川島教授と開発スタッフに聞く、Switchの「脳トレ」。

「脳トレ」の“原点 ”は川島教授の企画

今日はせっかくなので、2005年のDS版「脳トレ」がどのように生まれたのかもお伺いしたいです。調べてみると当時は「社長が訊く」【※】もないし、ゲームメディアもノーマークのまま売れてしまったようで、あまり取材がないんです。

※社長が訊く
任天堂ホームページで展開していた、さまざまなプロジェクトの経緯や背景を社長(当時)の岩田聡が開発スタッフに訊くインタビュー企画。初回は2006年9月8日公開の「Vol.1 Wiiハード編」。

河本

私が参加していた「ユーザー層拡大プロジェクト」の検討過程で、当時ベストセラーだった『脳を鍛える大人の計算ドリル』【※】に岩田さんが興味を持たれたのが始まりでした。

※脳を鍛える大人の計算ドリル
2003年11月にくもん出版から発売された、大人のためのドリル。同じシリーズに、『脳を鍛える大人の音読ドリル』もある。これらは、1日5分、簡単な音読・計算をくり返すことで脳の前頭前野を活性化させ、脳の健康を維持・向上することを目的に作られた。毎日の「読み・書き・計算」トレーニングが脳を活性化させるという川島教授の研究成果に基づいている。

2002年に岩田さんが社長に就任されてからの、ゲーム好きの層を広げていこうとしたプロジェクトで登場したわけですね。ただ、そうなると遡れば「脳トレ」の“原点”は川島さんが、くもん出版で出したあのドリルですか?

川島

そうですね。
あれを出版する経緯は大変でしたけど、出版されるとすぐに100万部がバーッと売れていきました。

いや、100万部って、そうそう出てこない“驚異的”な数字ですよ。むろんすでに脳のトレーニングについて、サイエンスの裏付けはあったと思うんですが……企画としての勝算はあったんですか?

川島

家庭で親が勉強していたら「面白い」だろうな、と考えていましたね。

僕の中には、天邪鬼(あまのじゃく)な心があるんですよ。だって、「なぜ子供だけが家で勉強するんだ」って思いませんか? 親は子供に「勉強しなさい」というけど、親が家庭で勉強している姿なんて見たことないでしょう。
家の中で親が脳をトレーニングするために、必死になって勉強しているなんて、そんな面白いことないですよ(笑)。

確かに。

川島

基本的に「面白い」という時って、見ていて笑えることが“人と人が関わっている中で”起きる瞬間だと思いませんか?

親が家で勉強しているだけで、もうきっと面白い。名前も「大人のドリル」にしてしまって、見せ方も子供のドリルと同じ形式にしてしまう。それを家庭に放り込んで、お父さんやお母さんがドリルを解いていたら、子供だって宿題をやる気が湧いてくるかもしれない。
そんな光景を想像したら、もう「本当に面白いな、きっと笑えるな」と思ったんです。

さっきから良い意味で、みんなの“川島教授”のイメージが壊れている気がします(笑)。それにしても、「面白い」という言葉をよく使いますね。

川島

ええ、面白いことは大好きです!
研究者は、そうじゃないといけないです。脳の研究だって「面白い」からやっているんです。


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