『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』
1. 「星をひとつ、丸ごとつくる」
2. 小説のようなプロット
3. ゆるくつながるネットワーク
4. 声もかれるほどに
5. 車を買うような感覚でドールを
6. タイトルに込められた想い
7. “豊かなゲーム”
3. ゆるくつながるネットワーク
- 岩田
- ここまで話を訊いた限りでは、
開発がとても順調に進んできたような
印象がありますけど、
じつはそうじゃなかったんですよね。 - 横田
- はい。開発の途中で
ネットワーク対応にすることになりまして、
主人公をアバター(※12)に変更したり、
それに適したストーリーに書きなおすという
“大工事”をすることになりました。
アバター=自分の分身となる主人公キャラクターのこと。『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』では、性別、顔タイプ、ボディサイズのほか、 肌(肌色、そばかす、頬、傷あと、ホクロ)、髪型や髪色、瞳の形や色、メイク(アイシャドウカラー、リップカラー、フェイスペイント)、ボイスなど、さまざまな特徴を自由に組み合わせて自分のキャラクター(アバター)を作製できる。アバターについてくわしくは、公式サイトを参照。
- 岩田
- 開発の途中での“大工事”・・・
そのネットワークに対応することにしたのは
どのようないきさつがあったんですか? - 横田
- もともとRPGは
ひとり遊びのゲームだったと思うんです。
でも今回は、オープンワールドの世界のなかで
まったくひとりで遊んでいると、
「自分だけしかいない」というような孤独感を、
少し感じるようになったんです - 岩田
- とくに今回は、巨大な世界で、
しかも長く遊べるようになっていますから・・・。 - 横田
- そうなんです。そこで、この世界を
もっと生き生きとした空間にするためには、
ネットワーク対応にして
「誰かとつながっていたほうがいいのでは」
という話になったのが、事の発端です。
ところが、ネットワークに対応しようとすると、
ほかのお客さんとコミュニケーションをとるのが
ちょっと怖いという人もいて・・・。
じつは僕もそうなんですけど(笑)。 - 竹田
- 僕もそうです(笑)。
ヘタなプレイをすると、上手なプレイヤーさんから
怒られちゃうんじゃないかという
怖さがあるんですよね。 - 横田
- そこで、“ゆるくつながる”ことで
誰が遊んでも怖くないネットワークRPGを
めざすことにしました。
その“ゆるくつながる”というのは、
とくに小島さんがとても強く
こだわられたところでもあったんですけど・・・。 - 岩田
- “ゆるくつながるネットワーク”ですか。
- 横田
- はい。
- 岩田
- いや・・・小島さんを見ていると、
知らない人とつながるのが怖い、
という顔には見えないんですけど(笑)。 - 一同
- (笑)
- 横田
- でも、小島さんはすごく繊細なんですよ。
- 小島
- そう、じつは繊細なんです(笑)。
- 岩田
- (笑)。でも、たしかに
ネットワークでは、いろんな人が参加しますから、
ごく一部ですけど、人が不愉快に感じるようなことを
喜ぶような人がなかには居て、
そういう人と出会いたくないという理由で
ネットワークゲームを敬遠する方も
いらっしゃいますよね。 - 小島
- そうなんです。
悪意のあるプレイヤーの方と出会うのは
もちろんイヤなんですけど、
逆に、善意でコミュニケーションをとろうとされる
プレイヤーの方と出会ったときも、
こちらの気分次第では
「面倒だな」と思ってしまうこともありますし。 - 岩田
- いくら“善意”であっても、
“おせっかい”に感じられることもありますし、
どう接すれば快適に感じていただけるのかは、
人それぞれですからね。 - 小島
- でも、だからといって、
まったくひとりで遊んでいると
ものすごく孤独を感じたりするんです(笑)。 - 岩田
- 人とコミュニケーションをとるのは面倒、
だけど、ひとりで遊ぶのはさびしい、というのは、
