初は
「本当にできるんだろうか」と
ものすごく不安だったんですけど
バンダイナムコスタジオさんといっしょに、
いろんなアイデアを出しあうようにしました。 - 嶋村
- いくつかの方式を試すことにしたのですが、
その結果、最終的に採用したのが
バンダイナムコスタジオさんの
通信のプログラマーの方が
提案してくださった方式だったんです。
そのおかげでなんとか実現することができました。
- 岩田
- 手ごたえはどうですか?
- 鈴木
- 違和感なく、
楽しく遊べるようになったと思います。 - 牧野
- ですよね。
- 岩田
- ところで、今回のタイトルが
『Wii Sports U』ではなく、
『Wii Sports Club』になりましたよね。
そうしたのは、どんな背景があったんですか? - 嶋村
- 先ほどお話しした、岩田さんからの
メールが大きなキッカケになっています。
そのなかに「Miiverse(※8)は絶対に活かしてください」
と書かれていましたので、
このソフトのなかで、Miiverseをどう活かすか、
ということを、まず考えてみました。
でも、スポーツゲームの対戦なので、
ふつうにMiiverseの機能を入れると
勝った人は「わーい、勝った!」と
喜びのコメントを書き込むんでしょうけど、
負けた人は「負けて悔しいな」
なんて書くことはほとんどないと思うんです。
Miiverse=Miiを通じて世界中の人たちがつながる、Wii Uにシステムレベルで統合された、ゲームをもっと楽しむためのネットワークサービス。好きなゲームソフトの広場で感想を述べあったり、手描きの絵やコメントを書き込んだりしながら交流できる。
- 岩田
- 勝った人の書き込みばかりで
あふれてしまうわけですね。 - 嶋村
- すると、Miiverseが
殺伐としたものになってしまうんじゃないかと、
そんな懸念がすごくありました。
そもそも、『Wii Sports』のお客さんの中には、
インターネットで対戦ゲームをやったことのない方も
たくさんいらっしゃるのではないかとも思いますし。 - 岩田
- Miiverseが強い人の自慢であふれると、
ネット対戦の初心者の方は
ますます腰が引けてしまいますね。 - 嶋村
- それに、ネットでいっしょに対戦してくれる
身近な友達がいないような人に対して、
「みんなで『Wii Sports Club』をやりましょう」
と言っても、なかなか難しいと思いました。
そこで考えたのが
“都道府県別の仲間”というくくりです。
どんな人にも出身地や住んでいる場所がありますので、
まず最初に、自分が住んでいる地域の
スポーツクラブに入会する、
というかたちにしてはどうだろうかと考えました。 - 岩田
- それで、『Wii Sports U』ではなく
『Wii Sports Club』になったんですね。 - 嶋村
- そうなんです。
都道府県別にスポーツクラブをつくれば、
県別対抗のようなものもできますし。 - 鈴木
- 日本では県別ですが、
たとえばアメリカでは州ごとのクラブに
所属することになります。 - 岩田
- アメリカは、大学やプロスポーツに代表されますけど、
州や都市で競うスポーツが盛んですよね。 - 嶋村
- はい。で、日本では
甲子園のように県別で盛り上がると。 - 岩田
- そもそも人って、
自分の町や自国のチームを身びいきしますからね。 - 嶋村
- そこで“おらがクラブ”の戦いにしようと考えました。
- 岩田
- ちなみに、“おらがクラブ”に入会すると
どんなことが起こるのか、
具体的に教えてもらえますか? - 嶋村
- それは牧野さんが説明したほうがいいですよね。
- 牧野
- はい。
大きく分けるとふたつありまして、
ひとつが「クラブランキング」です。
たとえば東京クラブが、
「テニス」でどれだけの勝率を収めていて、
全国で何位かというランキングを見ることができます。
しかも、そこそこのリアルタイムで
ランキングが動くようになっています。
- 岩田
- だから、見るたびに
ランキングが変動するようになってるんですね。 - 牧野
- はい。
- 岩田
- でも、県別対抗にすると、
すごくたくさんの人がいるところと、
あまりいらっしゃらないところがありますよね。 - 牧野
- そこは、単に勝ち数で競うと
やっぱり地域差が出てしまいますので、
勝率で競うようにしました。 - 岩田
- すると、人口が少ないクラブのプレイヤーは
責任重大ですね(笑)。 - 牧野
- はい(笑)。でも、勝てば、
一挙にランクアップすることもできますし。 - 鈴木
- 負ければ、その逆になるんですけど(笑)。
- 牧野
- もうひとつが、自分の所属しているクラブの
全メンバーによる「平均スコア」です。
たとえば「ボウリング」だったら、
クラブ全体の平均で
180くらいのスコアが出ているということがわかります。
それを見た自分が130くらいしか出せていないとしたら、
「もうちょっとがんばろう」と・・・。 - 岩田
- やる気につながるんですね。
- 牧野
- はい。それに、平均スコアだけではなく、
ほかにも「それまでに倒したピンの累計本数」など、
いろんな数値を見られるようにしています。 - 岩田
- つまり、あまりうまくない人でも、
何度もプレイすることで
スコアに貢献できるようなものもあるんですね。 - 牧野
- そうなんです。この累計本数、
デバッグをしているときには何十万本という
ものすごい数が出ていたんですが、
サービスの開始後に、とあるスコアだけ
異常に高いクラブが出てくるんじゃないかなと期待しています。
そして誰かが「うちのクラブ平均は×××だぞ」と
Miiverse上で自慢をして、
盛り上がってもらえると良いなぁと思っています。 - 岩田
- そのように、地域別で対抗したほうが
スポーツゲームとの相性がいいということなんですね。 - 嶋村
- そう思います。
ですから、郷土愛にあふれる熱いコメントで
Miiverseがいっぱいになればうれしいですね。 - 牧野
- そこで、たとえばクラブランキングを見たときに、
自分のクラブよりも
仮に東京クラブが上位にいたとして、
そんな時は
「今日のライバルは東京クラブだ!
みんなで挑もうぜ!」
とMiiverseに投稿してもらうことで、
クラブ内で盛り上がってもらえたらな、と思っています。