『Wii U』 Wii U Chat篇
1. 15年越しの想い
2. 「家族の幸せって、何だ?」
3. 気持ちを通じ合えるツールに
2. 「家族の幸せって、何だ?」
- 岩田
- テレビとWii U GamePadの2画面は
どう使い分けているんですか? - 民谷
- じつはいろいろ議論があったのですが、
「シンプルにわかりやすく」ということを重視して、
画面の構成としてはどちらも同じものが映るようにしました。
家族で複数の人が同時に使うときはみんなでテレビを見ながら、
個人でプライベートに使うときは
Wii U GamePadを使っていただくイメージです。 - 岩田
- ビデオチャットシステムを
ゲーム機に実装するという意味で、
民谷さんはまず、
何からやろうと思いましたか? - 民谷
- わたしはまず、ビデオチャットをしているときよりも、
「その前の段階が重要」と考えました。
チャットをはじめる前はドキドキして待って、
つながった瞬間に、相手と顔をあわせてうれしくなる。
そういった体験を、「わずらわしい操作なく、
できるだけ簡単に達成できるようにしたい」と考えたんです。 - 岩田
- たしかにビデオチャット自体は
いろんなシステムでできるようになりましたが、
そこにたどりつくまでが面倒だと、
なかなか利用してもらえないですからね。
また当然、Wii Uのお客さんには
そういった設定にくわしくない人も含まれますから。 - 民谷
- はい。そこで、そういった方にも
気軽に『Wii U Chat』を楽しんでいただけるよう、
とにかく「シンプルに導けるように」と考えました。
開発チーム内では、
“2ステップコネクション”と呼んでいます。 - 岩田
- それは具体的に言うと、
どんなステップなんですか? - 民谷
- まず『Wii U Chat』を起動すると、
フレンド登録したMiiが並んでいます。
そこから話したい相手を選ぶのが1ステップ、
「発信」を押して2ステップ、でつながります。 - 岩田
- 「Miiを選んで発信」、だけでいいんですか?
それだけで何もいらない? - 民谷
- 何もいらないです。
- 岩田
- Miiはどのように表示されるんですか?
- 民谷
- Miiはビデオチャットの回数が多い人から、
順番に並んで表示されるようになっています。
よくビデオチャットする相手のMiiは
前のほうに並んでいますので、
そういう人とつなげるときには
スクロールしてMiiを探す手間もありません。 - 岩田
- シンプルに徹するということなんですね。
- 民谷
- そうですね。
あいうえお順に並べたり、短縮メモリー登録をするとか、
機能を充実させていくことも検討したんですが、
今回そういった機能はあえて省きました。
「ビデオチャットする関係の相手というのは、
親密な相手に限られているはず」と考えて、
とにかくシンプルにしたかったんです。
- 岩田
- まあ、たしかに自分の家からビデオチャットする相手って、
家族や親戚とか、親友とか恋人とか、
すごく親しい間柄の人に限られる感じがしますよね。 - 民谷
- はい。そういう意味では、開発を行う前に
“竹田さんの想いを聞く会”を開催して、
いろいろお話を聞かせていただきました。 - 岩田
- “竹田さんの想いを聞く会”ですか・・・!(笑)
竹田さんって、一見、冷静な人に見えるんですけど、
じつは、発想が奔放で、熱い人ですからね。
そこで、竹田さんはどんな話をされたんですか? - 民谷
- 竹田さんが、そのときおっしゃっていたことは、
「家族の幸せを実現するソフトにしたい」
「任天堂がつくるんだから、何か遊びの要素がほしい」
「みんなが発売日から使えるようにしてほしい」
という3つのことだったと思います。 - 岩田
- 「家族の幸せ」とは、大きな想いをぶつけられましたね。
- 民谷
- はい。それを受けて、開発チームでも
「家族の幸せってなんだろう」と考えて、
その結論は端的に言うと
「一緒にいることだろう」と。
それで『Wii U Chat』では、
離れたリビングルーム同士が
テレビの大画面を介してつながる感じを
実現しようとしたんです。
もちろん家族だけではなくて、
いろんな人に使ってもらいたいんですが、
「まずは親しい人たちが
本当に使いやすいものにしよう」と考えました。 - 岩田
- なるほど。ちなみに、
たとえば相手がWii Uを
遊んでいるときや、遊んでいないときなど、
いろいろな状況が想定されますよね。
そういうときはどんな風になるんですか? - 民谷
- まず、相手がWii Uでオンラインのときは、
こちらから発信すると、
相手側のHOMEボタンが光って着信を知らせます。
そこで相手がHOMEボタンメニューを開くと、
着信のメッセージが出てきますので、
それに応答すると『Wii U Chat』がはじまります。 - 岩田
- ただ、そのとき遊んでいたゲームは、
一度終了する必要があるんですよね? - 民谷
- そうですね、終了する必要があります。
- 岩田
- いくつか技術的なハードルはありますが、
ここは将来改善できるといいですね。
相手のWii Uの電源が入っていなかったり、
相手がオンラインになっていなかったりする場合は
どうなるんですか? - 民谷
- そのとき相手はすぐにはWii Uで気づけないんですけど、
あとから『Wii U Chat』の「不在着信のきろく」や、
『Miiverse』()のメッセージで確認することができます。(※15)
『Miiverse』=Miiを通じて世界中の人たちがつながる、Wii Uにシステムレベルで統合されたゲームをもっと楽しむためのネットワークサービス。
- 岩田
- 民谷さんは、実際に『Wii U Chat』を試してみて、
どんな感じがしましたか? - 民谷
- 相手の顔が、大画面のテレビにあらわれて
表情を見ながら話せる、というだけで
ものすごくうれしいんです。
初めてつながったときは、
チームメンバー同士でかなり盛り上がりました。
なんというか、向こうにつながるドアが開いて
直接会えた感じでしたね。 - 岩田
- いまの世の中では、
「すでにビデオチャットは一定数普及した」
と思っているんですけど、
そういうものと何か感覚が違いませんでしたか?
わたしはあのテレビに大きく映るのがとても新鮮で、
はじめて経験したとき「わあ、でかい!」って思いましたし、
これまで、複数対複数のビデオチャットは
業務用のビデオ会議でしか経験したことがなかったので、
家庭のリビングルームでこういう体験をするのは
新鮮な感じがしたんですよ。 - 民谷
- 大画面を通すことで、
離れていたリビングとリビングが
そこでつながっている感じがする、というか、
その場所で一緒に過ごしているような不思議な感覚ですね。 - 岩田
- これはWii Uのゲームまわりの
機能全般についても言えることだと思うんですけど、
ここ数年、スマートデバイス()と呼ばれる、
アイテムが提供しているものって、
基本的にパーソナルなものなんですよね。
そのなかでビデオチャットは広く普及はしたけれど、
複数対複数にはなりえなかったんです。
そういう意味で、『Wii U Chat』は
ごく簡単に、複数が同時に体験できる
おもしろみがあって。
とくに、大きなテレビに映像が映し出されているとき、
その個性みたいなものが
強く感じられるんだと思います。(※16)
スマートデバイス=スマートフォンやタブレット端末を総称する呼び名。
- 渡辺
- そういう意味で言うと、
『Wii U Chat』は“ビデオチャット”じゃなくて
“テレビ電話”なんですよ。 - 岩田
- うん。まさに“テレビ電話”ですね。
竹田さんがリビングに置かれるテレビゲーム機で
実現したかった「家族の幸せ」への想いというのは、
そういうことなのかもしれませんね。