『Wii U』 Wii Street U powered by Google篇
1. 「空を見上げたくなるんです」
2. 風景をまるごとデータベースに
3. 「みんなに伝えるために」
4. 迷うのが楽しい
5. シンクロ率
6. 「いろんなところに行きたい」
6. 「いろんなところに行きたい」
- 岩田
- 『Wii Street U powered by Google』がリリースされて
世の中の人に届いたとき、
みなさんどんなことを期待されていますか?
最初に大橋さん、どうですか? - 大橋
- えーと・・・難しいですね(笑)。
正直に言うと自分はまだ作業の途中で
「ユーザーの方に届いたら」というところまで
気持ちが追いつかないというか・・・。
- 岩田
- でも、今日の河合さんへのプレゼンは
たしかな手ごたえがあったんじゃないですか? - 大橋
- はい。そうですね。
すごくうれしくなりました(笑)。 - 岩田
- それが世の中に、もっと大きな規模で起こるんですよね。
- 大橋
- そう考えると、これをきっかけに
これまでPCでサービスを利用した経験がない方も
さっきのようにみんなで一緒に
わいわいと盛り上がってもらえると、
つくった人間としてはうれしいですね。 - 岩田
- そういうイメージができると、
仕事のつらさもやりがいに変わるんです。
でも、わたしがあまり言い過ぎると
「もっと働いてください」と
聞こえるだけかもしれませんが(笑)。 - 大橋
- いえ、まだまだがんばります(笑)。
- 岩田
- では、鈴木さん。
- 鈴木
- 僕は、今回のプロジェクトがはじまった時、
こっそり奥さんの反応を見ようと、
昔、旅行に行ったことのある沖縄の写真を
さりげなくGoogle マップで見せてみたんです。
そうしたら奥さんから
「あれ、その写真いつ撮ったの?」って言われて。
普通の人にとって風景写真というのは
自分で行って撮るのが当たり前のもので、
世界中のどこの風景でも
ネットで簡単に見られるということを知らない人も
まだまだ多いのではないかと気がついたんです。
だからこの『Wii Street U powered by Google』で
「いつでも、どこからでも、
その場にいるように見られること」が
世の中の人に伝わったら、どんなことが起こるのか、
すごく楽しみですね。
- 岩田
- 世界最大の風景写真データベースに、
これまでよりさらに簡単に、
誰でもアクセスできるわけですからね。 - 鈴木
- はい。“ビデオ・オン・デマンド”()ならぬ、
“風景・オン・デマンド”ですよね。
Wii Uを通すことでその臨場感がより高まって、
いままでとはまたちがった、
ユニークなものになるにちがいないと思います。(※25)
ビデオ・オン・デマンド=ネットを介して映像コンテンツのストリーミング配信を行い、ユーザーが見たい時にそのコンテンツを視聴するシステム。略称はVOD。
- 岩田
- はい。高橋さんは?
- 高橋
- ストリートビューはいままで
自分ひとりで使うものだったと思うんですけど、
大きなリビングのテレビで見ることで、
まわりの家族や友人がどんな反応をするか、
すごく興味がありますね。
そして、『Miiverse』()を使えば、
その場にいないほかの人にもお気に入りの場所を
紹介できるというのも、大きいと思います。(※26)
『Miiverse』=Miiを通じて世界中の人たちがつながる、Wii Uにシステムレベルで統合された、ゲームをもっと楽しむためのネットワークサービス。好きなゲームソフトの広場で感想を述べあったり、手描きの絵やコメントを書き込んだりしながら交流できる。
- 岩田
- 「ここ見て! おもしろいよ」って、
ほかの人にも共感を求められるわけですね。 - 高橋
- そうですね、これまでにはなかった
「ダイレクトでやりとりできるおもしろさ」が
生まれると思いますので、
それがどんなことになるのかが、すごく楽しみです。 - 岩田
- では、河合さん。
- 河合
- はい。まず、あらためて言うと、
ストリートビューの写真というのは
単なる画像データなので、
それ自体では意味を持っていないんです。
でも、それを見る方の思い入れだったり、
その場所に含まれた背景が加わってはじめて、
いろんな価値が生まれてくるものなんです。
- 岩田
- その価値は見る人の側にあるもので、
データベースにあるわけじゃないんですね。 - 河合
- そうです、写真はただそこにあるだけなんです。
ストリートビューの写真って、だいたい半年くらいで
すべての写真が一回は見られるんですよ。
それはどういうことかというと、
やっぱりみんな自分の場所みたいなものが、
人の数だけあるんだと思うんです。 - 一同
- へぇ~!
