『Wii U』 Nintendo×JOYSOUND Wii カラオケ U 篇
1. 撤退からのスタート
2. 相手が戦えない土俵で
3. “曲を選ぶ楽しみ”
4. 「歌い込み」
5. 「記憶を探して」
5. 「記憶を探して」
- 岩田
- 服部さんは、業務用のカラオケを
リビングに持ち込むうえで、
どんな工夫をしましたか?
- 服部
- 「任天堂がつくるカラオケとはどうあるべきなのか」
ということをしっかりと考えました。
あと今回、これまで開発してきたソフトと
大きく違うなと考えていたのは、
いままでのゲームソフトは、遊びたいから購入されるわけで、
つまり、「ソフトを手に入れた瞬間から興味がある」んです。
でも今回はプリインストールですから、
さわる方全員がこのソフトに興味がある
お客さんとは限らないんです。 - 岩田
- Wii Uを買ったら、ついてきちゃうわけですからね。
- 服部
- はい。ですので、カラオケに
もともと積極的でないお客さんにも、
「歌ったらどんなに楽しいか」を
いかに想像していただくかということに注力しました。
曲のリストを見たり、年代から検索したりすると、
やっぱり歌いたい気持ちになってくるんです。
いろいろとさわっているうちに
「歌うってやっぱり楽しい」と思ったり、
「あぁ、こんな曲よく聴いたよなぁ」とか、
曲と過去の経験を結びつけてほしいと思ったんです。 - 山上
- とくに『Wii カラオケ U』の場合、
歌手でも、曲名でも、テレビドラマでも、
とりあえず検索してみると、
ゲーム側が候補を探してくれます。 - 岩田
- いわば、日本のWii Uには
「標準で音楽データベースが内蔵されている」
ともいえますね。 - 山上
- 音質にもこだわっていて、
業務用の最新機種はMIDIなんですが
内蔵されている音源がすごくて
ほとんど生音に聴こえるんです。
でもそのままでは容量が大きすぎて
とても家庭用ゲーム機には入らないんですね。
そこで今回は「MIDIの音を録音して使う」ことで、
業務用と同様の高品質を確保することができました。 - 岩田
- ちなみに、歌う画面でMiiが出てくるのは、
どのように決まったんですか? - 山上
- えー、そこはですね(笑)。
わたしは昭和時代に青春を過ごしましたので、
カラオケの映像といえば
「ナゾのカップルが出会って別れるドラマ」
みたいなのが流れるというイメージしかなかったんです。
でも、服部さんに
「いや、そんなの古いです!」と言われて、
じつはかなりの議論になって・・・。 - 岩田
- そういうのを、
「ジェネレーションギャップ」といいます(笑)。 - 山上
- 最終的に、
すべての世代の方に受け入れていただけるように、
昔ながらのカラオケムービーも、Miiの映像も、
写真スライドショーも、ビジュアライザーも、
好きに選んでいただけるようになりました。 - 吉満
- おふたりとも、打ち合わせの場で
よくケンカされていましたよねぇ(笑)。 - 一同
- (笑)
- 服部
- あれ? ケンカに見えてましたか。
ケンカじゃないですよ。議論です(笑)。
あんなに言うのは、山上さんに対してだけです。 - 岩田
- カラオケ観の違いについて、
熱い議論が繰りひろげられたんですね。
わたしは、先日のニンテンドーダイレクトのときに
自分のMiiが舞台上で踊っている映像()を見ていて、
すごく不思議な感じがしました。(※26)
自分のMiiが舞台上で踊っている映像=「Wii U本体機能 Direct 2012.11.7」で放映された映像のこと。
- 吉満
- カラオケは同じ場にいる人たちと楽しむものなので、
Miiの形でいっしょに踊っていると、
ダイレクトに一体感が伝わるんです。 - 服部
- それに、Miiとカラオケは映像以外でも相性がよくて、
お気に入りの曲や履歴を管理するときも便利だったんです。
人のMiiの履歴を覗き見ると、
新たな一面の発見があったりして楽しいですし(笑)。 - 山上
- でも、そんなに議論していたかなぁ?
