川島教授と開発スタッフに聞く、Switchの「脳トレ」。
川島教授は……優秀なテストプレイヤー!?
今回、「脳トレ」を久々にSwitchで出すということで取材させていただくことになったのですが……そもそもどういう経緯で始まったのですか?
河本
自分なりのきっかけを言うと、なぜか最近になって、「脳トレ」をやりたいという話が、私が当時DS版「脳トレ」を担当していたことを知らないような、少し遠い知り合いなどからよく出てきたことですね。ただ、DS版ソフトは今見るといろいろ古いところもあってお勧めしづらいので、最新の機種でつくってみようかな、と。
久保堅太(以下、久保)
私は『鬼トレ』以降も川島先生と企画の相談をし続けていて……まさに2年前ぐらいですかね。河本と話して、「“脳トレ”の企画をNintendo Switchで考えています」とお伝えしました。

久保堅太:企画制作部
川島先生としては、どうでしたか?
川島
講演会で「次は何が出るんですか?」と、DS版の「脳トレ」をやった人たちに聞かれるんです。
ただ、そのときに「すごくハマりました」と過去形で話されてしまうのが、少しさみしい。で、さらに聞いてみると、以前は子供と一緒に遊んでいた人が初老に差し掛かり……「物忘れ」などが始まっているとおっしゃるんです。
ああ、今度は自分自身のためにやりたい、という感じなんですね。
川島
そうです。当時の子供たちも大学を卒業して、自分で稼いだお金で購入したがっているといった声も聞いたりしました。そう考えると一世代のサイクルが回って、色々な意味でちょうど「面白い」時期なのかな、と。
そういう意味ではディレクターも、河本さんから一世代下の久保さんにバトンタッチされてますよね。
河本
久保は大学の頃からプレイしていますし、入社後もずっと「脳トレ」に関わってきて、強いこだわりがあるので、任せることができるんですよ。
久保
15年前は、まだ美術大学の大学生でした。
「脳トレ」はゲームとしても面白かったですし、なにより新鮮で……普段はゲームをしないような人たちにも広がっていた印象ですね。今までにない価値観のゲームだったと思います。
その頃から考えると、いま川島先生と一緒にゲームを作っているのは凄いことですよね。
久保
本当に、そうですよね。
川島先生も河本も大事にしているものがあって、そこに自然と共感できました。ゲームが苦手な人でも遊べるように、いかにわかりやすくするか――直感的に理解できるまで、二人ともシビアに指摘していくんです。フィードバックもすごく明確でした。
川島
今回は確か、定番となっている「手書きの計算」のデモ試作から始めたんですよね。

手書きで計算をおこなう「計算25」。
本体を縦持ちし、タッチペンで入力する。
久保
まずは初代の「脳トレ」をSwitchで作り直していきました。
「Switch本体を縦持ちする」という提案に、川島先生が「俳句みたいで面白いね」とおっしゃったのが印象的でした。あと、川島先生から「Switchはテレビにも映して遊べるので、なにか今までのDS版にはなかった体験を提供できそうだ」というお話もありました。
そういうお話が、川島先生から来たりするんですね! 制作中にも頻繁にやり取りされていたんですか。
久保
節目節目では必ず東北大学に伺いますし、大きく変わった個所はお見せします。
あとは開発用のSwitchを川島先生のデスクにも置かせていただき、随時最新のバージョンもお届けしています。
川島
で、「ここはおかしい」とか「これは納得できない」とか、色々と注文を付けたりして。やりあったりもしますね(笑)。
だいぶ、がっつり入られてませんか(笑)?
久保
もう朝出社してメールを開くと、教授から仕様についてのコメントやバグの指摘なんかがズラズラと届いていたりして……。もちろん専門分野のアドバイスもいただくのですが、そもそもゲームとしての面白さについて指摘をいただくこともあります。
それって、もはや優秀なテストプレイヤーの行動じゃないですか(笑)。