『Wii U』 Miiverseプロデュース篇
1. “共感ネットワーク”
2. 2階建てのサービス構造
3. ネットワーク方針の大転換
4. 「Wiiが街に」
4. 「Wiiが街に」
- 岩田
- 一方で、今回、近藤さんは
任天堂と仕事をすることに対して、
どのように感じていましたか? - 近藤
- そうですね。
うまく言えないんですけど、任天堂の方って、
意外と“ガツガツしている”というか・・・(笑)。 - 岩田
- (笑)。少し表現を変えると、任天堂の人は
「このほうが、お客さんが喜ぶんじゃないか?」
っていうことに対して、手間をいとわず、
どん欲にやることを当たり前だと思っているんです。
だからみんながお客さんの視点になって考えて、
その商品について共感できるまで
突っ込んでいく人が多いんです。 - 水木
- でも、はてなさんとは、
仕事に対する意識のギャップがほとんどなくて、
常に「お客さんはこのほうがうれしいだろう」って
同じ価値観で進めることができたと思います。
近藤さんとは、何回か決起集会をしたんですけど・・・。 - 岩田
- え? 決起集会って何回もするものなんですか?
普通は1回でしょう(笑)。 - 水木
- ええ?(笑)
えっと・・・じゃあ
“スタッフが増えたぞ集会”とか、
“デバッグがこれからはじまるぞ集会”とか・・・。 - 一同
- (笑)
- 水木
- まぁ、それはいいとして(笑)、
その集会のとき、
近藤さんが『うごメモ』の話をされていて、
開発の手間も、サーバー維持費もかかるとわかっていても、
「ここはプッシュだ!」といってガンガン突き進んでいって、
「ユーザーがもっと楽しめるようにどんどん開発すべきだ!」
ということを熱く語られていたことが、
すごく印象に残っているんです。
そういう価値観のはてなさんとだから、
すごくやりやすかったんです。 - 近藤
- そう言っていただけると、非常にうれしいです。
「僕たちがネットワークサービスをつくることで、
なるべく世の中を前に進めていきたい」
ということを、常々社内で話しているんです。
あと、みんな任天堂のゲームが好きなので、
「僕たちの力でもっと前に進めることができれば
それがいちばん楽しい」と思っています。 - 水木
- そういう価値観で、
ガンガン突き進む近藤さんのイメージって、
・・・あえて言いますよ?(笑)
殿が先に突っ走って、家来があとから追っかけながら
「と、殿、ご乱心をっ!」
みたいに止めるみたいな・・・。
そんな感じがしていました。
すみません!(笑) - 一同
- (笑)
- 岩田
- でもね、何か新しいことをはじめるときって、
社内には「殿、ご乱心をっ!」って
思う人はいるものだと思いますよ。 - 近藤
- そうですよね(笑)。
- 水木
- 確かに、僕らは『Miiverse』を推進する側でしたけど、
「ご、ご乱心をっ!」くらいに思っている人たちは
社内にもきっといたと思います。 - 岩田
- いろんな人が、「運営が大変になりますよ」って、
ずいぶん心配していたと思います。 - 水木
- はい。でも基本的にみなさん、
協力的に考えてくれて、
何かしらのかたちで応援してくれました。
「もっとこうあるべきじゃないか?」
といったアドバイスも含めて、
「進めることに反対」という意見はなかったです。 - 岩田
- じゃあ、今日の最後に
『Miiverse』はゲームをどう変えると思うか、
近藤さんからいいですか? - 近藤
- はい。僕が起動画面の
「わらわら広場」を見て感じたことは、
「ああ、Wiiが街になったなぁ」ということです。
いままで“家の中”くらいの範囲だったのが、
Wii Uで広がって、知っている人も知らない人も
ワーッといるみたいな。そういう意味で、
本当に「わらわら広場」はびっくりしたんです。
実際、起動画面だけを見て楽しむような人が
多いんじゃないでしょうか。
「よく、カフェとかで人の雑踏を眺めるみたいに、
そういう楽しみも生まれるんじゃないか」
そう思っています。
- 岩田
- ちなみに、あれを起動画面にしたのは、
『Wiiの間』でどんなにおもてなしの準備をしていても、
起動していただかないことには目にも入らないことを、
わたしと水木さんが思い知ったからでもあるんです。
だから『Miiverse』では、
Wii Uの電源を入れただけで
何か起こるようにしたかったんですね。 - 水木
- 『Wiiの間』でも、
Miiが居間でくつろいでいる様子は、
お客さんにわりと気に入っていただけたみたいでした。 - 岩田
- 家族と離れて暮らしている人が、
『Wiiの間』の居間にいっしょにいる
大切な家族の姿を眺めることで、
癒やされたりしていたという声をいただいていました。
でも、今度はそれをもう一段、
ちょっと違うかたちでお見せできそうです。 - 近藤
- あの、いわゆる“ソーシャル化”というのは、
ゲームの世界がインターネットでつながることによって、
一つひとつの娯楽やコンテンツに対して、
どう社会性を持たせていくのかが、
大きなテーマだと思うんです。 - 岩田
- はい。ネットワークの向こう側に本当の人がいて、
しかも自分と価値観を共有する人がいたら、
「何が起こるか?」ということですね。 - 近藤
- そうです。いままさに、
「任天堂のゲームが社会とつながって、
広がっていく革命的瞬間なんじゃないか?」
と、僕は思っています。
本質は“ゲームも面白いけど、人も面白い”ということで、
「人と楽しめるほうがもっと面白いかもしれない」
というお客さんに対する提案なんです。
これから『Miiverse』を使ってくれる方たちにとって、
「いちばん楽しんでもらえるものができた」と思うので、
その広がりをぜひ、楽しんでいただけるとうれしいです。 - 岩田
- 生粋のゲーム屋と、ゲームを愛するウェブ屋さんが
出会ったからこそ、生まれたサービスになりましたね。 - 近藤
- はい(笑)。
- 水木
- 僕はですね、ゲームというのは
言語よりもプレイが優先されるものなので、
“世界がひとつになれる娯楽”だと思っているんです。
でもいままでは、少なくとも
ゲーム機のネットワークは比較的言語主体で、
あまり国境を越えられていなかったと思うんです。
- 岩田
- 外国語だと、よくわからないですからね。
- 水木
- はい、でも今回は手書きでコメントを掲載したり、
Miiのアイコンの表情を変えられたりして、
言葉に頼らないコミュニケーションが可能です。
そうした「何となく気持ちが伝わる仕組みにしたい」
ということを最初から考えていたので、
「いままで以上にゲームを通じて世界中の人と、
言語の壁を越えて交流してほしいなぁ」と
思っています。 - 岩田
- はい、ありがとうございます。
わたしは『Miiverse』の登場前と登場後で、
「たとえ家でひとりきりで遊んでいたとしても、
ゲームを通じて“1人じゃない”と
共感しあえるようになる」ということが
最も大きな変化になるのではないか、と思っています。
自分と価値観を共有できる人に出会えて、
面白いゲームにどんどん出会えるようになって、
あるとき「本当に昔、これがなかったの?」
って言われるようにしたいなぁ、と思っています。
- 水木
- 本当にそうですね。
- 岩田
- まあでも、ネットワークサービスは
はじまってからが勝負なので、
本格開発はこれからですからね。 - 近藤
- はい。スタートしてからということで(笑)。
- 岩田
- 頑張りましょう。
今日はありがとうございました。 - 一同
- ありがとうございました。