『ゼルダの伝説 風のタクト HD』
1. “ネコ目リンク”はいかに生まれたか
2. ゼルダ・サイクル
3. 「序盤は神。だけど後半は・・・」
4. 考古学
5. オーバースペック
6. まっすぐなエンターテインメント
6. まっすぐなエンターテインメント
- 岩田
- さて、そろそろまとめとなりますが、
最後にみなさんから
オリジナル版『風のタクト』を遊んだことのある人と、
まだ遊んだことのない人それぞれに、
メッセージをお願いします。
青沼さんは最後ですね。岩本さんから。 - 岩本
- 僕は今回のリメイクにあたって
調整をいろいろ新たに入れさせてもらったので、
『風のタクト』を遊んだことがある方には
そのちがいを実感してもらえるとうれしいですね。
わかりやすいところでいうと、
船のスピードが2倍になっていたり、
Wii U GamePadで使いやすくなったUI(※22)は、
とくにマップを手元に出せるので、
世界がより快適に楽しめるようになっています。
新しくMiiverse(※23)にも対応しましたので、
そこもぜひ体験してほしいですね。
UI=ユーザー・インターフェイスの略称。コンピューターを操作するときの画面表示、ウィンドウ、メニューなどの表現や操作感を指す。
Miiverse=Miiを通じて世界中の人たちがつながる、Wii Uにシステムレベルで統合された、ゲームをもっと楽しむためのネットワークサービス。好きなゲームソフトの広場で感想を述べあったり、手描きの絵やコメントを書き込んだりしながら交流できる。
- 岩田
- はい。遊んだことのない方には?
- 岩本
- もう純粋に、この世界に
飛び込んできてもらいたいですね。
遊んでいる最中は歯ごたえある場面も
少なからずあるんですけど、
それを乗り越え最後まで遊んでもらえたら
「ああ~、おもしろかった!」
と感じてもらえるものになったと思います。 - 青沼
- 今回、岩本さんはある意味
いちばんお客さんに近い目線で
かかわってもらいましたから、
そう言われると説得力ありますね。 - 岩田
- 滝澤さんはどうですか?
- 滝澤
- まず、遊んだことのある方には、
「新しく世界をつくり直しました」
と言っていいくらい、
印象が変わったことは伝えたいですね。
- 岩田
- 「あなたの記憶に勝ってみせます」
ということですね(笑)。 - 滝澤
- ぜひ、勝負させてほしいですね。
ライティングなどもぜんぶいちから
入れ直していますので、
新しく生まれ変わった世界を、
新鮮な気持ちで楽しんでもらえると思っています。
それから、まだ遊ばれたことのない方は
『風のタクト』と聞いて、
「10年以上前の昔のゲームでしょ?」
と思われるかもしれませんが、
古さを感じさせることのない、
ほかに類を見ない魅力が詰まったゲームですと
お伝えしたいです。 - 岩田
- そうですね。ほかにないですね。
- 滝澤
- それから、アニメーションについては、
じつはほとんど修正を入れてないんですが、
「オリジナル当時のままで
いちばん見ていて気持ちのいい『ゼルダ』」
と言っても過言ではないと思ってるからなんです。
ご家族や友達みなさん一緒に、
リビングの大画面テレビで
楽しんでいただけたら幸いです。 - 岩田
- はい。では堂田さん。
まず遊んだことのある方に。 - 堂田
- さっき話にも出たんですけど、
ゲームキューブの時、表現しきれなかった
クリエイティブというのがあって、
そのつくり手の怨念みたいなものは
今回HDで表現できたと思っています。
- 岩田
- 怨念、とまで言いますか? 情熱ではなく(笑)。
- 滝澤
- でもその言いかたが、いちばんしっくりきますね。
- 岩田
- 「成仏してなかった」ということですかね。
- 一同
- ああー(笑)。
- 堂田
- でも本当に、誰もわからないだろうに
「こんなところまでつくってたのか」
みたいな部分がいくつもあったんですね。
そこを今回あますことなく掘り起こしたので、
ぜひ味わってもらえたら。 - 岩田
- はい。遊んだことのない方には?
