川島教授と開発スタッフに聞く、Switchの「脳トレ」。
「我々が普段考えてもいないアイデアまで話してもらえる」(河本)
河本
先生に「遊び」を深くご理解いただけているのが、ありがたいです。気軽に、我々が普段考えてもいないアイデアまで話してもらえるので、大変に後押しになっています。
久保
先生にはテーマを決めず、自由にご発言いただいていますね。
なんだか「監修」の域を超えていますね。機能のデモ段階から見せているんですか?
久保
ええ。Switchの本体機能、たとえばJoy-Con(R)の「モーションIRカメラ」を利用した新しいデモができたりしたら、その段階で先生に見ていただきます。ダメと言われたらどうしようかな、とも思うのですが、先生は面白がってくださるので、こちらからも「じゃんけんに活かしてはどうでしょうか?」などと提案して、一緒に考えていきます。

Joy-Conに手をかざしてじゃんけんをする
「後出勝負テスト」
川島
「手の形や指の本数も、ある程度は認識できます」とか「一つの本体にコントローラーが二つ付いているので、DSの時にはなかった入力方法が実現できます」と聞いて、何かないですかねえ……と議論していく感じですね。
久保
「指体操」なんかは「手をポーズするだけでも面白いんじゃないの?」という川島先生の言葉がきっかけです。
今度はプランナーさんみたいな立ち位置ですね(笑)。でも、これも長年の信頼関係から生まれたものですかね?
川島
そうですね。結構、私のほうから要望を上げさせてもらっています。あと、DS版の時にお願いしたけど入れられなかった、空間的に離れた人とも一緒に楽しめる要素も、Switch版でついに実現されるんです。
久保
2月のアップデートで追加予定の「世界一斉脳トレ大会」ですね。週に一度、世界中のプレイヤーが競い合うオンライン大会です。毎回競技内容を変えて、今回の種目はコレ、次回はコレみたいな感じで、いくつかの競技から選べるようになるんです。
大会に向けてトレーニングしていくことで、日々トレーニングが続いていく仕掛けですね。
川島
当初は世界ランキングを取得しようとしたのですが、上位層が固定されてしまう問題があるんです。そこで毎週リセットされるような大会を作って、そこに向けてトレーニングしてはどうか、と。
20歳で「クリアした」は…ダメ?
個々の企画としての面白さはもちろんとして、Switch版「脳トレ」で目指したものはなんですか?
久保
先生から言われるのは、「脳トレ」の課題は「継続」にあるということです。
川島
たとえば、脳年齢の表示で頑張ってはいただけるのですが、最高成績を20歳にしているので、20歳になったところで「クリアした!」と、辞めてしまう人たちが結構いるんですよ。

たぶん、ゲーマーの層ですね(笑)。
川島
ただ、大事なのは「継続」なんです。
「脳トレ」というよりゲーム全般の問題ですが、継続性が低いという課題は強く感じています。ゲームって一通りやったら辞めちゃうものも多いじゃないですか。でも、専門家としての僕は、脳のトレーニングは長くやってもらいたいんです。
そのために、グループを組んで、友達同士でやってもらう。そうすると、脳年齢が20歳の表示になっても、横の彼女のタイムにはまだ追いつけなかったりする(笑)。我々のこれまでの研究でも、人と一緒に「脳トレ」を行うことの継続性への影響は、示されてきました。誰かと競い合うのは、10数年越しの継続まで見越したときの、有効な手段だと思っています。
河本
今回からフレンドと合わせたランキングも見られるようになりました。友達や、離れて暮らす家族とも競えるので、長く続けて欲しいなと思います。
ちなみに、開発中も皆さんで一緒にプレイをしたりするんですか?
川島
任天堂の皆さんと僕とで結果を共有しあって、オンラインで楽しんでいますよ。
僕の中では「河本の壁」があって、実に“腹立たしい”んですよ。なぜこのトレーニングでは勝てないんだと、毎日「コノー!」と思いながら続けているわけです。
河本
ははは(苦笑)。
久保
一番上なのは、この三人では確かに河本かもしれないですね。僕は「まだ先生に負けているな」と思いながら、プレイしています。
川島
最年長の僕が最年少の久保さんに勝っているんだから、ずいぶんと健闘していませんか(笑)?