『Wii U』 Wii U GamePad篇
1. 課題は無線システム
2. “ひとつの解で複数の問題を解決する”
3. 「最後はガッツ」
4. 「コントローラーをつくる!」
5. 「テレビがもっと魅力的に」
4. 「コントローラーをつくる!」
- 岩田
- ガッツといえば、
伊吹さんにお訊きしたいんですけど、
Wii U GamePadのデザインって、
3回も4回もちゃぶ台が返りましたよね? - 伊吹
- はい・・・(笑)。
- 岩田
- スライドパッドは押し込み式のスティックに変わるわ、
もっと平らだったのにグリップが付いたりするわ・・・。
操作性向上のための大幅なデザイン変更を
短期間で行わなければならず、
ものすごく大変だったと思うんですが、
思い出深い話をしてもらってもいいでしょうか? - 伊吹
- はい(笑)。
去年のE3で発表したものが最初のWii U GamePadですけど、
あのとき、デザイングループの意識としては、
「パッドをつくっていきましょう」という意識でした。
リビングルームに置いてあるものとしてふさわしいデザインを、
メインコンセプトとしてやっていたんです。 - 岩田
- あのころは、裏面もすっきりしていましたよね。
- 伊吹
- はい。でも去年のE3後に、
「使いにくい」と言われてしまって・・・。
ただ、僕らもWii U GamePadで
ファミコンの『マリオブラザーズ』を
改めて遊んでみたら、
たしかにうまくできなかったんです。 - 岩田
- たしか当時のデザインでは、
「疲れる」とか「プレイしにくい」とかいう声が、
けっこう出てしまったんですよね。 - 伊吹
- ええ。それだとコントローラーとしてまずいので、
「なんとかしたい」と思っていたときに、ちょうど
「操作性において仕様の改善をしてほしい」
という話が社内から浮上してきました。
僕らもそれに乗ろうと思いました。 - 岩田
- つくった側として、放っておけなかったんですね。
- 伊吹
- はい。このまま出すと後悔してしまうので。
Wii U GamePadは、
世の中にあるようなフラットなパッドデザインがいいのか、
従来のコントローラーのような
操作性を重視したグリップがあるデザインがいいのか、
改めて一から検討をしました。
当時はかなりチーム内でWii U GamePadについてどうあるべきか、
さまざまな意見を出しあいましたね。
- 岩田
- 宮本(茂)さんもわたしも、推進者でしたが、
「普通、いまからはやりませんよ?」と、
竹田さんに言われながらの決断でしたね。
たしかに、前のWii U GamePadは長時間持っていると、
指に疲れを感じたりしていましたけど、
そこがすごく変わりました。 - 伊吹
- はい。ここからが長かったんですが、
「使いやすいコントローラーをつくるんだ!」
という意識がある一方で、
「リビングに置けるパッドタイプのデザインがいい」
という意見も残っていたので、
バランスを取るのが大変でした。 - 岩田
- コントローラーとしての使いやすさと、
リビングに置いておくデザイン性とのバランスに
時間がかかったんですね。 - 伊吹
- ええ。改良版で付け加えたグリップも、
じつは最後の最後まで決まりませんでした。
最初はもっとフラットな四角いパッドから
段階をおってグリップを付けたものまで幅広く検討を行いました。
その中で、どれが使いやすいか社内アンケートをとりました。
でも票がわかれてしまって、優劣がつけられなかったんです。 - 岩田
- どうやって最終のグリップ形状を決定したのですか?
- 伊吹
- さまざまな条件を想定して
「長時間プレイしても疲れない」とか、
「小さな手から大きな手まで持ちやすいデザインとは何か」を
追及していきました。
それはもうデザイングループ一丸となって、
みんなが「使いやすい!」と言ってくれるまで
こだわった結果が最終のグリップ形状になります。 - 岩田
- たくさん試して、いまの形に行きついたんですね。
- 伊吹
- はい。四角いパッドの裏に
ちょこんと付けるグリップというのは、
どうやったら持ちやすくなるのか、
正直わからなかったんです。
とりあえずいろいろつくって、手で削って、
粘土で調整して、毎日毎日ずーーーっとくり返して、
それで関係者に見てもらいに持っていったら、
「持ちにくい」って言われるんです・・・。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- それはいくら根性があっても、
心が折れそうになりますね・・・。 - 伊吹
- 「けっこうこれ、いいんじゃないか!?」と思っても、
「よくない」ってサクッと言われて戻る、
そういうことのくり返しでした。
「あのときが多分、いちばん大変だった時期かなぁ」と思います。 - 岩田
- ちなみにグリップ以外にエネルギーをかけたのはどこですか?
- 伊吹
- 軽量化についても大きかったです。
軽量化は設計グループ主体で行いました。
Wii U GamePadは、軽量化のためにさまざまな工夫をしています。
液晶保護のために「シャーシ」と呼ばれる部品があるのですが、
開発当初は、アルミやマグネシウムなどの材質で検討していました。
ですが最終的にはアルミやマグネシウムではなく
さらに軽量化をはかるために「樹脂シャーシ」を使っています。
そうやって1g、2gを削っていきました。 - 岩田
- 強度上、問題が出ない範囲で、
ギリギリまで軽量化したんですね。
「コントローラーとして500gは重い」と
感じておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
まさに「塵も積もれば」で減らしていった結果、
当初よりもずいぶん、軽くなりました。
- 伊吹
- はい。デザインの変更を提案するときは、必ず
「何g増えるか」を添えて提案しないとダメだったんです。
「こういうデザインしたいんですけど」
「何g増えるんだ?」
「5g増えます」
「ダメ!!」って言われます。 - 一同
- (笑)
- 伊吹
- 5gって100円玉くらいの重さなんですけど(笑)。
Wii U GamePadの目標の重量が500gぐらいだったので、
500何gまで切迫していたときは、
重くなる提案は何をしてもダメでした。 - 岩田
- コントローラーや携帯ゲーム機をつくるときって、
いつもすごい量の試行錯誤をしているんですが、
今回は、その中でも記録的な感じがしています。 - 伊吹
- あー、そうかもしれません(笑)。
Wii Uのプロジェクトから入ってきている社員さんには、
「いつもはこんなに大変じゃないんだよ!」
って、先輩たちがみんな、フォローしていましたから。
多分、どこのチームもそうだったと思います(笑)。 - 岩田
- 先輩たちが若い者をなぐさめながら、
2年間、なんとか乗りきったんですね。
みなさん、後輩たちに声はかけていました? - 一同
- はい、(口々に)かけていました(笑)。