『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』
1. 「星をひとつ、丸ごとつくる」
2. 小説のようなプロット
3. ゆるくつながるネットワーク
4. 声もかれるほどに
5. 車を買うような感覚でドールを
6. タイトルに込められた想い
7. “豊かなゲーム”
6. タイトルに込められた想い
- 岩田
- それでは最後に、お客さんに対して
「ぜひここに注目してほしい」
というところを話していただけますか?
高橋さんは最後にして、竹田さんからお願いします。 - 竹田
- お客さんへのメッセージにはならないんですけど、
自分としては、遊ぶのがすごく楽しみなんです。
- 岩田
- ご自身でシナリオを書いたのに、ですか?
- 竹田
- はい。
自分のなかにある、かつてのRPGのイメージだと、
メインシナリオがまずあって、
そこでキャラクターやドラマなどが語られてしまって、
本筋の外側に話が広がるようなことは
ほとんどなかったように思うんです。 - 岩田
- 一本道のものが多かったですからね。
- 竹田
- ところが、前作の
『ゼノブレイド』を実際に遊んでみると、
自分が書いたシナリオの外側に、
キャラクターや世界観などが
とても豊かに表現されていてものすごく驚きました。
「メインシナリオなんて、『ゼノブレイド』のなかの
ごく一部に過ぎないんだな」ということが
すごくわかったんです。 - 岩田
- メインシナリオ以外にも
いろんなことが豊かに表現されていたんですね。 - 竹田
- はい。たとえば『ゼノブレイド』には
ゾードというボスがいまして、
僕が書いたメインシナリオでは、
その背景について、あまりふれなかったんです。
ところが、実際にゲームで遊んでみると
居住区の人の話を聞くだけで、
ゾードの衝撃的な正体がわかったりすることもあって、
「これは、メインシナリオだけでは描けない
世界の広がりだなあ」と感服するとともに、
「それを組み込めてしまうセンスもすごいなあ」
と思いました。 - 岩田
- つまり、竹田さんが書いたネタを元に
モノリスソフトの開発者が
その世界を広げてくれたんですね。 - 竹田
- そうなんです。だから、あえて今回は
メインシナリオですべてを語りきらなくてもいいと思いました。
広がる余地のあるストーリーをつくっておけば、
モノリスソフトの人たちにきっと拾ってもらえるはずだ、
と考えたんです。
しかも今回は『ゼノブレイド』を
はるかに超えるボリュームになりましたので、
そのぶん、もっと巨大なものが
外側に待っているんだろうなと思うと、
自分のやったことなんて忘れて、
『ゼノブレイドクロス』が楽しみでしかたがないんです。
『ゼノブレイド』をプレイして感じた衝撃を
はるかに超えた楽しさが待っているんだろうなって・・・。
・・・なんか、「ここを見てほしい」というより
自分が見たい話になって、申し訳ありません(笑)。 - 岩田
- いえいえ(笑)。
初めて加わった兵頭さん、いかがですか? - 兵頭
- わたしが今回、このプロジェクトに参加して、
印象に残っているのが、小島さんの言葉なんです。
「昔のRPGというのは、
“透明の壁”のようなものがあって、
その向こうに行けないのはイヤじゃん」と。
- 岩田
- でも今回は、オープンワールドにすることで
“透明の壁”を意識することがなくなったんですよね。 - 兵頭
- そうです。わたし自身、
その言葉にすごく納得し、共感できまして、
“透明の壁”をなくそうというのは
技術的な面の話ではあったんですけど、
シナリオにも応用できると思いました。
たとえば、街に入ったとき、そこの住人に
「ここは○○の街です」と、ストレートに言わせるより
「ここはわたしが好きな街です」と言わせたほうが
その住人のバックグラウンドも想像できて、
広がりのあるセリフになると思いました。 - 岩田
- セリフでも“透明の壁”をなくそう
と考えたんですね。 - 兵頭
- はい。そうすることで、
セリフからも、そのキャラクターの性格が
垣間見えるようになればいいなと思いました。
ですから、キャラクターのセリフひとつにも、
広がりやこの世界の豊かさが感じられるように、
心を込めて表現しましたので、
そこにも注目して遊んでいただけるとうれしいです。 - 岩田
- ありがとうございます。
横田さんは? - 横田
- ちょっと話がそれるんですけど、
