『Wii U』 Nintendo Land篇
1. 開発はWii Uとほぼ同時にはじまった
2. 機能からのデザイン
3. クリアしてからが「本番」
4. 「チームスポーツのように」
5. 「生きている人がいる」
2. 機能からのデザイン
- 岩田
- 「任天堂のテーマパークにしよう」となって、
その世界を具体的にデザインする話は、
いつごろ阪口さんに行ったんですか? - 阪口
- 僕が入るころには
試作がある程度そろった状態で、
「バラバラの積み木をどんな箱にはめようか?」
という話から、考えはじめた記憶があります。
- 江口
- 『Nintendo Land』っていう名前が
正式に決まったのはずっと後ですけど、
「任天堂のテーマパーク」ってテーマだけは、
その当時から決まっていました。 - 山下
- ただ、それぞれのアトラクションを
「こぢんまりとした感じにはしたくない」
という気持ちが強かったんです。 - 阪口
- 各々のゲームをきれいにまとめるより、
「それぞれの個性をはっきり尖(とが)らせたほうが、
よりテーマパークのアトラクションっぽくなる」
という方向で、イメージを膨らませていきました。 - 岩田
- たしかに「リゾートスポーツ」だと統一感が求められますが、
「テーマパークのアトラクション」なら、
世界観が違うほど、ゲームの個性が際立ちますね。
一見バラバラな素材をひとつにまとめるうえで、
「テーマパーク」というのは相性がよかったんですね。 - 山下
- ゲームの絵づくりも、
全部バラバラにつくっています。 - 阪口
- そうでしたね(笑)。
たとえば2Dっぽい画面にしたり、
俯瞰(ふかん)で映したり、画面を分割したり・・・
各々のゲームの個性が映える見せかたを工夫しました。
あと『Nintendo Land』の個性として
ひとつ挙げられるのが、
各アトラクションに挑む前に、
Miiが着ぐるみに「変身」するシーンがあるんです。 - 岩田
- マリオだったり、リンクだったり、
各アトラクションにふさわしい姿に、
Miiが着替えるんですよね。 - 阪口
- はい。この変身シーンを見せることで、
「ここでは、このキャラクターに扮して遊びます」
ということがまず強調されるので、
デザインする側としても、
各ゲームの個性を思い切り伸ばせました。 - 岩田
- 「アトラクションが違えば、バラバラで当たり前」
ということを、変身シーンを通して見てもらうことで
地続きにしているわけですね。 - 山下
- 各ゲームによって遊ぶ視点もバラバラなので、
そこはこだわりました。
また一方で、プレイ中のMiiが
見えないゲームもあります。
たとえば「鷹丸の手裏剣道場」は
カメラのこっち側に自分がいるので、
一切、Miiが出てきません。 - 岩田
- 「ゲームをする自分は、どこにいった?」
そんな状態ですね(笑)。 - 山下
- はい。さらに、
「
ドンキーコングのクラッシュコース」で
転がっていく三角形にいたっては、
もはやヒト型ですらありません(笑)。
- 阪口
- デザイナー的には
「これ、なんなんだ!?」って
いう気持ちもありましたけど(笑)、
遊ぶうえでは三角形がいちばん楽しかったので
試作のデザインをそのまま採用しました。
そんなふうに、ひとつずつ決着をつけながら、
「このゲームはこういうものなんだ」って、
思い切ったデザインを心がけていきました。 - 岩田
- とはいえ、Miiがマリオの着ぐるみになって、
「なんちゃってマリオ」に変身するということは、
「オリジナルをどこまでいじればいいか」という
別の難しさがありますよね? - 阪口
- そうですね。
でも「どういう“なんちゃって”にしようか?」
ってこと自体を、楽しんでつくっていた感じでした。 - 山下
- たしかに「『Nintendo Land』なんでご勘弁を!」
って関係者に言えるから、
みんな自分の解釈で楽しそうに
オリジナルをいじっていましたね。
まあ、好きなようにやりすぎて、
江口さんに怒られたこともありましたけど(笑)。 - 江口
- だって、あの時は「どうぶつの森」じゃなくて、
「お菓子の森」になっていたからね!(笑) - 岩田
- そういえば、
「
どうぶつの森 キャンディーまつり」で、
「キャンディーを食べたら頭が大きくなって、
足が遅くなってしまう」という設定は、
どうやって決まったんですか?
