『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』
1. 「星をひとつ、丸ごとつくる」
2. 小説のようなプロット
3. ゆるくつながるネットワーク
4. 声もかれるほどに
5. 車を買うような感覚でドールを
6. タイトルに込められた想い
7. “豊かなゲーム”
7. “豊かなゲーム”
- 岩田
- では最後に、高橋さんから、
「ここを見てほしい」という話をお願いします。 - 高橋
- 今回は、モノリスソフトにとっては
初めてのHD(※17)タイトルということで、
まずチームを編成し、研究開発からはじめました。
そこで、「今回の柱はオープンワールドでいこう」
ということを、最初に決めて、
「ロボット(ドール)も柱にしよう」ということで
開発を進めてきました。
ところが、開発の途中で
“ゆるくつながるオンライン”という
新しい命題が生まれて、
主人公もアバターに変更することになり、
それまでに構築してきたいろんなものを
いったん全部捨てなきゃいけなかったんです。
HD=High Definition(ハイデフィニション)の略。テレビなどにおける高解像度(高精細、高画質)のこと。映像のピクセル数が多く、720本以上の走査線数を保持し、かつアスペクト比が16:9であることが条件。
- 小島
- (しみじみと)捨てましたねえ。
- 高橋
- そこから再スタートをして、
新しい器に適したものにつくりなおしたのですが、
そのときのスタッフの情熱はすさまじかったですし、
みんなの血と涙の結晶のようなものが、
最終的にこのゲームに結実したと思っています。 - 岩田
- 前作は“背水の陣”でつくられ、
“血と涙の結晶が結実”したのが今作なんですね。 - 高橋
- はい。前作については、
先日の「社長が訊く」でもお話ししましたけど、
タテ軸(ストーリー)とヨコ軸(ゲームシステム)の
バランスをとったとはいえ、かなりリニア(直線的)な
ロールプレイングゲームだったと思うんです。 - 岩田
- 一本道ではないですけど、
遊ぶべき方向が、ほぼ決まっていたんですね。 - 高橋
- でも、今回は違います。
どちらかというとヨコ軸重視の、
ノンリニア(非直線的)なゲームをめざして
モノリスソフトの総力をあげてつくりました。 - 岩田
- オープンワールドにしたことで
ノンリニアなゲームになり、
その結果、自由度がすごく増したんですね。 - 高橋
- はい。さらに、“豊かさ”を
かなり表現できたと思います。
たとえばメインストーリーだけだと、
『ゼノブレイド』よりも短かったりします。
なんですけど、クエストも含めた
全部のストーリーの量になると、
『ゼノブレイド』よりもはるかに多い
テキスト量になっています。 - 岩田
- ふたりの脚本家にも手伝っていただけたわけですしね。
- 高橋
- しかも、キャラクターがそれぞれ立ち、
そこに付随してくる冒険、探索、育成といった要素が
一気に乗っかってきていますので、
プレイされる方によって、体験する要素が
それぞれ違ってくると思っています。
たぶん、思い出も人によって違ってきますので、
ぜひそこを楽しみながら遊んでほしいですね。 - 小島
- それは僕も、強く言いたいことで・・・。
今回はすごく“能動的に遊べるゲーム”なんです。 - 岩田
- それはすごく感じます。
“受動”ではなく、“能動”なんですよね、遊びが。 - 小島
- このゲームにはいろんなことを詰め込んでいますので、
そのなかからお客さんが自分の好みで選択をして、
「あそこへ行こう」とか、「これをしよう」とか、
自分で決めてほしいゲームなんです。
なので、高橋も言ったように
遊ぶお客さんによって、
体験や思い出がまったく変わると思います。
誰がやっても、同じ結果が
得られるようなゲームではないんです。
- 岩田
- 人によってさまざまな体験ができるほど
“豊かなゲーム”になったんですね。 - 小島
- はい。そこがこのゲームの
いちばんの良さだと思っています。 - 高橋
- そこは自信があるよね。
- 小島
- はい、ものすごく自信があります。
- 岩田
- ありがとうございます。
今回の『ゼノブレイドクロス』が
とても“豊かなゲーム”になったのは
たぶん、現場で交わされた
アイデアに対する会話の量もまた、
ものすごく豊かだったからだと思うんです。
もちろん高橋さんが、ものすごいエネルギーで、
まず下地のようなものを考え、
大きな流れをアウトプットしてきたことは
間違いないんでしょうけど、
高橋さんがすべてを考えたわけでもないんですよね。 - 高橋
- まったくそのとおりです。
- 岩田
- このゲームにかかわる、いろんな人たちの
ものすごくたくさんのアイデアが、
高橋さんが考えた下地の上に足されていって、
「これはこの世界に入れてオッケー」
「これはこの世界には合わない」ということを、
ある基準を元に、おそらくその多くは
小島さんが判断しながらつくってきたんですね。 - 小島
- はい。
- 岩田
- ですから、
みなさんが出したアイデアの総量がとても多くて、
しかも正しく取捨選択をして、
いいものを詰め込めたからこそ、
これほど“豊かなゲーム”に結実できたんでしょうね。 - 小島
- 本当にそうだと思います。
やっぱり高橋の色だけで、
全部が染め上げられているわけではないんです。
スタッフのいろんなカラーが、各所で出ていて・・・。
ただ、それが好き勝手にバラバラというのではなくって、
最後に高橋が、世界全体の調和を考えながら、
きれいにまとめているんです。
しかもひとつの色だけでなく、いろんな色がのっている、
というのが、モノリスソフトのゲームですし、
それができるのが、自分たちの良さだと思っています。 - 岩田
- そういうことは、きっと
お客さんにも伝わるんでしょうね。 - 小島
- はい。たぶん、触ってくださるお客さんにも
わかっていただけると思います。
「あ、ここのシナリオを書いてる人って、
こういう人なんじゃないかな」とか、