『ゼノブレイドクロス(XenobladeX)』という
タイトルの“クロス(X)”に、
とても強い想いを込めているんです。
“クロス(X)”は、一般的に、
「未知数」や「未知なるもの」を象徴する記号なのですが・・・。
- 岩田
- 数学の方程式の“変数”として
よく使われる“エックス(X)”のことですね。 - 横田
- はい。海外版のタイトル名称も、
“未知なる異星人”や“未知なる惑星の探索”という
意味を込めて、『Xenoblade Chronicles X(エックス)』と
つけられているのですが、日本版では、
人々が偶然出会えるクロスロード(交差点)のような
場所になってほしいという想いから、
“クロス”と呼ぶようにしました。
今回はオンラインに対応しましたので、
プレイヤーのみなさんの間に、あたかも
交差点で出会ったかのような交流が生まれると思いますし、
ゲームのなかには、未知なる異星人がたくさん登場して、
彼らと人類の交流もすごくおもしろいんです。
たとえば、その異星人とかかわるようなことをしないと、
彼らは街に来てくれなかったりします。 - 岩田
- つまり、放っておくと
異星人との交流が楽しめないんですね。 - 横田
- そうなんです。なので、
プレイヤーのさじ加減ひとつで、
楽しみかたも変わってくるゲームになっています。
それに、“クロスロード(交差点)”という意味では、
バトルをするときに、ドールと人間が
いっしょに戦闘することもできますし、
この“クロス”というタイトルに
このゲームの魅力を集約することができたと思っています。 - 岩田
- 『2』ではなく、『クロス』にしたのは
そのような想いが込められているということですね。 - 横田
- はい。なので、『クロス』する楽しさを
たっぷり味わっていただきたいと思います。 - 岩田
- 小島さんはどうですか?
- 小島
- なかなか1個に選べないんですけど・・・。
- 岩田
- なにしろ『ゼノブレイドクロス』は巨大ですからね。
- 小島
- マップとイベントとバトルと音楽と・・・。
- 岩田
- では、音楽の話をぜんぜん訊いてないので、
その話をお訊きしましょう。 - 小島
- はい。そもそもゲームミュージックは、
ジャンルとして確立するくらい、個性的なものですし、
特定のファンの方もいらっしゃいますよね。 - 岩田
- はい。
- 小島
- で、僕もゲームミュージックは
もちろん好きなんですけど、
今回は鉄板なゲームミュージックを使うのではなく、
「音楽でも新しいチャレンジをしよう」
という話を、高橋としていたんです。 - 高橋
- そうでしたね。
- 小島
- そこで、候補に挙がったのが、
テレビのドラマやアニメの音楽を中心に活躍されている
作曲家の澤野弘之さん(※16)だったんです。
高橋はもともと、
澤野さんの音楽のファンなんですよ。
澤野弘之さん=日本の作曲家。ドラマ・アニメ・映画など映像の音楽活動を中心とし、その他にもアーティストへの楽曲提供・編曲なども行う。代表作に、『医龍』シリーズ(ドラマ)、『機動戦士ガンダムUC』『進撃の巨人』『アルドノア・ゼロ』『七つの大罪』(以上、アニメ)、『自虐の詩』『陰日向に咲く』(以上、映画)など多数。本作『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』ではサウンドを担当。
- 高橋
- そうです。
- 小島
- なので「澤野さんの音楽はすごくいいから、
これでいこう」という勢いだったんです。
僕自身も澤野さんの曲が好きなんですが、
はたしてゲームに合うかどうか、
確信がもてないところもあって・・・。 - 岩田
- でも、そこはチャレンジしようと?
- 小島
- そうなんです。そこで
澤野さんにお願いしたところ、
ものすごい熱量で返していただけたんです。
ご本人は「ゲームでそんなに遊ばない」
とおっしゃってたんですけど、
たとえば戦闘のときは
「ボーカルが流れる曲にしたい」とか
澤野さんのほうから斬新な提案をいただいたり、
尋常じゃない量の曲数をお願いしたんですけど
「わかりました」と、即答で受けていただいたり・・・。 - 岩田
- できた曲はいかがでしたか?
- 小島
- めちゃめちゃピッタリでした(笑)。
- 岩田
- (笑)
- 小島
- できてきた曲をゲームに乗せてみたら
これがものすごくよかったんです。
なので、今作も、音楽を楽しみながら
遊んでいただきたいと思っています。