- 阪口
- もともとプログラマーさんが
状態をわかりやすくするために
頭を大きくしてくれていたんですけど、
見た目が面白いし、ルールとしてもわかりやすかったので、
そのまま採用されました。 - 岩田
- え? 状態を表示するために
試作でプログラマーの用意した仕様が、
そのまま採用されたんですか? - 嶋村
- そうですね。
- 岩田
- 『どうぶつの森』の世界をつくった
江口さんからすると、どうなんでしょうか?(笑) - 江口
- そう・・・ですね(笑)。ただあれは、
Miiがどうぶつのかぶりものをしていて、
頭の中にキャンディーをほうり込むことで
いっぱい入ってきたことがわかるから、
ゲームの機能がデザインで表現されているし、
オッケーです(笑)。
- 岩田
- ということは、宮本さんが
「プロペラマリオの動力は何だ?」()
ということを追求するのと同様に、
江口さんは
「なぜ頭がでかくなるかというと、
キャンディーがいっぱい詰まっているから」
と解釈しているわけですね。(※10)
「プロペラマリオの動力は何だ?」=プロペラマリオの動力に関するくわしい経緯、社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』その1はこちら。
- 江口
- そうです(笑)。
- 嶋村
- オリジナルのしばりからある程度、
解き放たれた世界をつくりましたけど、
みなさん、すごく大らかでした。
「遊びとして面白ければいい」
って許してくれて、すごく感謝しています。
まぁ多少、むちゃくちゃもやっていますけど・・・。 - 岩田
- それはたとえばどんな
「むちゃくちゃ」があるんですか? - 阪口
- 「遊びの大事なところを活かす」ということで、
僕が「
ピクミン アドベンチャー」でやったのは、
敵の背中に丸い玉をつけて、
はっきり弱点がわかるようにしました。
本来なら、弱点は毛に隠れているとか、
もっとわかりにくいはずなんですけど、
このほうが圧倒的にわかりやすかったんです。
- 岩田
- 機能からデザインを突き詰めた結果なんですね。
- 山下
- はい。「ピクミン アドベンチャー」でも
今回は「自分がピクミンになれる」ということで、
ぜひ、「ピクミンは食べられる存在である」
ということに「フィーチャーしたい」と思って、
食べられたあとを想像してつくったんですけど・・・。 - 江口
- それ、オチを言わなきゃわからないよ?
- 山下
- その・・・食べられたピクミンが
「排泄」されるんです。すみません。
そこはオリジナルでは「絶対にやらないだろう」
と思ったので、頑張って入れました。
そしたら『スカイウォードソード』()で、
鳥のフンが落ちてくるネタがあって、
それがすごくリアルでちょっとホッとした・・・という、
しょーもない話です。すみません。(※11)
『スカイウォードソード』=『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』。2011年11月、Wii用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャー。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 嶋村さんはどうですか?
- 嶋村
- わたしは「
メトロイド ブラスト」で、
かっこよくパワードスーツをつくっていたんです。
でも、自分のライフがわかりにくかったので、
ライフの数字をデカデカと、
「お鍋のフタみたいなものに書いて背負っている」
という設定にしました。
そしたら・・・サムスとは
似つかわしくない感じになってしまいました(笑)。
- 岩田
- でも「なんで数字を背負っているんだ!?」って、
最初は思いますけど、ダークな世界で
数字がぼーっと光っているから、
ちょっとかっこよく見えるんですよね(笑)。 - 嶋村
- はい。この表現が
いちばんわかりやすかったですし、
坂本(賀勇)さん()が
「いいよ」って言ってくださったので、
ホッとしました(笑)。(※12)
坂本賀勇=企画開発本部企画開発部統括。『メイド イン ワリオ』シリーズをはじめ、『リズム天国』や『トモダチコレクション』、『METROID Other M』などのプロデューサーを担当。過去、社長が訊く Wiiプロジェクト Vol.6『おどる メイド イン ワリオ』編、社長が訊く『METROID Other M』コラボレーション 篇、社長が訊く 坂口博信×坂本賀勇、社長が訊く『キキトリック』に登場。
- 岩田
- まさに「機能からのデザイン」を追求していますね。
ところで『Nintendo Land』を特徴づける
看板に顔がついたキャラクターは、
どうやって生まれたんですか?
- 阪口
- キャラクターのキッカケは「音声合成」です。
テレビと手元のWii U GamePadという
ふたつのスピーカーがあるというのは、
いままでにない構造なので、ぜひ使いたかったんです。 - 岩田
- たとえば手元のWii U GamePadの画面から
「こっちだよ」とテレビ画面に視線を誘導する、
なんてこともできますね。 - 阪口
- はい。
キャラクターが音声合成で
ナビゲートするかたちにしたくて、
モニターの形状にすればいろいろ表示できるし、
3本指があればスリーカウントできるし、
ということで「モニータ」が生まれました。
- 岩田
- これも機能を突き詰めて
生まれたキャラクターですね。
「モニター」だから「モニータ」ですね(笑)。 - 山下
- 一応、「看板娘」というダジャレで、
女の子の設定です(笑)。