- 堂田
- 自分がつくり手になってあらためて感じたのは
「『風のタクト』ってまっすぐなゲームだなぁ」
ということなんです。
ゲームの方向性自体もそうですし、ストーリーも
ぜんぶまっすぐで、ブレがないんです。
この“まっすぐなエンターテインメント”を
存分に楽しんでもらいたいですね。 - 岩田
- 「まっすぐなエンターテインメント」って、
このゲームの本質をまさに言い表していますよね。 - 堂田
- それをはじめて楽しめる人は、
ある意味とてもラッキーなことだと思います。 - 岩田
- 有本さん、どうぞ。
以前遊んだ方には何と? - 有本
- 気づかなかった発見が、あると思います。
具体的なところでいうと、
最初の島にいる赤シャチと青ジイの兄弟(※24)は、
一見似ても似つかないふたりなんですけど、
HDで見ると青ジイは
メガネの奥の眼光が鋭いんですよ。
つくってる自分たちもそれを見て、
「ああ、このふたりやっぱり兄弟なんだ~」って
あらためて実感するようなことがありますね。
赤シャチと青ジイの兄弟=最初の舞台となるプロロ島の住人。リンクに剣術やさまざまな操作を指南してくれる。
- 岩田
- HDになったことで、眼光鋭いふたりの共通点が
明らかになったわけですね(笑)。 - 有本
- はい、ほかにもあると思います(笑)。
あと僕は常々、遊んだことのない方の中には、
「『風のタクト』のリンクはかわいいだけ」と
誤解されてる方がいらっしゃるんじゃないかと
思っているんです。
でも、見かけこそかわいいですけど、
その行動はいつも男前でカッコいいんですよ。 - 滝澤
- たしかに、ゲーム中でやっていることや
なし遂げることを見たら
『ゼルダ』史上もっとも男前なリンクです。 - 有本
- 媚びてかわいい表情やポーズを
見せることはないですから。 - 岩本
- でも、ハートの器をとったとき
ものすごく無邪気にはしゃぎますよね。 - 有本
- あっ・・・(笑)。
- 岩本
- あれ、かわいいですよね。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- まあ、ほかがぜんぶカッコいいから
あのしぐさが映えるというのはありますね。
最後に、青沼さん。締めの言葉を。 - 青沼
- さっき「まっすぐ」って言葉がありましたけど、
たしかにもともとのオリジナル版は、
一枚のネコ目リンクの画から、
いろんなことがスパッと一気に決まって
つくられたゲームだったとは思います。
本当に一気に、全力で駆け抜けるように
つくりあげたゲームでした。
けれど、それを遊んでみると
もたつくところもいっぱい見えてきたわけですね。
今回はそういった部分を一新して、
さらにそこにHDの表現力が相まって、
シャキッと磨かれた新たな“キレ”みたいなものが
加わった気がしています。
- 岩田
- はい。
- 青沼
- オリジナル版を遊んでもらえた人には、
絶対そのちがいがわかってもらえると思いますし、
「こういうことだったんだ」っていう手ごたえが
前よりも増してるっていう感覚は、
絶対味わってもらえると思うんです。
今回はより遊びやすく、
快適に進められるように手を加えてあるので、
本当にこの世界をすみずみまで
遊び尽くす喜びを、
味わってもらえるんじゃないかと思います。 - 岩田
- 以前より
「世界を遊び尽くしやすくなりました」と。 - 青沼
- はい。で、はじめて遊ぶ方にはですね、
今回の『風のタクト』は、けっしてリメイクではなく
いまの時代に生まれ変わるべくして誕生した
新しい『ゼルダ』だと思っていただいて、
まちがいありません。 - 岩田
- 2013年のいま提案する、
まっすぐで骨太な『ゼルダ』ですね。 - 青沼
- はい。そこを存分に、
味わってもらいたいですね。 - 岩田
- わたし自身は、今回リファインした
数々の要素というのは、
全方位のいろんな人に対して
手がさしのべられている感じがしています。
それらがお客さんの手に届いたときに、
どんなふうに受け止めてもらえるのか、楽しみです。 - 青沼
- そういう意味では、この『風のタクト HD』が、
どういう評価を受けるのか見届けたいですね。
僕らがオリジナル版で目指したことと、
そこに載せた思いが正しかったのかどうか。
これからの『ゼルダ』を考えていく、
重要なターニングポイントになってくると思います。 - 岩田
- あとはやっぱり、
『風のタクト HD』はそばで見てる人も
楽しくなるゲームだと思います。
いいゲームのひとつの条件に、
「まわりで見ている人も楽しい」ことが
挙げられると思うんですけど、
『風のタクト HD』はその力が
とくに大きいと思うんですね。
今回のHD化によってますます、
画の力、表情の力、世界の力がひとつになって
本来は見えない光や風、ぬくもりが
感じられるゲームになったと思います。
ぜひ家族や友達同士で、できるだけ大画面で
一緒に楽しんでもらいたいですね。
今日はありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。