『Wii U』 Nintendo Land篇
1. 開発はWii Uとほぼ同時にはじまった
2. 機能からのデザイン
3. クリアしてからが「本番」
4. 「チームスポーツのように」
5. 「生きている人がいる」
4. 「チームスポーツのように」
- 岩田
- では、実際にできあがったものについて、
周りからどんな反応がありましたか? - 嶋村
- とくにE3の時に感じたのは、
「一言で魅力をお伝えするのが難しい商品だ」
ということです。 - 岩田
- たしかに、テニスのラケットに見立てて
Wiiリモコンを振っている人を見れば、
『Wiiスポーツ』がどんなソフトかわかるのと比べて、
『Nintendo Land』は一言で伝えるのが難しいですね。 - 嶋村
- ただ、最後の仕上げの段階で、
家族モニターを実施したんですけど、
5~6歳くらいのお子さんから70歳ぐらいの方に、
何も説明しないでさわってもらったんです。
そしたらお子さんたちはどんどん吸収して、
「おばあちゃん、違う違う」って説明しながら、
みんなでいつの間にか遊んでいるんですね。
さわっていただくと、ゲームに慣れておられない方も、
楽しそうに仲間内で解決しあっていただけるようです。 - 江口
- 「実際に体験して、はじめて理解してもらえる」
というもどかしさは、じつはいまも続いています。
ただ、遊んでいる方たちの様子を見ていると、
いままでのマルチプレイとは違う
コミュニケーションの起こりかたなので、
「場が盛り上がるはず」と強く思っています。
- 岩田
- いままでの多人数ゲームは
同じくらいの実力ならすごく楽しいけど、
実力差があると「双方が同じように
楽しむことが難しい」と感じていました。
でも『Nintendo Land』の遊びのいくつかは、
技量の違う人がいても、遊べる感じがします。 - 山下
- そういえば・・・この前、
宮本さんや手塚(卓志)さん()と
みんなで「マリオチェイス」を遊ぶ機会があって、
宮本さんがこのゲームに慣れていないものだから、
動きがちょっと「素人」っぽかったんです。(※14)
手塚卓志=情報開発本部制作部統括。『スーパーマリオ』シリーズや『ヨッシー』シリーズ、『どうぶつの森』シリーズなど、数多くのゲーム開発にかかわる。過去、社長が訊く「スーパーマリオ25周年」『スーパーマリオ』生みの親たち 篇、社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』携帯機ゼルダの歴史 篇、社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』その2、社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』プロデューサー 篇、E3 2012 特別篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ U』、E3 2012 特別篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』に登場。
- 岩田
- マリオの生みの親なのに「素人」ですか(笑)。
- 江口
- ただ、マリオが逃げ回っているのを、
われわれや宮本さんが追っかけるんですけど、
宮本さん、地形とか把握していないから、
どう追いかけたらいいのかわからないんですよ。 - 山下
- 「ああっ。宮本さん、どうしてそっちに・・・」
って思う気持ちを抑えつつ、
プレイを見守っていたんですけれど、
じつは宮本さんが意図していなくても、
それがマリオを追いつめる動きになっていたんです。
そういう意味で、
「下手だからうまくできない、という構造ではない」
ということが言えると思います。 - 岩田
- しかも終わったあと、リプレイを見て、
また盛り上がれますからね。 - 江口
- そうなんです。
逃げたり、追いかけたりするラインが
そのまま再生されるので、
みんながどんなふうに動いていたのか
すごくよくわかって、リプレイが本当に効いています。
宮本さんはひとりだけ、
チームワークとはかけ離れた動きで
ウロウロしていたんですけど、
逃げているマリオからすると、
それが「けん制の動き」に見えていたんです。 - 岩田
- あははは(笑)。
- 阪口
- あと、立場の違いから
「会話がたくさん生まれるところ」も面白いんです。
鬼ごっこで鬼の役なら
「ふっふっふっ、捕まえてやるぜ!」ってなりますが、
リモコンを交換して立場が入れ替わると、
みんなの口調が、急に逆転するんです。
だから、遊んでいると言葉がやたらにでます。 - 山下
- そう。たしかにでますよね。
とくに「対戦アトラクション」のゲームは
その要素が強いです。 - 嶋村
- よく山下さんが言うんですけど、
このソフトはゲームの中に攻略があるんじゃなくて、
ゲームの外に遊びがあるんです。
「あっち動け、こっち動け」とか、
「赤の外周行ったよ!」みたいなかけ声があって、
そこはチームスポーツに近いかもしれないです。
- 岩田
- ああ、たしかにチームスポーツですね。
- 嶋村
- チームワークがいいグループには勝てないですし、
逆にゲームが得意でも、
何も話さないチームを相手にすると
けっこう勝てちゃいます。 - 岩田
- テレビとゲームの外にある部分から、
遊びを引き出す構造になっているんですね。 - 嶋村
- みんなで遊んでいると、
「指示の出しかたの発明」もあるんです。 - 阪口
- そうなんです(笑)。
鬼が逃げている方向を指して、
「時計回り、反時計回り」とか、
「外周! 内周!」とか、
言葉がどんどん発明されていきます。
そういう言葉を引き出すために、
地形を色分けしたり、わざとすりばち状にして、
「下」とか「上」って、
表現できる地形にしています。 - 嶋村
- われわれ開発陣が一緒にプレイしたら、
「マリオ発見しました!
赤外周、時計回りに廻っております!」
とかになるんです(笑)。 - 岩田
- なるほど(笑)。
短い言葉で指示が的確にできるので、
すべての動きが筒抜けになるんですね。 - 嶋村
- はい。それから、
「マリオチェイス」だけでなく、
ほかもそうなんです。 - 山下
- あと、手塚さんって、
普段はあまり激しい感じの方ではないんですけど、
「ルイージのゴーストマンション」が異常に強くて、
オバケ役をされると「暗殺者」のようになります。 - 岩田
- ええっ?
手塚さんが暗殺者ですか?(笑)
これはすごいギャップですねぇ。 - 江口
- いや、ホント、すごくびっくりするんですよ。
ちょっと姿が見えた時に
「右に行ったな・・・」と思っていたら、
左から急に来たりして。
まるで、こちらの動きを
2手、3手、先読みされているようなんです。 - 嶋村
- 「デカの『カン』ってあると思う」って、
『Miiverse』にコメント()がありましたけど・・・。(※15)
『Miiverse』にコメント=「Wii U本体機能 Direct 2012.11.7」で放映された、手塚の『Miiverse』への「手書き投稿」のこと。
- 山下
- あー、そうなのかもしれません(笑)。