開発者の顔が透けて見えるゲームがたまにあるんですけど、
僕はそういうゲームがすごく好きで、
『ゼノブレイドクロス』も
そういうゲームになるといいなと思います。 - 岩田
- はい、ありがとうございました。
それでは、最後にみなさんに
どうしてもお伝えしたいことがありまして・・・。 - 高橋
- はい。
- 岩田
- NOA(Nintendo of America)の
レジー(※18)さんから聞いた話なんですけど、
先日、Wii Uで開発中の『ゼルダの伝説 最新作』は
2015年に出ませんということ(※19)を、
青沼(英二)(※20)さんが動画で発表しましたよね。
レジー=Reggie Fils-Aime。任天堂のアメリカ現地法人、Nintendo of Americaの社長。
Wii Uで開発中の『ゼルダの伝説 最新作』は2015年に出ませんということ=2015年3月28日に公開されたYouTube動画「Wii U『ゼルダの伝説 最新作』開発状況に関するお知らせ」のこと。プロデューサーの青沼英二から『ゼルダの伝説 最新作』の開発状況について報告がなされ、「2015年内の発売を第一の優先事項とはせず、最も完成度の高い究極の『ゼルダ』ゲームにすることを第一優先にさせていただきたい」と発表した。この動画についてくわしくは、YouTube任天堂公式チャンネルを参照。
青沼英二=情報開発本部制作部所属。『ゼルダ』シリーズの総合プロデューサーを担当し、過去、社長が訊く Wiiプロジェクト Vol.5『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』編、社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』開発スタッフ篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』携帯機ゼルダの歴史篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』オリジナルスタッフ篇その1、社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』オリジナルスタッフ篇その2、社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』開発スタッフ篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』第1回:「Wiiモーションプラスがもたらした新操作」篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』第5回:「濃密な空と町」篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』第6回:「濃密なシナリオと演出」篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』第8回:「何百時間も『スカイウォードソード』を遊んだ人たち」篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』、社長が訊く『ゼルダの伝説 風のタクト HD』、社長が訊く『ゼルダの伝説 ムジュラの伝説 3D』に登場。
- 横田
- はい。
- 岩田
- そこで、あるゲーム雑誌(※21)が、
「今年、出なくなった『ゼルダ』の代わりに
みんなはWii Uで何を遊びたいですか?」
というアンケートを、雑誌社のWebサイト上で
読者からとったようなんです。
これ、アメリカの雑誌の話ですよ。
あるゲーム雑誌=『Game Informer』。1991年に第一号が刊行された月刊700万人以上の有料購読者数を持つ海外のゲーム雑誌。アメリカ合衆国ミネソタ州に本拠地を構える。読者アンケートは『Game Informer』の公式サイトで行われ、その結果が同サイトの記事「『ゼルダ』が延期されたいま、読者が期待する2015年発売のWii Uタイトル10作」で紹介された。
- 高橋
- はい。
- 岩田
- 1位は『ゼノブレイドクロス』だったんです。
- 一同
- おおーっ!
- 岩田
- これね、『ゼノブレイドクロス』の
名前を挙げてもらえたというのは、
すごいことだと思うんです。 - 小島
- 本当にありがたいですね。
- 岩田
- 日本での発売が先だということで、
どんなゲームかという情報がすべて
お客さんに見えてしまったあとで
アメリカで発売することになるので、
もちろんハードルは上がるんですけど、
でも逆に、日本で「自分はこんな世界を楽しめた」
「いや、自分はこんなふうに遊んだよ」ということが、
すごくバラエティ豊かに語られて、
それが向こうの人たちにもうまく伝われば、
「JRPGの未来はどうなるんだろう」
という問いかけに対し、
「その答えを具現化したのは、これだった」
と、言ってもらえるような気がするんです。 - 高橋
- そうですね。
- 岩田
- いまはまだ、日本での発売前の話で、
少しずつ映像を公開していっている段階なんですけど、
それでも海外で高い評価をいただけたのは、
たぶん、先ほど、高橋さんが言ったように
“血と涙の結晶が結実”するくらいに
みなさんが注ぎ込んだエネルギーがほとばしっていて、
その総量が海の向こうのお客さんにも
伝わったように思うんです。ですから、
「あの広いフィールドを
思うままに駆け巡ってみたい」とか、
「ドールで飛んで、空の上から
あの世界を眺めてみたい」という
すごくワクワクした気持ちでいてもらえるんでしょうね。 - 高橋
- はい。
- 岩田
- 大きなチャレンジを、いくつも乗り越えて、
やっとここまで来られたわけですから、
お客さんたちの反応がとても楽しみですね。 - 高橋
- 本当に楽しみです。
- 岩田
- みなさん、長い間、お疲れさまでした。
- 一同
- ありがとうございました。