「どっちがいいの?」という話ですね(笑)。 - 小島
- はい。わがままな話ですよね(笑)。
これは個人的な体験なんですけど、
僕がまだゲーム業界に入る前の話で、
家族が外出しているときに、ひとりで遊んでいると、
すごい孤独を感じたことがあったんです。
「こんなことをやってていいんだろうか」って(笑)。 - 岩田
- あははは、ゲームがこんなに好きなのに(笑)。
- 小島
- ところが、居間に家族がいて、
隣の部屋から、その気配を感じるだけでも、
なんとなく安心感があったんです。
そのような“安心感”を、
ネットワーク対応にすることで
なんとか表現できないかなと思いました。 - 岩田
- なるほど。そこに原点があったんですね。
- 小島
- なので、ネットワークを使って、
ほかのプレイヤーと直接やりとりはしないんですけど、
この世界のどこかに
同じゲームを遊んでいる人がいる、ということが
感じられるようなものをめざしました。 - 岩田
- それが“ゆるくつながる”ということなんですね。
- 小島
- そうです。
それに、高橋のロールプレイングゲームは
ひとりで集中して遊びたい要素を
多分にはらんでいますので
それをじゃましたくないとも思ったんです。 - 岩田
- 具体的にはどのように、
“ゆるく”つながるんですか? - 横田
- Wii Uがインターネットにつながっていれば、
自動的にオンラインになるんです。 - 岩田
- 一般的にオンラインというと、
「つなぎますか?」と聞かれたりしますけど、
気がついたらつながっている状態になるんですね。 - 横田
- そうです。
で、自分も含めて最大32人のプレイヤーと
ランダムでつながるようになっているのですが、
普通にフィールドを歩いていても
基本的につながった相手の姿は見えないですし
何をやっているかもわからないんです。 - 岩田
- でも、うっすらとつながっていることが
リアルタイムでわかるんですね。 - 横田
- はい。
たとえば、敵を倒してアイテムをゲットして、
「これは要らないな」というときには
「ほしい人は?」と、ほかのプレイヤーに問いかけて
希望する人に渡すことができるんです。
- 岩田
- すると、希望する人のところに
そのアイテムを届けられるんですね。 - 横田
- そうです。
で、ときたまミッションが発生したりします。
その32人のプレイヤーに対して
「昆虫を10匹、倒してこい」とか、
「くだものを10個、見つけてこい」とか・・・。 - 岩田
- 「ストーリーを進めるのに夢中だから、
そんなのやりたくない」という人は
どうすればいいんですか? - 横田
- 無視してもらえば大丈夫です。
でも、自分は何もしなくても、
昆虫などの数字が減っていくのがわかるんです。 - 岩田
- 無視をしても、知らない誰かが
虫取りをしているのがわかるんですね。 - 横田
- そうです。しかもそのミッションを達成すると、
全員にご褒美がもらえます。 - 竹田
- あの・・・そのミッションに参加しなくても、
32人全員がご褒美をもらえるんですか? - 横田
- 全員もらえます。
- 竹田
- ああ、それはうれしいですね(笑)。
- 横田
- そのようなミッションを達成すると
特別なクエストが発生することもあって、
そのときだけは実際に4人のプレイヤーが集まって、
たとえばボス戦ができたりします。 - 岩田
- そのときに、初めて
つながっている人の姿が見えるようになるんですね。 - 横田
- そうです。そのときに
自分のつくったアバターが生きてくるんです。 - 岩田
- RPGはひとり遊びとして
ずっと発展してきましたけど、
今回の『ゼノブレイドクロス』では
同じように遊んでいる人が、ゆるくつながって、
それがどんな感じなのかを
味わってもらおうというチャレンジなんですね。 - 横田
- はい、チャレンジです。
ゆるくつながるので、面倒ではないですし、
冒険しているほかの人たちの存在を
リアルタイムで感じられるので、さびしくないです。
ですから、怖がらずに
ぜひつながってほしいと思います。