川島教授と開発スタッフに聞く、Switchの「脳トレ」。

「脳を鍛える」ってどういうこと?

見たことがある方もいる言葉だと思うのですが、「転移効果」ですよね。なぜか計算問題などの単純作業をしているだけなのに、直接トレーニングしていない脳の働きまで向上していくという。でも、なぜなんでしょうか?

川島

説明しますか。これは、ちょっと難しい話ですよ。

気合を入れて、頑張ってついていきます(笑)。

川島

僕は、脳の機能をよくコンピュータに例えるんですね。
コンピュータの性能として、CPU【※】の処理速度とRAM【※※】の作業領域の大きさは大事ですよね。脳の中にも、それと同じ働きをする領域が、前頭前野というところにあるんです。
CPUの処理速度が速いと、人間は何か行動をするのも機敏になりますし、RAMの作業領域が大きいと、色々なものを同時に行うのが得意になったりします。でも、これが年を取ると両方とも低下していくんです。

※CPU
「Central Processing Unit」の略称で、日本語では「中央演算処理装置」などと呼ばれる。メモリや周辺機器などからデータを受け取り、計算を行う場所。そのため、「コンピュータの頭脳」と呼ばれることもある。

※※RAM
「Random Access Memory」の略称。しばしば作業台に喩えられ、これが大きいとコンピュータが多くの作業を並列して行うことが可能になる。

年を取ると、動きがゆっくりになったりしますよね。

川島

ええ。しゃべるのも遅くなりますが、まさにこれらはCPUの処理速度の低下によるものです。あと、年を取ると、料理が苦手になってくるんですね。これはRAMの作業領域にあたる部分の縮小によるものです。だって、料理は究極の並列作業(※同時に何かを行うこと)ですから。

家庭で何気なくやっていることですが……たしかに並列作業ですね。

川島

ええ、ものすごいことなんです。会社で行われるようなビジネスですら、そのプロセスの中に全て包括されるくらい、本当に面白くて複雑なプロセスですよ。
なにせ、ある時間までに何をつくるのかという将来の姿をイメージしながら、RAMの中に情報を全て置いて作業を組み立てて、最後に一つのものにするわけですから。実に複雑です。

なるほど。つまり「脳トレ」は、このCPUとRAMを鍛えているのでしょうか。

川島

そういうことになりますね。
CPUに負荷のかかるような速度で作業をさせたり、RAMに多くの記憶で負荷を与えたりしてみる。この二つの視点で脳を鍛えると、やっぱり能力が向上していくんですね。

ただ、それによる「転移効果」の範囲は大きいです。当初、僕は認知症患者の方々もせいぜい症状の進みが緩やかになる程度の想定でいましたが、もう全く違いました。徘徊がぴたりと止まったり、トイレにも自分で行ったりする人も出てきましたから。
医者としても、医学の常識を覆すような結果だと思いましたし、その内容を「学習療法」と名付けて学術誌に発表しています。


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