大部分は合っていた気がするんだけど、
(吉満さんを見て)・・・ねえ? - 吉満
- そういうことにしておきましょう。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- では、最後に、できあがった手ごたえや
今後の展望について、お客さんへのメッセージなど、
服部さんからお願いします。 - 服部
- 今回、制作中、いつも以上にすっごく楽しかったんです。
ふだんと異なる業界の方とお仕事できましたし、
新たな発見があって、いい刺激になりました。
それに、Wii U本体やマイクを開発するハードウェアチームや、
内蔵メニューをつくるチームなどの社内の人たちとも
いっしょになって、本体の一部をつくれたところに、
プリインストールアプリケーションならではの
「苦労や楽しさ」があったなと思います。
そこが今回は、いままでと違う大きな手ごたえでした。
でも、社内で「こうこうこういうソフトだから、
こういう機能が必要なんです」と、みなさんに説明するときに、
普通だったらとても苦労するんですが、
今回は、「カラオケ」という誰もが知っているコンテンツだから
共有するスピードがとても速かったんです。
- 岩田
- 「カラオケはこういうものだ」という共通認識が
最初からみんなの中にあるし、
楽しさも経験済みですから、
共有することがとても早かったんですね。 - 服部
- そのみなさんの中にある楽しい思い出を、
リビングでもう一度味わっていただければと思います。 - 岩田
- はい。では吉満さん。
- 吉満
- 今後、世界的に広がっていって、
「世界のカラオケになれたら」と思いますし、
単純に新しい楽しみかたが増えることを期待しています。
じつは今回を機に、はじめて家族でカラオケに行ってみたんです。
最初はみんなモジモジしていたんですけど、
いざ歌い出したら、けっこうのめり込めまして。
- 岩田
- カラオケって、不思議なんですよね。
堰(せき)を切ると楽しいんです。 - 吉満
- はい。母親世代の歌を聴いても、
「子供のころに聴いた歌だなぁ」
と思い出せて、新しい感覚が得られました。
最初は「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、
ぜひ家族でカラオケにチャレンジしてみてください。 - 岩田
- はい。山上さん。
- 山上
- 今回は、いろんな方に協力いただけたからこそ、
「できたことが非常に大きかった」と思います。
その結果できあがった『Wii カラオケ U』は
「90,000曲以上」の曲が収録されています。
おそらく知っている曲はたいてい入っているので、
ぜひ、一度検索してみてください。
- 岩田
- はい、伊神さん。
- 伊神
- 『Wii カラオケ U』で曲を探していただくと、
きっと歌いたくなったり、聴きたくなったりするはずです。
もし、もっとはじけたくなったら、
カラオケボックスに出かけてください。
これを機に「業界が盛り上がれば」と思っています。
とくに自分が若いころに流行っていた曲は、
当時を思い出して、なつかしくなります。
音楽とともに、記憶を探していただけるとうれしいです。
いろんな方が、音楽と接する機会が増えるといいですね。
- 岩田
- はい、中谷さん。
- 中谷
- ゲームと音楽の世界が融合していくところに
「新しい流れをご提案できそうだ」と思っています。
とくにこの数年はボーカロイド()系の
動画投稿からくる、アマチュア楽曲が
カラオケに登場し、たくさん歌われています。(※27)
ボーカロイド=VOCALOID。ヤマハが開発した歌声合成技術および、その応用ソフトウェア。音符と歌詞を入力するだけで歌声に変換できる。「初音ミク」「鏡音リン・レン」など。
- 岩田
- プロと、アマチュアの境界が
「少し、ぼんやりしてきている」ということですよね。 - 中谷
- はい。『Wii カラオケ U』でより広い世代に
ゲームの世界を楽しんでいただくことで、
「このゲームで歌ったよね」と、
テレビドラマのように思い出していただけるほど、
ゲームの中に音楽が融合していくといいですね。
また、遊んだゲームの音楽がリリースカットされて、
『Wii カラオケ U』に登場するというような、
「音楽を生み出す大きなプラットフォームにもなる」
「そういう可能性を秘めている」と思っています。 - 岩田
- はい、ありがとうございます。
いろいろと興味深いお話でしたが、
『Wii カラオケ U』はこのようにできあがりました。
こういうクオリティーのものが、
Wii Uを買ってくださったお客さん全員に行きわたり、
選曲する楽しさを体験していただけることが、
世の中をどう変えていくのでしょうか?
もし日本人が「前よりも歌を歌うようになったね」
と言われるようになったらうれしいですね。
本日はご足労いただき、ありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。