- 岩田
- あれだけ膨大な量があっても
必ず世界中の誰かには見られているんですか。 - 河合
- これはストリートビューをはじめた頃に
聞いたお話なんですが、
寝たきりで家から出るのが難しいおばあさんに、
お孫さんがストリートビューで
引っ越した自分の家を見せてあげたそうなんですね。
それを見たおばあさんに、
とてもよろこんでもらえたそうで。 - 岩田
- ああ、いいお話ですね。
- 河合
- でも、そのよろこぶおばあさんを見た
お孫さんも、きっとすごくうれしかったと思うんです。
今回、そういった感動のつながりや共感が、
リビングでより簡単に、わかりやすく
シェアできる仕組みをご提案いただけたのは、
わたしたちにとって本当にありがたいことなんです。
そういった物語がこれからきっと、
もっとたくさん生まれると思います。
そこでまた「こんな使いかたをしたよ」って
聞かせてもらえたら、わたしたちもすごくうれしいです。 - 岩田
- あの、つくった自分たちで言うのもなんですが、
今回はWii Uの構造として、
手元の画面が付いたコントローラーで
風景を身体感覚で見られるといった特徴と、
家族全員の共有物であるテレビに映せる仕組みが、
Googleストリートビューと
ビックリするほど相性がよいと思っているんです。
いままでにも、複数のデバイスを組み合わせることで
同じような構造を実現できるデバイスはありますが、
最初から一体となっていて、
ひとりだけでなく同じ部屋にいる全員に伝わっていくところが、
このサービスのおもしろいところだと思います。 - 河合
- そうですね、たしかに。
- 岩田
- 人間、誰もが持つ夢のひとつに、
「いろんなところに行きたい」
という想いがあると思います。
でもそれを行うためには、時間や労力、お金など
いろんな事情があるわけで、多くの人は、
必ずしもそれはかなわないんですね。
でも『Wii Street U powered by Google』には、
その夢をかなえ、
まるでその場にいるかのような感覚を味わえる
新しい道具になりうる手ごたえを感じています。
もちろん、その場に行ったからこそわかって
感じられることは必ずありますし、
すべての代用になるわけではありません。
でも、リビングにいながら
「遠くの場所にいるかのような臨場感」を
その場にいる人全員が共有できるというかつてない出来事が、
世界中のリビングルームで起こるわけです。
その結果、「人が移動することってなんだろう」とか、
「その場所を見ることで心が動く」というような、
人と地図とのかかわりにおいて
新たな一歩が踏み出される気がしています。
Wii Uとウェブサービスとの連係で、
新しい次元のおもしろさが生まれることは、
まだまだたくさんあると思います。
でもそのなかでも
この『Wii Street U powered by Google』は、
いまわたしがいちばん手ごたえを感じて
いち早く実現したくてたまらないサービスです。
河合さん、今日は楽しいお話をありがとうございました。 - 河合
- こちらこそ、ありがとうございました。
- 岩田
- 家庭内でソーシャル・インタラクションが起こり
それが『Miiverse』を通じて、
リビングとリビングを越えて
どうつながって、広がっていくのかというのが、
わたしの期待であり、野望です。
そうなったらまた次のステップで
おもしろいことができると確信しています。
みなさん引き続き、よろしくお願いします。
今日はありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。