『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』
1. 「星をひとつ、丸ごとつくる」
2. 小説のようなプロット
3. ゆるくつながるネットワーク
4. 声もかれるほどに
5. 車を買うような感覚でドールを
6. タイトルに込められた想い
7. “豊かなゲーム”
5. 車を買うような感覚でドールを
- 岩田
- 今回はオープンワールドという
大きな柱がまずあって、
ネットワーク対応にもなったわけですが、
高橋さんのなかには、他の柱もあったんでしょうか? - 高橋
- はい。最初のころ、
「そろそろロボットで戦いたいね」
という話を、小島としていたんです。
- 小島
- そうでしたね。
- 岩田
- 前作では
「高橋さんのゲームなのに、
どうしてロボットに乗れないんだ?」
という声も聞かれましたからね(笑)。 - 高橋
- ええ(笑)。
ですから、オープンワールドとロボットの
2つを大きな柱にして、
その周りに、いろいろと遊びを乗せていく
というつくりにしました。
なので、オープンワールドも
とても高いハードルではあったんですけども、
ロボットとキャラクターを両立させつつ、
ゲームのなかに盛り込んでいくということも、
もうひとつの高いハードルだったかなと思います。 - 小島
- 今回のロボットは、
「ドール」と呼んでいるんですけど、
それを手に入れると、この広大な世界のどこにでも
自由に行けるようになって、
ものすごく気持ちがいいんです。 - 横田
- その気持ちよさを出すためにも、
ものすごく広いフィールドが活きてきたんです。 - 岩田
- ああ、なるほど。そういう意味でも
「オープンワールド」と「ドール」は
とても合っていたんですね。 - 小島
- そうなんです。
- 岩田
- でも、ゲームバランスが
重要になりますね。 - 小島
- バランスをとろうという気持ちは
じつは僕のなかにはあまりありませんでした。 - 岩田
- (笑)
- 小島
- 僕としてはドールを手に入れたあとは、
とにかく気持ちよく遊べたほうがいいと思いました。
人間だと倒すのにすごく時間がかかる敵も、
ドールだと一撃で倒せたりとか、
それくらい振り切っちゃおうと。 - 岩田
- ドールを手に入れることで
スーパーになった自分を
気持ちよく味わえるわけですね。 - 小島
- でも、その代わり、手に入れるためには
ちょっとハードルを上げました。
ものすごく高価にしまして。 - 岩田
- どうして高くしたんですか?
- 横田
- ドールを買うときは
「実生活で新車を買うような感覚になってほしい」
ということを、みんなで話していたんです。
- 岩田
- 地道にお金を貯めないと
ドールは簡単に手に入らないんですね。 - 横田
- はい。それに、高価なドールであっても、
かなり強い敵に出会うと
一撃で破壊されることもあるんです。
すると、新しいドールを
買いなおさなきゃいけない場面も出てきます。 - 岩田
- それってけっこう、つらくありませんか?
- 横田
- そこで「ドール保険」をつくりました(笑)。
ドールが破壊されても
3回目までは無料で修理してくれるんです。 - 岩田
- なんだか、ものすごくリアルな話ですね(笑)。
- 小島
- でも、4回目以降は保険がきかなくなるので、
多額の修理費が必要になってしまいます。
僕としては、ドールが壊れてしまったら、
そこでパーにしたかったんです。
一度でも破壊されたものは、もう二度と返ってこない、
というふうにしたかったんですけど・・・。 - 岩田
- 小島さんとしては、本物の車のように
ドールを大切に扱ってほしかったんですね。 - 小島
- そうなんです。
ところがスタッフのなかから
「買いなおせというのは、いくらなんでもひどすぎる」
という声があがりまして・・・。 - 高橋
- それでできたのが
「ドール保険」だったんですけど、
さらに、“保険の保険”のシステムもあるんです。 - 岩田
- “保険の保険”システム、ですか?
- 高橋
- 「ジャスト脱出」と呼んでいるんですけど、
バトル中、ドールのHPがゼロになって破壊されたときに
タイミングよくボタンを押すと、
保険を使わずに修理をしてくれるシステムなんです。 - 岩田
- だから、“保険の保険”なんですね(笑)。
- 小島
- はい。バトル担当のリーダーに
島本(誠)(※14)というスタッフがいるのですが、
彼はすごくやさしい男なんです。僕とは違って。
島本誠さん=モノリスソフト開発部所属。スクウェア(現・株式会社スクウェア・エニックス)時代、『クロノ・トリガー』(1995年発売)や『ゼノギアス』(1998年発売)でバトルプランナーを担当。モノリスソフトに移籍後、『ゼノサーガI・II』(2006年発売)ではバトルプランニングディレクターを担当し、本作『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』では、『ゼノブレイド』から引き続きリードバトルデザインを担当。
- 岩田
- はい(笑)。
- 小島
- それで、彼に対して
「ドールが壊れたら、それっきりにしてくれ」
と、きつく言ってたんですけど・・・
“保険の保険”の仕様を入れていたんです、勝手に。 - 一同
- (笑)
- 竹田
- 自分のようにヘタなプレイヤーからすると、
島本さんを拝みたくなりますね(笑)。 - 小島
- それは、彼のやさしさのおかげだと思ってください。
- 竹田
- はい(笑)。
- 岩田
- 先ほど「ロボットをもうひとつの柱にする」
という話がありましたけど、
かなりこだわってつくられた印象ですね。 - 小島
- はい。もともと僕は
同じフィールド上でロボットと人を、
どうしても出したかったんです。
かつて高橋が手がけた『ゼノギアス』(※15)・・・
その当時の僕は、いちユーザーとして
このソフトで遊んだのですが、
ロボット専用のマップがあったんですけど
そこでは人で遊ぶことができなかったんです。
『ゼノギアス』=1998年2月にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたRPG。
- 岩田
- 当時のハードでは、不可能だったんですね。
スケールが違う世界になりますから。 - 小島
- そうなんです。
でも、僕はそれを遊んだときに、
いつかロボットと人間をいっしょに
出したいと思うようになりまして・・・。 - 岩田
- それが今回、叶ったんですね。
- 小島
- はい。ようやく叶いました。
20世紀の時代に
「いつかやりたいな」と思ってから
十数年が経って、ようやく実現できたのが
『ゼノブレイドクロス』のドールなんです。